第三話
「せっかくだ。リアルバトルと行きたんだが、生憎おれの機兵は修理中でな」
「いや、都合が良いよ。こっちはまだ許可貰ってなくて、リアルバトルは未経験なんだ」
「……お前ランクは?」
何か気になったのか?男性はふとツナのランクを聞いた。
「Bランクだけど?」
「ははは、正気化お前!?」
ツナの回答に額に手を当て笑い声を上げる男性。
「Bランクの分際で、Aランクのおれに挑んでくるとか。お前みたいヤツを蛮勇って言うんだよ!」
「Aランクって、お前こそ一つしか違わねぇじゃねぇか」
「わかってねぇな〜。CとBならいざ知らず、BとAなんだぜ。勝敗は日を見るよりも明らか」
「公式が決めたランクなんて物差しで、強さが測れっかよ!」
男性の威圧する言葉の数々に、ツナは一歩も怯むこと無くその全てを返す。
「ち、今更やめたは無しだぜ。完膚なきまでにお前を叩きのめしてやる!」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ!」
「いや、ツナ。そっくりそのままは返せないよ」
これからの勝負を前に向かい合う二人に対し、勝手に話が進んで置いてけぼりの彩里と少年。どうなるのか?と勝負が気になる人だかり。ツナの猪突猛進に頭を抱えるワタルたちなのだった。
「さきにバトルエリアに行ってるぞ。怖気付いて逃げるんじゃねぇぞ!」
「逃げねぇって言ってんだろ!首洗って待ってろ!」
ツナを挑発しつつ男性は、さきにコックピット型の対戦機器のハッチを締めた。
「くっそー。ぜってー勝つ!」
「勝ちに行くのもそうだが、毎度毎度面倒事に首を突っ込むなよ。第一お前が戦う必要は無いだろ。カードまで全部賭けて……」
「仕方ねぇだろ。悔しかったんだから」
「は?」
悔しかった。ツナが何でそう感じたのか?そう思ったのか?ワタルは皆目検討が付いていなかった。
「ホントに良いのかい?ツナくん」
「大丈夫ッスよ彩里さん。未来チャンピオンに任せてください!」
心配する彩里にツナは自身の胸をドーンと叩く。
「そこの少年も待ってろよ!あんなヤツ兄ちゃんがやっつけてやっから」
彩里とワタルの隙間からツナは顔を出し、観覧席にいる少年へVサインを送る。ツナのその行動に少年もコクリと頷く。
「ったく、お前は。くれぐれも油断だけはするなよ」
「わかってる」
「あと……」
「まだなんかあんのかよ?」
ワタルに対し、若干のしつこさを感じ始めるツナ。そんなツナに対してワタルは……
「絶対勝てよ!」
ワタルからツナへ最大のエールが送られる。
「……ああ、当然だ!」
ワタルからのエールにツナはいつも通りの言葉を返す。そして二人が離れたのを確認したツナは、機器のハッチを締める。
男性とツナの準備が整ったところで、いよいよバトルが開始される。
彩里とワタルも観客席のほうへと向かい、バトルエリア正面壁に広がる大きなモニターを前でバトルの行く末を見守る。
「IDカードセット!搭乗量産機確認。カスタマイズは、……これを追加っと。スタンバOK!指定バトルエリアまで転送開始」
対戦機器の操作盤を動かし準備を終えたツナは、使用機兵とともにVRのバトルエリアと飛ぶ。
BofSのバトルシステム
BofSには二種類の対戦空間が存在する。一つはリアルの機兵に搭乗し専用のエリアで戦うリアルバトル形式。もう一つはリアル機兵に搭乗出来ない人でもバトルができるVRバトル。
今回のバトルは、後者のVRバトルで行われる。
リアルバトルと一緒の点はSにヒットポイントが設定されていること。違う点はヒットポイントによる勝敗に依存があること。
リアルでは五体満足でヒットポイントが余っていても機能停止になっていればその時点で負けが確定する場合がある。がVRバトルではそれが無いためヒットポイントをゼロにする。もしくはタイムアップ時点でヒットポイントが多い方またはパイロットのどちらかが降参を申告した場合のいずれかで勝敗が決定される。
VRバトルではあるが機兵が損傷するほどのダメージを受ければその分ヒットポイントは減少するし、機兵能力も低下する。
以上がBofSのざっとしたバトル説明だ!長々と待たせてすまない。ではバトル開始だ!
現代的な町並みが広がるVR空間。そこに佇む一機のS。やがてそのSと向かい合う形でもう一機のSが転送されてきた。
転送されてきたSは量産機であり、ありふれた無骨な素体にはそのパイロットが好む武装がカスタマイズされている。
左肩には鎧武者特有の肩当てが、右手には特徴のない普通の日本刀が、加えて背部にはそれらとは相反するモノ戦闘機の翼とレールガンが合わさったものが装備されていた。
「待ってたぜ。にしてもなんだそのカスタマイズは、素人でももうちょっと考えるぜ!」
「うるせぇ!決められた範囲ないで自由にカスタマイズするのが、BofSの醍醐味だろうが!」
「わかってねぇな〜。どんなに自由にカスタマイズしようと、勝てなきゃ意味ねぇだろ!」
バトル開始前から互いの主張をぶつけ合う両者。
お互いのコックピットモニターにバトル開始のカウントが表示される。
5
「一応、自己紹介はしとくぜ。橘シンジ。Aランカーにして、専用機ボルテックのパイロット。このSが持つ雷槍でお前の量産機を貫いてやるよ!」
ツナのコックピットモニターに西洋騎士のようなSが携える大槍を一直線に構える。
4
「俺は桜木ツナ。現在Bランカーにして、……」
3
「未来のチャンピオンだ!」
2
「未来のチャンピオンだ〜。……ぶっ潰す!」
1
「ぜってー勝つ」
0 バトルスタート!
AIによるアナウンスと共にバトル開始の音がVR空間・スピーカーを介してリアル空間に響き渡る。




