表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【毎日19時更新】異世界就職したら『歩く人間凶器』でした ~普通に働きたい新人社員、出社しながら神様の学園に通っています~  作者:
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/33

第十七話 新入生の会社員は今日も〇〇

 金曜日。


 今日は教育部の学園研修日だ。


 社員寮を出ると、学生たちが楽しそうに登校している。


 その流れに混ざりながら、私は思わず苦笑した。


「会社員なのに登校かぁ……」


 少し前まで、スーツを着て会社へ通う生活を想像していた。


 まさか異世界で、会社員と学生を同時にやることになるなんて思わなかった。


「お姉ちゃん!」


 聞き慣れた声がして振り返る。


「月依、おはよう」


「おはよう、お姉ちゃん」


 制服姿の月依が隣へ並んだ。


「会社は慣れた?」


「まだまだかな」


「覚えることがいっぱい」


「でも、柚木さんが優しく教えてくれるから助かってる」


「それなら安心した」


 月依がほっとしたように笑う。


「今日はまた授業だね」


「うん」


「今度こそ暴発しないように頑張る」


 月依は少しだけ困ったように笑った。


「……その台詞、この前も聞いた気がする」


「忘れて」


「無理」


 即答だった。


「月依ちゃーん!」


 元気な声が校門の方から聞こえる。


 小柄で上品な少女がこちらへ駆け寄ってきた。


「おはよう、サクヤちゃん」


「おはようございます!」


 サクヤちゃんは月依へ笑顔を向けると、私にも丁寧に頭を下げた。


「陽花さん、おはようございます」


「お、おはよう」


 やっぱり礼儀正しい子だなぁ。


「おっ、朝から集合しとるやん」


 続いてヒルコちゃんもやってきた。


「陽花はん、おはよう」


「おはよう」


「今日は何か壊さんといてや?」


「最初から信用ゼロ!?」


「ちゃうちゃう」


 ヒルコちゃんは笑いながら手を振る。


「壊す気はないんやろ?」


「もちろん!」


「でも壊れる」


「なんで断言するの!」


 四人で笑いながら教室へ向かった。


 ◇◇◇


「皆さん、おはようございます」


 キクリ先生が教壇へ立つ。


「今日はカムイ測定の基礎を行います」


 机の上には、小さな水晶球のような道具が置かれていた。


「これは測定器です」


「皆さんが持つカムイの流れや出力を、安全に計測します」


 ロウソクじゃない。


 それだけで少し安心する。


「壊れるものではありませんので安心してください」


 ……今、先生なんて言った?


 嫌な予感がした。


「では順番に」


 クラスメイトたちが次々と測定していく。


「七十五」


「八十二」


「六十九」


 水晶が淡く光り、数字が表示される。


 みんな問題ない。


「では、霧島さん」


「はい」


 私は測定器へ両手を添えた。


(落ち着いて。)


(力を入れすぎない。)


 ゆっくりとカムイを流す。


 水晶が柔らかく光り始めた。


「いい感じですね」


 キクリ先生が微笑む。


 よかった。


 今日は成功――


 ピッ。


 数字が表示される。


 128


「お?」


 クラスが少しざわつく。


 さっきより高い。


 でも問題はない。


 ……と思った次の瞬間。


 数字が勝手に動き始めた。


 184


 297


 512


「え?」


 止まらない。


 水晶の光がどんどん強くなる。


「霧島さん!」


 キクリ先生の声が飛ぶ。


「一度、手を離してください!」


「は、はい!」


 慌てて手を離す。


 でも。


 数字はまだ上がり続ける。


 998


 1260


 1843


 3686


 8888


「えぇぇぇっ!?」


 教室中から声が上がる。


「測定器が止まりません!」


 キクリ先生も驚いている。


 その直後。


 ピーーーーーッ!!


 教室中に警報音が響いた。


 水晶が真っ赤に点滅する。


『測定限界値到達』


 機械的な音声が流れた。


 そして。


 ぷすん。


 白い煙を一筋だけ上げて、測定器は静かに沈黙した。


 教室は静まり返る。


 誰も何も言わない。


 私は恐る恐る手を挙げた。


「あの……」


「これ、私のせい……ですか?」


 一拍。


 二拍。


「ぶはっ!」


 ヒルコちゃんが腹を抱えて笑い出した。


「測定器の方がギブアップしとるやん!」


 その一言で、教室中から笑い声が上がる。


 私は机へ突っ伏した。


「だから壊すつもりはなかったんだってば……」


 キクリ先生は壊れた測定器を見つめながら、小さく息を吐く。


「……これは、職員室へ報告ですね」


 先生のその一言に、また教室が笑いに包まれた。


 どうやら今日も。


 平穏な授業にはならなかったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ