第九話 新入生は妹の部屋で〇〇
「次はどこ?」
サクヤと別れたあと、私は月依に尋ねた。
「最後は寮だよ」
「やっぱり寮があるんだ」
「うん」
学園の裏手へ歩いていくと、白い洋館のような建物が見えてきた。
「……これ?」
「女子寮」
「大きすぎない?」
「一学年だけじゃないからね」
なるほど。
それでも十分大きい。
玄関をくぐると、落ち着いたロビーが広がっていた。
ソファや観葉植物が並び、とても学生寮とは思えない。
「ホテルみたい」
「初めて来た人はみんなそう言うよ」
月依は慣れた様子で廊下を歩いていく。
「ここ」
部屋の前で立ち止まり、デバイスをかざす。
電子音が鳴り、扉が開いた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
部屋へ入った私は、思わず目を丸くした。
「綺麗……」
机の上も、本棚も、ベッドも。
どこもきちんと整理されている。
生活感はあるのに、不思議なくらい散らかっていない。
「相変わらずだね」
「えへへ」
月依は少し照れくさそうに笑った。
「お姉ちゃんに褒められると嬉しい」
「昔から片付け上手だったもんね」
「お姉ちゃんが散らかすから」
「うっ」
否定できない。
「ほら」
月依が戸棚を開ける。
中にはお菓子がぎっしり並んでいた。
「こんなに?」
「サクヤちゃんがくれたり、みんなと交換したり」
「食べきれる?」
「うん」
即答だった。
意外と甘いもの好きなんだ。
「そうだ」
月依がお茶を淹れ始める。
「今日はお姉ちゃんが来ると思って、お菓子買っておいたんだ」
「私のために?」
「もちろん!」
机に並ぶクッキーと紅茶。
なんだか久しぶりだ。
家を出てからは、こんな時間を過ごすことも少なくなっていた。
「ねえ、お姉ちゃん」
「ん?」
「仕事、どう?」
「まだ研修だから何とも言えないかな」
「やばい新入生がきたって聞いたけど」
「そんなに広まってるの?」
「先生たちも驚いてた」
やっぱり。
かなり目立ったらしい。
「でも」
月依は真剣な表情になる。
「無理だけはしないでね」
「え?」
「お姉ちゃん、昔から頑張りすぎるから」
その言葉に、私は少しだけ笑った。
「心配しすぎ」
「してない」
月依は首を横に振る。
「心配だから言ってるの」
その表情は、さっきまでの甘えん坊ではなく、どこか大人びて見えた。
半年。
たった半年なのに。
月依も、ちゃんと成長しているんだ。
コンコン。
そのとき、部屋の扉がノックされた。
「月依さん、いらっしゃいますか?」
聞き覚えのない女の子の声。
「はーい」
月依が扉を開ける。
そこには数人の女子生徒が立っていた。
「あ」
そのうちの一人が私を見る。
「もしかして……」
隣の子が小声で囁く。
「噂のお姉さん……?」
「本当に来てたんだ」
え。
噂って、そんなに広まってるの?
私は嫌な予感しかしなかった。




