第十三話 新入社員の夜は〇〇
歓迎会が終わり、社員寮へ戻る。
といっても、この寮に来るのは今日が初めてじゃない。
入社した一昨日から、私はここで暮らしている。
高千穂の社員寮。
異世界の会社が用意した寮とは思えないほど、日本のマンションと変わらない造りだ。
個室で、お風呂もトイレも付いている。
食堂もあるし、大浴場まである。
会社って、どこの世界でも社員の生活を支えてくれるものなんだな、と少し感心した。
違うところがあるとすれば、窓の外の景色くらいだろう。
見慣れない街並み。
見慣れない文字。
見慣れない星空。
ここが異世界なんだと、一番実感する瞬間だった。
◇◇◇
「ふぅ……」
部屋着に着替え、ベッドへ腰を下ろす。
今日も色々ありすぎた。
会社で書類をぶちまけて。
歓迎会では、まさかの暴発。
「……なんで毎日こうなるんだろ」
思わず天井を見上げる。
静かな部屋だ。
日本で一人暮らしをしていた頃と、あまり変わらない。
違うのは、テレビをつけても知らない番組しか流れないこと。
ニュースで紹介される地名も。
映る人も。
流れるCMも。
全部知らない。
何気なくチャンネルを変えてみる。
神様の歴史を解説する番組。
カムイ競技の中継。
料理番組。
どれも悪くはない。
悪くはないけど。
「やっぱり、日本のテレビが恋しいなぁ……」
ふと、昨日思い出したアニメの最終回が頭をよぎる。
結局、見られなかった。
この世界から日本の放送を見るには、専用の通信施設を使うしかない。
しかも利用できる時間は決まっている。
気軽にテレビをつけるようにはいかない。
「帰ったら配信で見よう……」
そう呟いてから、自分で苦笑する。
「帰ったら、か」
いつ帰れるんだろう。
仕事が終われば、日本へ戻る。
そう聞いてはいる。
でも、どれくらい先なのかは分からない。
考えても仕方ない。
私はテレビを消し、部屋の明かりを少し落とした。
時計を見る。
二十二時半。
明日も仕事だ。
布団へ潜り込む。
目を閉じると、歓迎会で笑っていたみんなの顔が浮かんだ。
「……明日は、暴発しませんように」
誰にお願いしたのか、自分でも分からない。
そんな小さな願いを胸に、私はゆっくりと眠りについた。




