第三十三話 「運命なの!?」
「今日は平和みたいだね」
昼休みが終わり、午後の仕事もひと段落。
ナビキがぽつりとつぶやいた。
「うん?」
私は首をかしげる。
平和なのは、いいことじゃないの?
そう思いながら、手元の書類を片付けていく。
◇◇◇
「ふぅ……」
気づけば窓の外は夕焼け色になっていた。
終業時間までもう少し。
今日は大きなトラブルもなく、一日が終わろうとしている。
ほんとに平和な一日だったなぁ。
教育部へ配属されて一週間。
少しずつ仕事にも慣れてきた気がする。
そんなことを考えていた、その時だった。
「あっ!」
近くの席から小さな声が聞こえた。
誰かの机から書類の束が滑り落ちそうになる。
私は反射的に手を伸ばしていた。
ぽんッ!
変な音がした。
「あ」
落ちかけていた書類は、ふわりと浮かび上がる。
そのまま持ち主の机へ戻っていった。
「た、助かった……」
よかった。
そう思った瞬間だった。
ポポン!!
「え?」
今度は私の机の上から妙な音がした。
積んであった書類が、ふわりと宙へ浮かび上がる。
「うそ」
一枚。
また一枚。
書類はゆっくりと宙を漂い始める。
私は慌てて手を伸ばす。
でも、もう遅かった。
ぱさ。
ぱさぱさ。
ぱさぱさぱさ。
書類は次々と床へ落ちていく。
やってしまった……
思わず肩を落とした。
「まぁ、平和だと思った瞬間に陽花は負けてたってことだよ」
ナビキがぽつりと言う。
「何に負けたの!?」
私は思わずツッコんだ。
ナビキは少しだけ考えてから答えた。
「……運命、かな」
「運命なの!?」
「たぶん」
本人はいつも通り真面目な顔だった。
理不尽すぎる……。
結局。
今日も最後の最後で、平和な一日にはならなかった。




