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【第一章完結】異世界就職したら、神様の学園に出向することになりました ~普通に働きたい新人社員、『歩く人間凶器』のちょっと騒がしい異世界生活~  作者: 牛
第一章 二週目

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第三十五話 「今日はちょっと派手やったけどな」

 訓練は中止になった。


 あれだけ派手に教室を吹き飛ばしたのだから、当然と言えば当然だった。


 私は箒を片手に、小さくため息をつく。


「……ごめんなさい」


 床へ散らばった教材を拾い集めながら、何度目か分からない謝罪を口にした。


「陽花はん、気にしすぎや」


 ヒルコちゃんが机を起こしながら笑う。


「でも……」


「教室は壊れたけど、誰も怪我してへん」


「それはそうだけど……」


「それに修繕班が来るし」


 言われて廊下を見ると、作業服姿の人たちが慣れた様子で資材を運び込んでいた。


「え……」


「今日はちょっと派手やったけどな」


 ちょっと。


 教室が半壊しているのに、『ちょっと』で済むんだ。


 異世界の感覚はまだよく分からない。


 サクヤちゃんも教材を拾いながら微笑む。


「気になさらなくても大丈夫ですよ」


「でも、授業まで中止に……」


「安全第一ですから」


 その言葉に、少しだけ救われる。


 とはいえ、原因は全部私だ。


 申し訳なさは消えない。


 そこへキクリ先生が戻ってきた。


「皆さん、ご協力ありがとうございました」


 先生は壊れた教室を見回し、小さく頷く。


「修繕は専門の方へ引き継ぎます。本日の実技はここまでにしましょう」


 クラスから安堵の声が上がった。


「なお、次回の授業までに別の訓練室を使用します」


 ……別の。


 私は思わず顔を上げる。


「先生」


「はい」


「また私が壊したら……」


 一瞬、教室が静まり返る。


 ヒルコちゃんが吹き出した。


「また次の教室やな」


 あちこちから笑い声が漏れる。


「笑い事じゃないよ!」


「せやけど、陽花はんらしいやん」


「らしくない方がいいよ!」


 私が頭を抱えると、また笑いが広がった。


 どうやら完全にいじられ役になってしまったらしい。


 教室の片付けが終わる頃には、修繕班の作業も始まっていた。


 壊れた机は運び出され、壁には新しい資材が並ぶ。


 その手際の良さに驚いていると、キクリ先生が隣へやってきた。


「霧島さん」


「はい」


「今日は災難でしたね」


「災難というか……私が原因です」


「それでも、落ち込みすぎる必要はありません」


 先生は穏やかに笑う。


「カムイは失敗しながら覚えていくものです」


「でも、ここまで失敗する人はいませんよね……」


 そう言うと、先生は少しだけ考えるように空を見上げた。


「確かに、珍しいケースではあります」


「やっぱり……」


「ですが」


 先生は優しく続ける。


「諦める理由にはなりません」


 その言葉が、不思議と胸に残った。


 私はまだ、この世界へ来て二日目。


 失敗ばかりだけれど、前へ進むしかない。


 帰り支度を始めるクラスメイトを見ながら、私も鞄を手に取る。


「ほな、また金曜日な」


「うん。またね」


 ヒルコちゃんたちへ手を振り、教室をあとにした。


 その様子を、廊下の曲がり角からじっと見つめる人影が一つ。


 手帳を開き、さらさらと何かを書き込んでいる。


『教育部新人・霧島陽花』


『実技訓練中、教室半壊』


『人的被害なし』


『要観察』


 満足そうに頷くと、その少女――アカリは手帳を閉じた。


「ふふっ」


「これは、面白い記事になりそう」


 そう呟くと、誰にも気づかれないよう廊下の奥へ姿を消した。

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