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【第一章完結】異世界就職したら、神様の学園に出向することになりました ~普通に働きたい新人社員、『歩く人間凶器』のちょっと騒がしい異世界生活~  作者: 牛
第一章 二週目

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第四十八話 「だから私は、その時間が好きだった」

 女子寮へ向かう道を歩きながら、私は少しだけ首をひねった。


 月依とゲーム。


 実家にいた頃は、休日になるとよく一緒に遊んでいた気がする。


 でも、何を遊んでいたかと言われると意外と思い出せない。


 格闘ゲームだったかな。


 それとも協力型のアクションゲームだったっけ。


 まあ、どっちでもいいか。


 ゲームなら私も好きだし。


 今日は会社も学園も休み。


 始末書も、暴発も忘れて、のんびり遊ぶくらい許されるはずだ。


 そんなことを考えているうちに学生寮へ着いた。


 部屋の前に立つと、勢いよくドアが開く。


「お姉ちゃん!」


「早いね」


「ずっと待ってたからね」


 月依は満面の笑みで私の腕を掴む。


「さ、入って!入って」


「そんなに急がなくても逃げないよ」


「ゲームは時間との勝負だから!」


「休日の朝から?」


「休日だからだよ」


 理屈はよく分からない。


 でも、月依らしくて思わず笑ってしまう。


 部屋へ入ると、テーブルの上にはゲーム機が二台。


 ジュース。


 お菓子。


 さらに、おつまみまで綺麗に並べられていた。


「準備万端だね」


「もちろん!」


 月依は胸を張る。


「今日は絶対勝つからね!」


「前もそんなこと言って負けてなかった?」


「今日は違うもん!」


 コントローラーを受け取る。


 手に馴染む感触が懐かしい。


 異世界へ来ても、この感覚だけは昔と変わらない。


「じゃあ、いざ勝負!」


 画面に映ったのはレースゲームだった。


「これ懐かしい」


「覚えてる?」


「もちろん」


 実家でも何度も遊んだゲームだ。


 昔は月依が負けるたびに悔しそうにしていたっけ。


「今なら勝てるもん!」


「そうかな?」


「うん!」


 ◇


「やった!」


「また負けたぁ……」


 月依がソファへ倒れ込む。


「お姉ちゃん強すぎる……」


「昔からやってるしね」


「くぅ……」


 悔しそうに頬を膨らませる。


 でも、その顔はどこか楽しそうだった。


「そういえばさ」


 月依がジュースを飲みながら笑う。


「覚えてる?」


「何を?」


「お姉ちゃん、昔ゲームしてる時になると、『あと一戦だけ!』って何回も言ってたの」


「あー……」


 思い出した。



「結局、夕飯までずっと遊んでたよね」


「お母さんによく怒られてた」


「怒られてたねぇ」


 二人で顔を見合わせて笑う。


 不思議だ。


 異世界へ来てから色々あったのに。


 こうして笑っていると、実家にいた頃へ戻ったような気分になる。


「私ね」


 月依が少し照れたように笑う。


「ゲームしてるお姉ちゃんを見るの、好きだったんだ」


「え?」


「勝った時、すっごく嬉しそうに笑うでしょ?」


「そんな顔してた?」


「してたよ」


 月依は大きく頷く。


「だから横で見てるだけでも楽しかった」


 少し照れくさくなる。


 そんなことを言われるとは思っていなかった。


「ありがとう」


 自然とそんな言葉が出ていた。


 月依は嬉しそうに微笑む。


「えへへ」


 その時だった。


 コンコン。


 部屋のドアがノックされる。


「失礼します」


 落ち着いた声とともに入ってきたのは、サクヤちゃんだった。


「遊びに来ました」


「サクヤちゃん!」


 月依が笑顔で迎える。


「ゲーム大会してるよー」


「ご一緒してもよろしいですか?」


「もちろん!」


 三人でゲームを始める。


 サクヤちゃんは思った以上に強かった。


「また一位……」


「お強いですね」


「昔、兄と遊んでいましたので」


「ずるい」


「経験者だったんだ」


 そんな他愛もないやり取りを繰り返す。


 勝ったり。


 負けたり。


 笑ったり。


 気付けば時間はあっという間に過ぎていった。


 ◇


「少し休憩しましょうか」


 サクヤちゃんがジュースを手に取る。


 三人で並んで座る。


 窓から差し込む昼の光が、部屋を優しく照らしていた。


「陽花さん」


「うん?」


「日本でも、休日はこのように?」


「うん。家から出ないくらいゲームしてたよ」


「それは少し心配ですね」


「否定できない……」


 私が苦笑すると、月依がすぐに口を挟む。


「でもね、お姉ちゃんってゲームしてる時が一番楽しそうなの」


「またそれ?」


「本当だもん」


 月依は私を見ながら、どこか懐かしそうに笑った。


「嫌なことがあっても、ゲームしてる時だけはちゃんと笑ってた」


「……」


「だから私は、その時間が好きだった」


 思わず言葉を失う。


 そんなふうに見られていたなんて知らなかった。


 サクヤちゃんは、そんな私たちを静かに見つめていた。


「……素敵ですね」


「え?」


「そうやって、大切な時間を一緒に過ごせるご姉妹は」


 少しだけ間を置く。


 そして。


「それに」


 サクヤちゃんは私へ視線を向けた。


「好きなものを、あんなに楽しそうに話せる方は……素敵だと思います」


「……ありがとう」


 照れくさくて、それしか言えなかった。


 サクヤちゃんは小さく微笑み、静かにジュースへ口をつける。


 その横顔を見ながら、私は首を傾げた。


 ……気のせいかな。


 そう思って、私はジュースを一口飲んだ。

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