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魔女、プロデューサーになる  作者: ののんがのん
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16「準備と裁判へのお誘い」

 3日目の朝。わたしたちは以前開けた森の大穴でリハーサルをしていた。もちろん衣装を着ている。似合ってます。


 わたしは手拍子を打ち、カラスとネズミ、カエルには隠れて音を出してもらう。アモルのトラウマ刺激したくないし。カア、とは鳴かせずに低い歌声だけ出してもらっている。


「なんか…音数少なくない…?主な伴奏、というか…。そういう曲なの?」


 アモルが歌い終わってから首を傾げている。


「そっちは本番で用意するから」


 本番で…?とアモルが不安そうだ。


「うん、本番。ちょっとビックリするかもだけど、リハーサル…前練習じゃできないんだ」


「ヴァイス」


 びくり、とヴァイスが震えた。


「…歌ってくれない、かな。踊りは軽め、だし…」


 私はヴァイスの歌を評価している。アルトの声はテノールのアモルとお互いを引き立て合えるはずだ。


「メロディアが、そういうなら」


 そんなヴァイスの顔は真っ青だ。


「…」


「僕、ヴァイスの事は好きじゃないけどヴァイスの声は嫌いじゃないよ」


 !?!?


 アモルさん!?いきなりなに毒吐いてんの!?


「…そうか」


 ヴァイスもそれで嬉しそうにしている。ええ…。それ嬉しいのか…。きょうだい、仲悪いなりにアモルの価値観は認めているのかもしれない。


「じゃあ次!もっかいやるよ。お願いします、はい!」


 昼までリハーサルをし、2人にはのど飴を舐めてもらう。十分な休息をとってもらわないと。


 わたしはというと、思考を研ぎ澄まし、幻術を組んでいた。これ以上もうできることは無い。と思う。なんせプロデュースなんかしたことないし。


 夜がくる。


 夜、玄関の扉の下から手紙が差し出された。ごくり、と唾を飲み込む。


 めちゃくちゃ緊張する。手がカタカタと震える。


 いくよ、と振り返ると、私と同様に緊張している2人がいた。


「ふはっ」


「何笑っているの」


 アモルは恥ずかしそうに衣装のフリルを摘んだ。


「よしよし、ほら、わたしの手首を触ってごらん」


「…?」


 とくんとくん。おそらく心拍数は120くらい行っているだろう。


「はやい…ね。メロディアも緊張しているの?」


「当たり前じゃん」


 2人を抱き寄せる。3人とも心臓がうるさい。そりゃそうか。


「でも、2人の実力を信じてるから。わたしの命を預けられるくらい」


 それに、ぶっちゃけわたしの死イコールほぼアモルの死だと思っている。ヴァイスはなんとなく森で生きていけそうだけど、アモルは森の連中に恨みを買ってる、と思うから。


 酒場に顔を出してるとはいえ今の状態で人間界に逃がすのも不安だ。


 モニカもリズもレジェロも…。まだまだ彼らが生きているのを感じていたい。


「死にたくないです」


「…」


 2人ともが、息を飲んだ。


「じゃあ、お願いします」


 上品な蝋で封された手紙を開けると、私たちのいる場所が変わった。


「えっ」


 アモルはびっくりしている。仄暗い神殿のような作りの、裁判所のような場所だ。ぐるっとここが最下層になるよう半円になっている。


 目上には魔女が15人ほど、真ん中にいる血の色リップの魔女が魔女会会長、ローザリッテ様。


  その横に不機嫌な顔をした師匠がいる。まあみんな無表情か不機嫌かどちらかなんだろうけど。


  あ、裁判っぽいのに静粛に、とか言わないんだ。言う必要が無いし。しん、としている。


「改めまして、お久しぶりです。新たな名をメロディアと申します」


「新たな名、ね…」


 ローザリッテ様は思いっきり口の端と眉を顰めた。美人がやるとすごい気迫です。


「それで?その人間…と動物たちと…まあいいわ。お供を随分連れてきたのね。それらを生贄に生き延びようって算段?」


「いいえ」


「しかしお前は罪人、裏切り者よ」


 心臓がばくばくする。


「わたしは許されるために来ました」


「ほう」


 ビキ、と怒りのあまり血管が破裂する擬音が聞こえた気がする。怖い。


「しかし、メロディア?罪状はふたつある。ひとつ、勇者に魔女の技術が使われた銀の細工が行き渡ったこと。ふたつ、我々を故意的に避けたこと」


「おっしゃる通りです。面目ございません」


 ふう、と会長は怒りを逃すように息を吐いた。


「じゃあ死になさい」


「嫌です」


「馬鹿言うな!」大きな声が会場に反響した。


 ひ、ひえ。涙が出そう。拳をぎゅっと握って言う。


「あなた方は、殺せたはずです。わたしの事。とっくに」


 魔女たちが目を合わせる。言葉はないが仕草は雄弁だ。


「わたしが何を見せるか。知りたいのではありませんか」


「…いい啖呵を切るわね、度胸は嫌いじゃないわ。でも、貴方は見せる見せないの土俵に、まず居ないことを自覚なさい」


 ここで引き下がる訳にはいかない。


「魔女的に優等生かつ、異端だったわたしが、なにを見せるか見たい人!は〜い!」


 右手をあげる。


 …しんとする。さすがにひそ、ひそと囁きが聞こえる。


 誰も手をあげない。


 まずいかこれ。さすがに前世の学生のノリではいかんか…。


「…!」


 会長が息を飲んだ。


 会長の隣の、師匠が手を挙げている。


「…馬鹿弟子の失態はあたしの失態でもあります」


 ええ…!?魔女でそんなに情に厚いことあるんだ!?!


 そろそろと師匠の絡みのある魔女たちが手を挙げた。だんだん手が上がる。…7人。半分に満たない。


 はあ〜ッ、と、長いため息を吐いて、ローザリッテ様は言った。


「じゃあやってみなさいよ。」


「では、皆様に対する幻術の使用の許可を下さい」


「は?あなた図々しすぎない?」


 空気が固まる。ひんやり。もーここまできたら知るもんか!


「ええ、図々しいです、わたし。でもわたしを殺したら森の意思が反感を得ます」


 でたらめを言ったらまたため息をはかれた。私がすごい問題児みたいじゃないか…!


「よい。みな、メロディアに対し幻術防衛を解きなさい」


 聴衆がざわつく。しかし、と声を張る者もいた。


「よい。」


 鶴のひとこえだった。


「言質撮った!」


 わたしもビビり散らかしたし、息子たちも流石に怯えているかな?と後ろを振り返ると。


 眼差しが、燃えていた。やるきスイッチ…オン…!

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