第五十話 「一緒に遊べて楽しかった!」
休日も、気付けば夕方になっていた。
ゲームをして。
街を歩いて。
甘いお菓子を食べて。
何気ないことばかりだったけれど、不思議と時間が過ぎるのは早かった。
「もうこんな時間なんだ」
空はすっかり夕焼け色に染まっている。
私たちは三人で学生寮まで戻ってきていた。
「今日はありがとうございました」
サクヤちゃんが静かに一礼する。
「こちらこそ!」
月依が笑顔で手を振る。
「一緒に遊べて楽しかった!」
「私もです」
サクヤちゃんは小さく微笑む。
その視線が一瞬だけ私へ向く。
「陽花さんも、お疲れさまでした」
「ありがとう。また遊ぼうね」
「……はい」
短く返事をすると、サクヤちゃんは女子寮の中へ入っていった。
その後ろ姿を見送りながら、私は小さく息をつく。
「サクヤちゃん、本当にゲーム強かったね」
「負けちゃった」
月依が悔しそうに頬を膨らませる。
「私は一回も勝てなかったよ」
「でも楽しそうだったじゃん」
「うん!」
さっきまでの悔しそうな顔はどこへやら。
月依はいつもの笑顔に戻っていた。
「お姉ちゃんと一緒なら楽しいもん」
「それはゲーム関係なくない?」
「うん!」
即答だった。
「そこは否定しないんだ」
「しないよ」
月依は照れた様子もなく笑う。
こういう真っ直ぐなところは、昔から全然変わらない。
「それじゃ」
私は社員寮の方を指差す。
「そろそろ帰るね」
「うん」
月依は小さく頷いた。
でも、そのまま黙ってしまう。
「どうしたの?」
「……ううん」
首を横に振ると、少しだけはにかむように笑った。
「今日はありがと、お姉ちゃん」
「こちらこそ」
「また遊ぼうね」
「もちろん」
「来週も?」
「予定が合えばね」
「約束!」
月依が小指を差し出す。
「まだそれやるの?」
「やる!」
昔から変わらない。
私は苦笑しながら小指を絡めた。
「はい、約束」
「えへへ」
それだけで満足そうに笑う。
本当に分かりやすい。
「じゃあね」
「うん!」
私は手を振って歩き出した。
数歩進いたところで、
「お姉ちゃーん!」
元気な声が後ろから聞こえる。
振り返ると、女子寮の入口で月依が両手を大きく振っていた。
私も笑って手を振り返す。
その姿を見届けると、月依は嬉しそうに寮の中へ戻っていった。
「……変な妹」
思わず笑ってしまう。
昔から。
本当に変わらない。
でも。
そんな変わらないところが、少しだけ嬉しかった。
社員寮への帰り道。
夕焼けに染まる街を一人で歩く。
今日は本当に楽しかった。
ゲームで笑って。
サクヤちゃんと話して。
月依とは昔みたいに過ごせた。
異世界へ来たばかりの頃は、不安ばかりだったけれど。
こうして笑える休日も悪くない。
夕焼けに染まる帰り道。
二人並んで歩く。
それだけで十分幸せだった。
けれど私はまだ知らない。
その想いが、私の想像よりも、ずっと深かったことを。




