第二十九話 〇〇のお姉ちゃん
お姉ちゃんは。
いつも自分のことを普通だと言う。
何の取り柄もない。
特別なことなんてできない。
そんなことを、当たり前みたいに言う。
でも。
私は知っている。
お姉ちゃんが、私にとってどんな人だったのか。
◇◇◇
昔のお姉ちゃんは。
今よりもっと素直だった。
思ったことがすぐ顔に出て。
失敗すると落ち込んで。
でも次の日には、何事もなかったみたいに笑っていた。
私は。
そんなお姉ちゃんをずっと見ていた。
◇◇◇
高校生になって。
お姉ちゃんが家を出てから。
少しだけ変わったと思う。
話し方とか。
雰囲気とか。
少し大人になった。
最初は少し寂しかった。
私の知らない時間が増えた気がしたから。
でも。
久しぶりに会った時。
すぐに分かった。
ああ。
お姉ちゃんだ。
って。
変わったところはある。
でも。
大切なところは何も変わっていなかった。
◇◇◇
異世界で再会したお姉ちゃんは。
昔より少しだけ大人になっていた。
知らない場所で。
知らない人たちに囲まれて。
それでも、いつものお姉ちゃんだった。
自分のことを普通だと言って。
周りに助けられていると言って。
でも。
誰かが困っていたら、きっと放っておけない。
そういうところは。
昔から変わっていない。
◇◇◇
お姉ちゃんは知らない。
私がどれだけお姉ちゃんを見てきたのか。
たぶん。
言っても信じてくれない。
「そんな大したことしてないよ」
きっと、そう言うから。
だから。
今はまだ言わない。
少しずつでいい。
いつか。
ちゃんと伝えたい。
私がずっと思っていたこと。
◇◇◇
お姉ちゃん。
私にとって。
あなたは特別な人です。
何かすごいことができるからじゃない。
完璧だからでもない。
失敗して。
慌てて。
自分に自信がなくても。
あなたは。
ずっと私のお姉ちゃんだったから。
だから。
私は――




