表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【毎日19時更新】異世界就職したら『歩く人間凶器』でした ~普通に働きたい新人社員、出社しながら神様の学園に通っています~  作者:
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/32

第二十四話 週末の自慢は〇〇

「……自慢のお姉ちゃんだから」


 月依は照れたように笑った。


 私は固まる。


 自慢のお姉ちゃん。


 誰のことだろう。


 少なくとも。


 一昨日、ロウソクを教室の彼方へ飛ばして。


 歓迎会では盛大に暴発して。


 会社では書類を雪のように舞わせた新人ではない気がする。


「……うん」


 人違いだ。


 間違いない。


「お姉ちゃん?」


「ちょっと現実逃避してた」


「現実逃避?」


「月依の言った『自慢のお姉ちゃん』を探してた」


「目の前にいるよ?」


「いないいない」


「いるってば」


「絶対違う」


 即答だった。


 月依は困ったように笑う。


「もう」


 ◇◇◇


「次はこっち!」


 月依に案内され、石畳の通りを歩く。


 休日の街は今日も賑やかだった。


「あ、月依先輩!」


 向こうから女子生徒が駆け寄ってくる。


「こんにちは!」


「こんにちは」


「この前はありがとうございました!」


「いえいえ」


「また相談させてください!」


「もちろん」


 笑顔で手を振る月依。


 そのやり取りは自然で、慣れたものだった。


「……人気者だね」


「そうかな?」


「そうだよ」


「私は今でも『ロウソク飛ばした人』って覚えられてそうなのに」


「それは一昨日だけだよ?」


「一昨日だから新鮮なんだよ!」


「新鮮って」


 月依がくすっと笑う。


「大丈夫」


「もうみんな仲良くしたいって思ってるよ」


「本当に?」


「うん」


「私だったら『次は何飛ばすんだろう』って警戒するけど」


「そんな危険人物じゃないよ!」


「……たぶん」


「最後が弱いよ、お姉ちゃん」


 ◇◇◇


 しばらく歩くと、大きな建物が見えてきた。


「ここ」


「図書館?」


「うん!」


 中へ入ると、本棚がずらりと並んでいた。


「普通だ」


「普通だね」


「ちょっと安心した」


「何を期待してたの?」


「本棚が歩くとか」


「それ図書館じゃなくて怪談だよ」


「だよね」


 二人で笑う。


「あら、月依さん」


 司書さんが声を掛けてきた。


「こんにちは」


「こんにちは」


「この前は本の整理まで手伝ってくれて助かりました」


「いえ、お役に立てたなら」


「……」


 私は月依を見る。


「手伝いもしてるの?」


「たまにね」


「暇だったから」


「暇で本棚整理する高校生いる?」


「いるよ?」


「目の前にいた」


 なんだろう。


 この子、本当にどこへ行っても馴染んでる。


 私は会社でコピー機の使い方を教わってるのに。


 人生、どこで差がついたんだろう。


 ……たぶんロウソクを飛ばした辺りじゃない。


 ◇◇◇


 図書館を出る。


「月依」


「なあに?」


「ちょっと聞いていい?」


「うん」


「私、本当に自慢のお姉ちゃんなの?」


「うん」


 間髪入れずに返ってきた。


「即答!?」


「だって本当だもん」


「いやいや」


「私なんて失敗ばっかりだよ?


 会社でも助けられて。


 学園でも笑われて。


 妹には心配かけて。


 自慢できる要素、どこ?」


 月依は少しだけ考えてから、小さく笑った。


「お姉ちゃん」


「うん?」


「お姉ちゃんはね。


 私のお姉ちゃんだから」


「……」


 あまりにも真っ直ぐな答えだった。


 だからこそ。


 何も言い返せなかった。


「……ずるいなぁ」


「え?」


「そんな答えされたら、反論できないじゃん」


 私が苦笑すると、月依もつられて笑う。


「えへへ」


 昔からそうだった。


 私は理屈を並べる。


 月依は、まっすぐ気持ちを伝えてくる。


 そのたびに、私の方が負けてしまう。


 ……今日も、負けだ。


「さて!」


 月依がぱんっと手を叩く。


「まだまだ案内するよ!」


「え、まだあるの?」


「もちろん!」


「高天原は広いんだから!」


「今日は一日じゃ終わらない気がしてきた……」


「大丈夫!」


「また来ればいいもん!」


 その言葉に、少しだけ胸が軽くなる。


 そうか。


 一日で全部知る必要なんてない。


 これから少しずつ。


 月依のことも、この街のことも。


 知っていけばいいんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ