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【毎日19時更新】異世界就職したら『歩く人間凶器』でした ~普通に働きたい新人社員、出社しながら神様の学園に通っています~  作者:
第一章

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第三十二話 月耀だから普通に〇〇

 教育部へ配属されて一週間。


 午前中の教育部は、思っていたよりも静かだった。


 書類をまとめる人。


 教材を確認する人。


 学園から届いた報告書に目を通す人。


 誰も慌てているわけではないのに、部屋の中は自然と仕事が進んでいく。


(会社って、こういう感じなんだ)


 私は机の上に積まれた資料を、一枚ずつ確認していく。


 まだ分からないことは多い。


 それでも、一週間前よりは手が止まることが減っていた。


「陽花」


 柚木さんが声を掛けてくる。


「今の仕事が終わったら、こっちお願い」


「はい!」


 受け取ったのは、学園へ送る教材の一覧だった。


「この一覧と教材の数が合っているか確認してもらえる?」


「数えるだけでいいんですか?」


「うん。最初はそういう仕事から覚えていこう」


「分かりました!」


 箱を開け、一つずつ確認していく。


「教材が二十冊、補助資料が十部……」


 一覧へ目を落とし、もう一度箱を見る。


 間違いない。


 慎重に確認を終え、柚木さんへ返した。


「終わりました!」


「ありがとう。助かったよ」


 その一言だけなのに、少し嬉しい。


 新人社員らしい仕事かもしれない。


 でも、任せてもらえる仕事があるのは素直に嬉しかった。


 ◇◇◇


「失礼します」


 扉が開く音がした。


 顔を上げると、ナビキが教育部の職員さんと話している。


 資料を見せながら何か説明を受けているみたいだけど、内容までは聞こえない。


(また難しい話かな)


 研究部の仕事は、私にはまだよく分からない。


 同期なのに、別世界みたいだ。


 少しして話が終わると、ナビキがこちらへ歩いてきた。


「お疲れ、陽花」


「お疲れ」


「仕事中だった?」


「うん。教材の確認してた」


「終わった?」


「今ちょうど」


 ナビキは箱の中を一度見て、小さく頷く。


「丁寧だね」


「新人だからね」


「そう」


 それだけ言うと、ナビキは私の向かいの席へ腰を下ろした。


 教育部の職員さんから預かった資料を、静かに読み始める。


 ページをめくる手が止まらない。


(早いなぁ)


 同期なのに。


 私なんて、一枚読むだけでも『これで合ってるかな』と何度も見返してしまう。


 それなのにナビキは、迷う様子もなく仕事を進めていた。


「どうしたの?」


 視線に気付いたらしい。


「いやぁ……」


 私は苦笑する。


「同期なのに、すごいなって思って」


「そう?」


「うん。落ち着いてるし、仕事も早いし」


 ナビキは少しだけ考えるように視線を落とした。


「慣れかな」


「一週間で?」


「人によると思う」


 さらりと言う。


 自慢するわけでもなく、本当にそう思っているだけなんだろう。


(やっぱりすごいなぁ)


 私は心の中でため息をついた。


 同じ日に入社したはずなのに。


 こんなに違うものなんだ。


「陽花」


「ん?」


「焦らなくても大丈夫」


「え?」


「ちゃんと仕事できてる」


 一瞬、言葉に詰まる。


「……ありがとう」


 そう返すと、ナビキは小さく頷き、また資料へ視線を戻した。


 なんというか。


 励ましてくれた……のかな。


 少しだけ照れくさい。


 でも、その一言で肩の力が抜けた気がした。


 私も私のペースで頑張ればいい。


 そう思いながら、次の書類へ手を伸ばした。

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