第二十話 新入生のゲームの話は〇〇
「それでは本日の授業はここまでです」
キクリ先生の一言で、教室が一気に賑やかになった。
「陽花はん」
ヒルコちゃんが椅子をくるりと回す。
「テストどうやった?」
「……聞く?」
「聞く」
「たぶん駄目」
「即答やん」
ヒルコちゃんが吹き出す。
「歴史苦手なん?」
「暗記が昔から苦手なんだよ」
「日本史も世界史も」
「神話なんてもっと」
「そらしゃあない」
月依がくすっと笑う。
「でも陽花は暗記より実践派だもんね」
「その実践で暴発してるんだけどね……」
教室に笑いが広がる。
◇◇◇
四人は校舎を出て、寮へ向かって歩き始めた。
歩きながら、私は昼間の授業を思い出す。
「そういえば」
「ん?」
ヒルコちゃんが振り向く。
「授業で言ってたゲームの期間限定イベントって。
刀のソシャゲ?」
「うん」
「高天原でもできるの?」
ヒルコちゃんの目がきらりと光る。
「気になった?」
「なるよ!」
「私、日本では結構遊んでたし」
「あるで」
ヒルコちゃんは得意げに頷いた。
「高天原版」
「高天原版?」
「日本版をローカライズしたやつ」
「えっ!」
「そんなのあるの!?」
「もちろん」
「世界観はそのままやけど」
「こっち向けに細かい調整入っとる」
「例えば?」
「一部イベント
一部ボイス
あと神様絡みの表現とか」
「へぇ!」
思わず身を乗り出す。
「それ面白そう!」
「やろ?」
「日本版やっとった人は結構気になるんよ。
それでなー」
ヒルコちゃんは楽しそうに続ける。
「初期はバランス悪かったんやけど」
「あー」
「大型アップデートでかなり変わった」
「そうなんだ!」
「今は高速周回なら──」
「うんうん」
「でも高難易度なら、この刀が強くて──」
「なるほど!」
「さらに神装が実装されてからは──」
「へぇー」
「そこへ新しい育成要素が追加されて──」
「う、うん」
「装備厳選まで考えると──」
「…………」
私は歩きながら首を傾げた。
「……あれ?」
ヒルコちゃんがこちらを見る。
「どした?」
「ごめん。
もう何の話か分からない」
一瞬の沈黙。
そして。
「なんやそれぇ!」
ヒルコちゃんがお腹を抱えて笑い出した。
「陽花はんから振っといて!」
「最初は分かったんだよ!
でも途中から完全に上級者の話だった!」
「ここからが本番やのに」
「その本番についていけないの!」
月依も思わず吹き出す。
「ふふっ」
「お姉ちゃんらしい」
サクヤちゃんも小さく笑った。
「お二人とも、本当に楽しそうですね」
「ゲームの話になると止まらへんからなぁ」
ヒルコちゃんは照れくさそうに頭をかく。
「また今度続き話したるわ」
「うん」
「今度は初心者向けでお願いします」
「善処はする」
「そこは約束して!」
また四人で笑い合う。
夕暮れの帰り道は、思っていたよりずっと賑やかだった。




