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【第一章完結】異世界就職したら、神様の学園に出向することになりました ~普通に働きたい新人社員、『歩く人間凶器』のちょっと騒がしい異世界生活~  作者: 牛
第一章 二週目

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第四十三話 「使えるかどうかは別ですよね?」

 午後の授業。


 午前中とは違い、教室には少し緊張した空気が流れていた。


 理由は簡単。


 カムイの実技授業だからだ。


「本日は仮ライセンスの取得を行います」


 教壇に立ったキクリ先生が説明を始める。


「今学期中に使用可能なカムイを確認し、正式な訓練へ進むための準備となります」


 教室のあちこちから小さな声が聞こえる。


 どうやら、この仮ライセンスは結構重要らしい。


「なお、全てのカムイが使用できるわけではありません」


 キクリ先生が続ける。


「カムイには個人ごとの適性があります。適性のない系統は、どれだけ努力しても扱うことができません」


「へぇ……」


 私は思わず呟いた。


 てっきり練習すれば全部使えるものだと思っていた。


 ……まあ、私の場合。


 練習以前の問題な気もするけど。


「まずは各自、適性検査の結果を確認してください」


 先生の指示で、みんな端末を確認する。


「……あ」


 ヒルコちゃんが画面を見て苦笑した。


「やっぱりあかんかったか」


「どうしたの?」


「水属性や」


「水?」


 意外だった。


「ヒルコちゃん、水とか得意そうなのに」


「よく言われるんやけどなぁ」


 ヒルコちゃんは肩をすくめる。


「うちの家系、水系とは相性悪いんよ」


「そうなんだ」


 異世界らしい話だ。


 家系によって得意不得意があるらしい。


「サクヤちゃんは?」


 隣を見る。


「私は金属系が駄目ですね」


 サクヤちゃんが穏やかに答えた。


「家系的なものですので、仕方ありません」


「へぇ……」


 見た目からすると、サクヤちゃんは何でもできそうなのに。


「アカリは?」


「……」


 アカリが無言で端末を見ている。


「どうしたの?」


「雷撃系……」


 ぽつり。


「雷撃系だけ駄目だった……」


「あー……」


 なんとなく納得してしまった。


「なんで納得するの!?」


「いや、なんとなく……」


「ひどい!」


 いつものアカリだった。


「続いて、霧島さん」


「はい」


 先生の視線がこちらへ向く。


「確認したところ、取得可能な仮ライセンス数は――」


 少し間を置いて。


「全項目です」


「……え?」


 一瞬、教室が静かになった。


「全項目?」


 誰かが呟く。


 画面には取得可能な項目がずらりと並んでいた。


 火。


 水。


 風。


 土。


 金属。


 光。


 闇。


 そして。


 治癒。


 ……多い。


 というか、普通はこんなに並ぶものなのだろうか。


「霧島さんの場合、確認できた範囲では全て取得可能です」


「…………」


 私は端末を見る。


 確かに全部、取得可能になっている。


 でも。


「いや……」


 思わず呟いた。


「使えるかどうかは別ですよね?」


 教室の空気が止まった。


「……」


 先生が少し困った顔をする。


「適性があることと、制御できることは別問題です」


「ですよねー……」


 私は頷く。


 だって。


 火を使えば爆発。


 水を使えば大洪水。


 風を使えば竜巻。


 実績は十分だ。


「お姉ちゃん」


 月依が笑う。


「そこを気にする人、たぶんお姉ちゃんくらいだよ」


「だって重要じゃない?」


「普通は全項目取得できることを喜ぶところなんだけど……」


 月依が苦笑する。


 でも。


 私からすると、使えなければ意味がない。


 免許証だけ持っていて、運転できないのと同じだ。


 授業が終わる頃。


 私は完全に忘れていた。


 この結果を。


 ……一人を除いて。


「決めた!」


 突然、アカリが叫んだ。


「え?」


 すごく嫌な予感。


 アカリは新聞用の端末?みたいなものを取り出している。


「今日の学園新聞、特集記事にします!」


「待って」


 私は反射的に止めた。


「まだ何も聞いてないけどやめて」


「大丈夫!」


 アカリは笑顔だった。


「今回はいい記事だから!」


 アカリが画面を見せる。


 そこには大きな文字で。


『新入生H花さん、全属性適性確認!?』


「やっぱり私じゃん!」


 『H花』ってなんですかね、普通に私の事だってわかるんだけども。


「だってすごいことだよ!」


「いや、まあ……」


 確かに珍しいことなのかもしれない。


 でも。


「アカリぃぃぃ」


 背後から月依の声が響いた。


 笑っている。


 でも。


 少しだけ怖い。


「少し……お話しようか?」


「……え?」


 アカリの動きが止まる。


「えっと……月依?」


「大・丈・夫」


 月依は笑顔のまま続ける。


「怒ってないよ?」


「その笑顔、絶対怒ってるやつやん……」


 ヒルコちゃんが小さく呟いた。


 そして。


 数分後。


 アカリの新聞記事は修正された。


 見出しは。


『新入生Kさんの能力は無限大!?

 今後の活躍にこうご期待!』


「……」


 私は記事を見る。


「これなら……まあ」


「いいでしょ?」


 アカリが笑う。


「面白いことは書く。でも、陽花が嫌な思いをする記事にはしない!」


「……」


 少しだけ驚いた。


 アカリは本当に悪気がなかっただけなんだ。


 ただ。


 面白いと思っただけ。


「ありがとう、アカリ」


 そう言うと。


「任せて!」


 アカリは胸を張った。


「次はもっと面白い記事を書くから!」


「次がある前提なんだ……」


 私は思わずため息をついた。


 でもまぁ。


 アカリが悪気でやっているわけじゃないことは分かった。


 これくらいの悪乗りなら、大目に見てもいいのかもしれない。


 ……私は社会人だし。


 みんなより少しだけ大人だからね。


 このくらいのことでは怒らない。


 ……爆発さえしなければ。

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