第五十二話 「うん、たぶんそういうことだよね」
サクヤちゃんと別れ、私は社員寮へ戻ってきた。
「ただいまー……」
返事はない。
一人暮らしなんだから当たり前だ。
靴を脱ぎ、そのまま部屋へ入る。
そして。
「とうっ」
ベッドへ飛び込んだ。
「……幸せ」
休日って素晴らしい。
誰にも急かされない。
始末書もない。
能力測定もない。
暴発もしない。
こういう時間を、私は心から愛している。
その言葉は過言ではない。
しばらく天井を眺めながらぼーっとする。
昨日は月依とゲーム大会。
今日はサクヤちゃんと街を歩いた。
気付けば、休日らしい休日を満喫している。
「異世界へ来る前は、こんな休日になるなんて思わなかったなぁ」
異世界。
会社。
学園。
最初は不安しかなかった。
それなのに、今では休日に街を歩いて、友達と遊んでいる。
人生って、本当に分からない。
◇◇◇
冷蔵庫からジュースを取り出す。
プルタブを開け、一口飲む。
「よし」
テレビの前へ座り、ゲーム機の電源を入れた。
休日にゲーム。
これだけは日本にいた頃から変わらない。
「今日は何しようかな」
レースゲーム。
アクションゲーム。
RPG。
画面を眺めながら少しだけ悩む。
「……今日はRPGかな」
ゆっくり遊びたい気分だった。
コントローラーを握り、ゲームを始める。
敵を倒して。
宝箱を開けて。
町の人と話して。
何も考えずに遊ぶ時間は、やっぱり楽しい。
◇◇◇
しばらく遊んでいると、不意に今日のことを思い出した。
『思っていた方とは違っていました』
サクヤちゃんの言葉。
「……」
コントローラーを持ったまま考える。
違っていた。
何がだろう。
「うーん……」
少しだけ考えてみる。
でも。
「ゲーム好きなの、聞いてなかったとか?」
それくらいしか思い付かなかった。
確かに月依とゲームの話はよくするけれど、私がどれくらい好きかまでは話していなかったのかもしれない。
「うん、たぶんそういうことだよね」
一人で納得する。
サクヤちゃんは真面目だから。
もっと読書が趣味とか、勉強ばかりしている人だと思っていたのかもしれない。
「……まあ」
今度会ったら聞けばいいか。
深く考えても分からないことを考え続けるのは、私には向いていない。
私は気持ちを切り替え、ゲームへ視線を戻した。
「よし」
画面には、次のダンジョンが映っている。
まずはこっちを攻略しよう。
休日は、まだ終わっていない。




