表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/29

23.殿様探しと古代遺跡

 「その遺跡の中から…。我らの殿を救い出して欲しいのです」


 「救い出す?どういうことだ」

 「黄金の林檎を取りに行った殿が、もう七日も帰ってきていません」

 「元は何日で帰る予定だったんだ?」

 「遅くても三日の筈でした」

 「何故部下じゃなく、殿様が直接リンゴを取りに行った?」

 「それが…」


 アメスケが事情を語った。


 里は七年前に林檎を盗まれて以来、新しい黄金の林檎を手に入れるため、毎年この時期になると調査隊が組まれ、ビルギル遺跡に送り出しているそうだ。だが今までどの隊も遺跡を攻略できず、林檎は今日に至るまで手に入っていない。


 痺れを切らした里の長である殿様が、今年は自ら部下を引き連れて、遺跡に入ってしまったのだと言う。


 ここまで聞いてルーとシンに疑問が生じた。


 「どうしてそんなにリンゴが必要なんですか?里の宝なのは分かったけど、絶対に手元に無いとダメな物なんですか?」


 「この里は年に一度祭りがあります。その時に黄金の林檎を祭壇に飾り、森に祈りを捧げるのですが、それがずっとできていません」


 「それの何が問題なんだ、ただの祈りだろう」


 「拙者達もそう思っていました。ですがリンゴが無くなった七年前から、里の周りの森が枯れ始めたのです…」


 そういったしきたりに価値を見出せていないシンだが、それを聞いてハッとする。


 本来カワズ盆地へは、森を二、三日かけて抜けてくる予定だった。だが、かかった時間は一日と少し。シンは地図の間違いかと思っていたが、実際は森が縮小していたのである。


 「…早く抜けれたわけだ」


 「殿は焦っていました。このままいけばそう遠くない未来に、森が無くなってしまうと…」


 ウッドホッパーの大量発生にも、森の縮小が少なからず影響していた。


 「確かにリンゴは大切。ですが、今は殿の命が優先。殿が遺跡に入ったのが七日前、それを探しに追加の隊が入ったのが四日前。どちらも帰ってきていません。ご助力願います」


 必死に頼むアメスケだが、ヒキガエルはそれを咎めた。


 「おいアメスケ、いくらなんでも外の人に頼むのはよくねえだろ…」


 「親分!そんな悠長なこと言ってられる状況ですか!」


 「俺だって悠長にしてるつもりはねぇよ。でもあそこがどれだけ危険な場所か、去年行ったお前ならわかるはずだ。そこに里の恩人を行かせんのか?」


 「確かに危険はあります。でもシンさんは強い、その上遺跡にも詳しい。この人に頼るしか道は無いんです!」


 二人が言い合いをしていると、アメスケの意見にある蛙が賛同する。


 「おいらもこの人に頼むのが良いと思うよ」


 声の主はヒナメだった。彼に気づいたキャロルが声をかける。


 「アンタさっきはよくも嵌めたわね!」

 「まあまあ、アメスケのおかげで助かっただろ?城番に頼んでこいつを呼んどいたのは、おいらなんだから許してよ」


 ヒナメにヒキガエルが問う。


 「なんでお前までそっちの意見なんだ」


 「この白髪のお兄さん、さっきあれだけの数に囲まれて全く物怖じしてなかった。この人強いよ。それに他に良い当ても無い訳だし」


 「ん〜」


 「殿を助けたいのはさ、おいら達みんな、おんなじだろ?」


 「…ハァ。わかった」


 ヒキガエルが大きなため息をついて承諾した。そしてシンの方に身体を向ける。


 「自己紹介が遅れたな。俺は里の見回り組組長のアガマだ。俺からあんた、いやシンさんに頼みがある」

 「言ってみろ」


 「遺跡から、殿と仲間を連れて帰ってきてくれ」


 「その頼み受けよう。だが報酬を貰うぞ」

 「もちろん礼はするつもりだ」

 「そうか、その言葉を忘れるなよ」


 ここに契約が成立した。そこからはシンが遺跡について聞き、作戦会議が始まった。


 「遺跡の構造を教えろ」

 「遺跡は、言い伝えによると、地下四階建てになっています。そして殿は、おそらく三階にいます」

 「何故三階だと思うんだ」

 「拙者たちは過去、三階までしか行けていないからです」


 ここ七年の調査で蛙達は、遺跡の地下三階までしか行けていない。また地下四階建てという情報も、百年以上前に里に来た、ある旅人が残した物だという。


 「前回リンゴを取って来たのはその旅人か?」

 「はい。かなり昔の事なので、素性はわかりませんが…」

 「お前達は何故三階までしか行けていない?三階に何があるんだ?」

 「三階には…恐ろしい大蛇が居座っています」


 遺跡の三階には大きな蛇が住んでおり、蛙達はこの蛇のせいで四階に降りれないのだという。


 「どう恐ろしいんだ?」

 「奴に睨まれると、身体が動かなくなります」

 「ほぉ、動かなくなる。三階に蛇、一階と二階は?」

 「一階は墓地のようになっています。二階は多少魔物は出ますが、広いくらいで特に問題ありません」


 ここまで聞いて、シンがルーとキャロルに確認を取る。


 「お前達はどうする?無理強いはしない。ここで待っててもいいぞ」


 「私は行くわ、死ぬまでに一度は遺跡に入ってみたいと思ってた。こんな機会逃せない」


 「俺は…」


 突然遺跡に入ることになり、ルーは迷った。もちろん行きたい気持ちはあるが、大蛇と聞いて身がすくむ。蛙達は強さを求めてシンを頼った。弱い自分が行っていいのか、足手纏いにならないか。その様子を見てシンが判断を下す。


 「ルー、お前は戦わなくていい。だが怪我人がいるかもしれん、その時担いで運び出せるようについて来い」


 「…わかりました」


 戦わなくていい。弱いルーはその言葉に安心し、ついていくことを決めた。


 会議の結果遺跡には、シンとルーとキャロルの三人と、案内役のアメスケで入ることとなった。



 三人はそこから疲労回復の温泉に浸かり、里で必要な物を揃えて遺跡に向かう。遺跡は里の近くの切り立った崖の、根本に入り口があるらしい。里を出発する際、ルーがアメスケの格好に注目した。


 「アメスケさん、かっこいい服装ですね」

 「ありがたし、これは拙者の旅の装いです」


 アメスケは笠を被って合羽を着て、手には手甲。腰には刀を差していた。


 「それに見たことない武器ですね」

 「これは刀です。里の者は皆、刀か槍で戦います」


 遺跡の入り口に到着した。そこには既に数人の蛙が待機していた。その蛙達の中にはヒナメとアガマもいる。その二人が、遺跡に入る四人に声をかけた。


 「おいら達は魔物が入らないように外で見張っとくよ。最近は変なのが出るからさ、みんなには殿のこと頼んだよ」

 「俺からも殿のことを頼んだ。後、これを持っていけ」


 アガマがルーに何かを渡す。


 「なんですかこれ」


 「これは匂いと音の爆弾だ。蛇は耳と鼻が効く。戦わずに済むならそれが一番だが、奴と遭遇したらぶつけてやれ、隙が生まれる。そこをズドンだ」


 「…ありがとうございます」



 シンとルーとキャロルとアメスケ、四人が遺跡に入る。


 遺跡は灰色の大きな四角い石を煉瓦のように積んでできており、その所々が苔で覆われていた。


 「緊張しますね」

 「ここはまだ大丈夫です」

 

 ルー達は階段を降りていく。


 地下一階に着くと、そこは入り口と同じ石造りで、聞いていた通り、墓石と石碑がいくつか立っていた。その石碑には読み取れない文字が多数書かれている。それを見てシンがつぶやく。


 「時間が許せば書き記したいところだ…」


 シンはテールと組んで遺跡の研究をしていた。この石碑も解読したいのだろう。ルーも少し石碑を覗いてみる。


 「父さんの残した書類にもこん…。痛い!」

 「どうした?」

 「…すいません。なんでもないです」


 石碑を覗いた途端、ルーの背中に激痛がはしった。だが痛みはすぐに引いたようだ、一行は近くにあった階段で下へと向かう。



 「どういうことですか⁉︎」


 階段を降りている最中、ルーが驚いて声を出した。


 「遺跡とはこういう場所だ。キャロル、探知魔術を使え」

 「もう使ってるわ」


 長い階段を降りて地下二階に着く。そこは草原だった、そのうえ太陽のような光源があり、地下一階とは比べ物にならないほどに広い。


 「シンさん。ここって建物の中ですよね?」

 「ああ。遺跡には二種類あってな」


 シンが遺跡についての説明を始めた。

 遺跡には古代遺跡と、それを模して後の時代に造られたものがある。後者の方は圧倒的に数が多く、規模も小さい。だが前者の古代遺跡は数は少ないが、規模も技術も常識を超えており、キャロルが話していた御伽話に出てくる、神と呼ばれる存在が造ったとされている。


 人類が初めて古代遺跡を発見してから二百年が経つが、未だに解明されていないことの方が多い。



 「建物の中に草原と太陽。つまりここは、古代遺跡だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ