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第二話

「何見てるんだ?」


 棚に掛けてある一種のカードパックを熱心に見つめるツナに、気になったワタルが声をかける。


「遠距離武器のみで構成されてるロックオンパック」


 ツナがじっと見つめていたのは、SをカスタマイズするCカードのパックだった。


「……買うのか?」


カードパックを前に悩むツナにワタルは聞く。


「いや、どうしょ〜か悩んでる」


「今なんの武器使ってるんだっけ?」


「遠距離はマシンガンかな。正直今のままでも良いんだけど、最近ランクも上がったし、メインで使ってる近接武器のことを考えると連射系より単発系のほうが良いのかな〜って思ってて……」


「なるほどな」


 自分が使っている武装やランクのことにあーでもない。こーでもない。と思考するツナにワタルは相槌を打つ。


「そっちはなんかあったか?」


 少しの間別々の棚を見ていた二人。ワタルは何か目ぼしいモノを見つけたのか?気になって聞くツナ。


「いいや。いつものようにお前に付いてきた来ただけだから特には。それに俺の近接武器はトンファーだから手に持つタイプの遠距離武器はカスタマイズ出来ないんだよ」


「今って背部に装備してるバルカンだけだっけ?」


「うん?ああ、装備できる遠距離武装がそれくらいしか無いからな」


 ツナの質問に仕方無いと肩を落とすワタル。


「遠距離武装って言えば他にもあるだろレールガンとビーム系とか」


 そう言いながらツナは握っている手から指を一本一本伸ばしていく。


「それはそうだけどコッチも色々あってな。レールガンは弾速は早いけど装填数が少ないし、ビームは機体の燃料を喰うからな。Aランク未満で量産機しか使えない今のままだとあまり良い装備じゃないんだよ」


「なるほどな〜」


「それに装備を組み替えたり、背部の武装ばかり考えてると機兵が重くなって機動性が失われるからな。僕とツナの機兵はどっちも機動性重視でそんなに装備つけらないからな」


「確かにな〜」


 互いに自身の機兵のことに首を傾げ、うんうんと頷きを繰り返す。


「Aランクに到達すれば専用機が貰えるから僕はそれまで我慢かな。まぁ、勝てなくなったりとか。スコアが伸びなくなったとかで、止むなく変えることはあるかもだけど……。で、どうすんだ?買うのかそれ」


 ワタルは、ツナが話しながら手に取っていたそのパックを目で指して聞いた。


「う〜ん……」


 ワタルの言葉にパックを見つつ悩み声を零すツナ。


「……よし、買う!」


「マジ!?一応言っとくけど、ロックオンパックはランダムパックとは違って一パック3枚入に対して、千円もするんだぞ」


「わ、わかってるよ」


「夏休み入って小遣い貰ったばっかりだろ。また月末に泣きの目にあっても知らないよ」


「俺の小遣い事情はいいんだよ!」


「はいはい。決まったなら会計にいこう」


 ワタルはそう言ってツナの肩を掴むと、電車ごっこのように二人で会計まで歩き出す。


「ちょっと待って!」


 歩き始めた途端、ワタルに促されるツナがストップをかける。


「なんだよ。他になんか買うのか?」


「……コーラ飲みたい」


「……僕も飲みたい」


 会計までの道を進もうとした気の合うツナとワタルは、電車ごっこのまま一度ドリンク売り場のほうへ進んでいった。


「すいません。これお願いしま〜す」


「かしこまりました。お預かりします」


 コーラを手に取り会計を済ませるため、二人はレジへ向かった。しかしレジの対応をしたのは先程の彩里ではなく別の女性店員だった。


「カード決済でしたら、こちらのパネルにカードをお願い致します」


 ピロリン!


「決済完了です。ありがとうございました」


 無事会計を終えた二人。ツナが買ったばかりのコーラに口を付ける中、売り場エリアに彩里さんが居ないことに気づくワタル。

 ワタルは会計を担当した女性店員の表情も僅かに暗いことが気になり、ワタルはその女性店員に彩里さんのことを聞いた。


「すいません。彩里さんって、今何処にいますか?」


「バトルエリアで揉め事があったみたいで、そちらの対応にいってます」


「揉め事?」


「私も詳しくは知らないんです。ただ自分が対応するからレジお願いとしか言われなかったので……」


「そうですか。ありがとうございます。ツナ!パック開けてないで行くよ」


「え!?あ、ちょっとまっ……」


 女性店員から彩里の居場所を聞いたワタルは、話を聞いて無かったツナを引っ張り、店の奥VRシステムがあるバトルエリアへと進んだ。


 VRシステムと呼ばれる対戦機器が左右に並ぶバトルエリア。

 エリア内を照らす天井の青い光がゲームセンターに近い明るさの空間を作っている。

 そんなバトルエリアの中央では僅かな人だかりが出来ていた。人だかりの奥に彩里の影が見える。


「なにあの人だかり?」


 話の流れをまだ理解していないツナが人だかりを前に?マークを浮かべる。


「なんか揉め事があったんだって。とりあえず行こう」


「え〜!俺人混み苦手なんだよ〜」


「僕も苦手だよ。てか、苦手じゃない人なんかいないでしょ」


 引っ張られたく無いからか?ぐだぐだ言いつつもツナは、先行するワタルの後をついて行く。


「最初に言っただろ、ルールはルールだ。ほら、さっさとお前のレアカードを俺に寄越せ!」

 

「ぼく、そんな約束してないもん!」


人だかりをかき分け向こう側へ出た二人。そこには高校生くらいの男性と小学生くらいの子が何やら言い合いをしていた。


「ですから家に限らず、こういった行為は全面禁止なので……」


「てめぇには関係ねぇだろ!これは俺とこいつの問題だ」


「いえ、ですからね」


 見た感じからどうやら客同士の揉め事に彩里さんが仲介に入ってるようだ。


「かれこれ十数分ってところか?」


「気の毒なことに……」


「あれが噂のレアハンターってヤツなのか?」


 バトルエリアに入ったばかりのツナとワタルの耳には、最初から見ていたのか?周囲からの憶測が流れていた。


「レアハンターって?」


 飛び交う言葉の中から気になったのか?ツナはその単語をワタルに聞く。


「最近聞く噂だよ。スコアポイントの乗らないフリー対戦目的で声を掛けて来て、勝った後対戦相手のレアカードを要求するんだ」


「へぇ〜、そんな小せぇことするやつがいるんだ」


 ワタルの説明に対し、ボソッとそれに対する印象を口にするツナ。


「おい、お前ら」


 高校生くらいの男性が人だかりほうへ顔を向ける。


「全部聞こえてるからな」


 男性の言葉に対し、「俺は何も……」「アイツが何か言ってた」など人だかりの中で今度は、疑いや擦り付け合いの言葉が飛び交う。


「知らねぇと思うから言っておくが、これはアンティルールによる正当な行為だ。部外者のお前らには関係の無いことだ」


 男性は人だかりに向かって、正当な行為と言い放つ。


「アンティルールだって!?」


「アンテ……、なにそれ?」


 男性が口にしたその単語に反応するワタル。その横でまた知らないツナが聞く。


「アンティルール。公式が定めたルールでその内容は、お互いに専用機やCカードを賭けて戦う行為のことだ」


「何その野蛮なルール」


「ああ、ツナの言う通り野蛮なルールだ。ただ……」


「ただ……。何?」


「アンティルールがあったのはBofSの初期シーズンだけで、それ以降は公式によって全面的に禁止されているんだ」


「当然の結果だな」


 丁寧なワタルの説明に対し、至極当たり前の反応を口にするツナ。


「そこのお前の言う通り、確かにアンティルールは公式から禁止されている。だがな、別に行ったからと言って逆に罰則が着く訳でもないんだよ」


 ワタルの声が聞こえていた男性は、彼が口にした説明に対しそう返す。


「そんな訳ない。BofSは過去の経験からパイロットの違反行為には他より厳しいはずだ!」


「それが意外なことに無いんだよ。今まで何度アンティルールを行ったが、おれは一度だって罰則を受けたことは無い」


 男性に言い返されたワタルは悔しさからか?奥歯を強く噛み締める。ワタルのそんな表情を隣で見てたツナは……


「ワタル。わりぃけど、これ持っててくれ」


 ツナはそう言うと、持っていたコーラのボトルをワタルに預けその男性へ近づく。


「おい!?ツナ」


 引き留めようとワタルは声を上げるもツナはその足を止めようとはしない。


「なんだお前?」


「おいアンタ。そのアンティルールってので、俺と勝負しようぜ!」


 ツナは男性を指差し、アンティルールによる勝負を申し込む。


「は?」


 ツナの宣誓に首を傾げる男性。


「アンタが勝ったら俺のカードを全部やる。安心しろレアカードも入ってる。その代わり俺が勝ったら今まで奪ったカードを持ち主に返すんだ」


「……いいぜ。その勝負乗った!」」


 男性は少し悩む素振りを見せるも、ツナが提案したその条件で戦うことを了承した。 

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