第四十七話 「でも、お姉ちゃんツッコミ上手だから」
月依の部屋へ戻ると、テーブルの上には缶ジュースが二本並んでいた。
「おかえり、お姉ちゃん」
「ただいま」
月依はさっきまでと変わらない、いつもの笑顔を浮かべていた。
サクヤちゃんとの会話で少し気になったことはあったけれど、本人は何事もなかったような様子だ。
……考えすぎだったのかな。
「はい、お姉ちゃんの分!」
「ありがと」
プルタブを開ける音が重なる。
二人で並んでジュースを飲みながら、他愛もない話をした。
今日の授業のこと。
会社であった出来事。
アカリにまた始末書の話でからかわれたこと。
「えへへ。アカリらしいね」
「もう完全に定番ネタになってるよ……」
「でも、お姉ちゃんツッコミ上手だから」
「そこ褒められてるのかな?」
二人で顔を見合わせて笑う。
さっきまでの少しだけしんみりした空気は、いつの間にかどこかへ消えていた。
やっぱり、こうして笑っている月依を見ると安心する。
昔のことを思い出すのも悪くないけれど、今こうして一緒に笑えることの方が、ずっと大切なのかもしれない。
気付けば時計の針は夜を回っていた。
「そろそろ帰ろうかな」
「うん」
月依は部屋の入口まで見送ってくれる。
「今日は来てくれてありがとう、お姉ちゃん」
「こちらこそ。誘ってくれてありがと」
「えへへ」
嬉しそうに笑う月依。
その笑顔を見ていると、こっちまで嬉しくなってしまう。
「じゃあ、おやすみ」
「……あ、待って!」
部屋を出ようとした私を、月依が呼び止めた。
「ん?」
「明日って、お休みだよね?」
「土曜日だからね」
「予定ある?」
「特にないけど」
そう答えると、月依の表情がぱっと明るくなる。
「じゃあ遊ぼ!」
「遊ぶ?」
「うん! ゲーム!」
ゲーム。
そういえば、実家にいた頃は休日になると二人でよく遊んでいたっけ。
「いいよ」
「ほんと!?」
「もちろん」
「やったー!」
月依は子どものように飛び跳ねて喜んでいる。
そんなに嬉しいものなんだ。
私は思わず笑ってしまった。
「じゃあ明日、学生寮で待ってるね!」
「うん。また明日」
「おやすみ、お姉ちゃん!」
「おやすみ、月依」
手を振りながら女子寮を後にする。
夜風が少しだけ心地いい。
明日は久しぶりに、のんびりした休日になりそうだ。
◇
土曜日。
久しぶりに目覚ましをかけずに眠った私は、ゆっくりとベッドから起き上がった。
「ん~……よく寝たぁ」
平日は会社に学園。
毎日慌ただしいから、休日くらいはのんびりしたい。
そんなことを思いながらスマホを見ると、一件のメッセージが届いていた。
『お姉ちゃん! 起きた?』
送り主は月依。
私は苦笑しながら返信する。
『今起きたよ』
すると、数秒もしないうちに返事が返ってきた。
『待ってるね!』




