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17話 金の流星を勧誘する

 吟遊詩人たち三人を助けた数日後、俺はまた店主に断って、閉店後に六人用のテーブル席を借りている。

 吟遊詩人の三人組を助け後に、俺は金の流星のリーダー、ローザとカタリーナさんのお店で話をする約束をすることができた。

 そして今日、こうして金の流星のメンバー、女性冒険者三人と向かい合って座っている。

 俺側の席にはジェシカロロシーと戦闘狂が同席している。ノーラは孤児院の子供たちの世話があるのでいない。

 俺は連日、連敗を更新している。だからなにがなんでも彼女たちを雇う契約をしたい。

 俺は緊張しながらもあの日の出来事、国王から呼ばれて登城し、妹のリリアーヌが海の乙女に選ばれたことを告げられて離れ離れにされてから今日までの俺の意思と活動を伝えた。


「水竜の退治⁉」

「本当に竜っていたんだぁ」

「予想外でした……」


 俺の話を聞き終えた彼女たちは驚いた顔をして瞬いた。


「冗談で言っているわけじゃない。俺は本気だ」

「話が噓じゃないっていうのは聞いていてわかったよ」


 金の流星のリーダーのローザが、大変だねと同情的な言葉をこぼす。


「王女さまも可哀想だね。今の時代に生まれてきちゃたから選ばれた、だなんて」


 金の流星のメンバー、中衛担当の剣士のエルナはテーブルに肘をつけて個人的な感想を述べる。

 カタリーナさんの話によると、彼女たち金の流星はギルドからの難しい依頼もきっちとこなす、信頼が厚い冒険者。同年代の冒険者たちよりも頭一つ抜きん出ていて、常に注目を集めているという。

 彼女たちは依頼がモンスターの討伐か、珍しい素材の収集だと思っていたようだ。


「妹を助けたいという気持ちが一番だが、そういう時代を終わりにしたい気持ちもある。いや、終わらせるべきだ、と思っている」


 神を信仰すること自体は悪くない。人々の心の拠り所になる。問題なのはリリアーヌのように関係のない人が犠牲になることだ。

 俺の意見に金の流星のメンバー三人はそうね、と理解を示す。


「しかし仮に私たちが入ったとしても、この人数だけでは難しい。戦力不足です」


 金の流星のメンバーの魔法使いヘルミーネは冷静な表情で問題を口にする。


「国の決定事項だから大々的に人を集めることはできない。だから、ギルドの掲示板に載せて募集することはできない。これは痛いね」


 剣士のエルナはテーブルに肘をつけて、どうやって人を集めているのと聞く。


「今はこの酒場で働きながら、一組一組に声をかけている」

「うわ、面倒くさい」

「悟られないようにしつつ、確実に実を結ぶにはこれしかない」


 剣士のエルナに即答で感想を言われた俺は、ため息をこぼすようにはいた。

 俺だって好きでこんな地道なことをしているわけではない。


「あと資金の問題もあります」


 魔法使いのヘルミーネに、どれだけ用意しているのですかと真剣な表情で問われる。


「これが協力してくれるみんなに渡せる俺の財産だ」


 俺は屋敷の中を整理して売って手に入れた、金貨が入っている革袋をテーブルに置く。

 袋一つが俺の頭一つ分くらい。それが三つある。


「うわぁ、重たそう」

「あなたそんなにもっていたの⁉」


 剣士のエルナとジェシカロロシーが袋に釘付けになっている。


「ああ。これが前金も成功報酬も含めての金額になる」

「これから集める人数や必要経費を考えるとそれだけでは足りないと思います」


 魔法使いのヘルミーネが首を横に振る。


「じゃあ、成功報酬として、水竜の鱗とか爪とかを貰うっていうのはどう?」


 金の流星のリーダーのローザが魔法使いのヘルミーネに提案をして、俺のほうを見る。


「すまない。そういう権限は、俺は持っていない。確実にもっているのは陛下だ。一番の功労者には謁見の間に呼ばれると思うから、その時にそちらで交渉をやってもらえないか? 現実的に考えて、すべてのことが終わった後、俺は何かしの懲罰は受けるだろうからな」

「え? 退治して脅威をなくしてあげるのに?」

「この計画を立てている時点で、俺は国の決定事項に逆らっている。成功しても失敗しても時系列で考えれば、反逆罪だろう」


 剣士のエルナ純粋な質問に俺は答えた。

 自分が罪深いことをしているというのはわかっている。

 それでも『妹の未来と命』、『自分の未来と命』を天秤にかけたとき、俺は『妹の未来と命』をとると決めたのだ。

 俺とリリアーヌはただ普通に暮らしていた。

 それがある日突然、一方的に大切なものを奪われたら納得できないだろうが。

 俺の固くて強い意思に、金の流星の三人組は口を閉じて俺を見ていた。

 同席しているジェシカロロシーと戦闘狂もなにも言わないので、広い店内に静寂が流れる。


「ねえ。ばっと鞄に入れちゃえば? 絶対に混戦するよ。わからないって!」


 剣士のエルナがにこやかな笑顔で静寂を破る。性格的にこれ以上静かな空気に耐えられなかったのだろう。


「ばれなければいいという問題ではありません。今後の私たちの評判に影響します」


 魔法使いのヘルミーネが、出来の悪い生徒に注意するように言う。


「やっぱり竜は珍しいのか?」

「うん。珍しいよ。空想に近い生物だから。遭遇したくて探しても、遭遇できないし」

「竜は絶滅危惧種に指定されています」


 金の流星のリーダーのローザと魔法使いのヘルミーネが、ギルドから得た情報や冒険者たちの間で認識されている情報を教えてくれた。


「相手は地上最強の生物かぁ。命あっての物種だから集まりにくいかも」

「そうね。でもそんな中で、やる気全開になる頭のねじが飛んだ冒険者は戦闘狂と私たちくらいじゃない?」


 剣士エルナのつぶやきに、金の流星のリーダーのローザが笑いながら楽しそうに言った。


「協力してくれるのか?」


 先ほどから聞いていると彼女たちは前向きなことを言っている。

 確かめたくて俺が口にすると、金の流星のリーダーのローザが頷いた。


「私たちは冒険者よ。冒険する心を忘れたら終わりでしょ!」


 金の流星のリーダーが目を輝かせて力強く言う。


「でも無謀なことはしない」


 魔法使いのヘルミーネがすぐにパーティーの方針を告げる。


「とどめさした奴、英雄だよね! お決まりの、王女さまをお嫁さんにもらえるっていう展開になるかもしれないよね⁉」


 場を盛り上げようと、剣士のエルナが楽しそうに言った。


「あたしたちは同性だから展開しようもないけれどね」


 金の流星のリーダーのローザが苦笑いする。


「だから最高の褒美は竜の素材」


 魔法使いのヘルミーネが最後に上手く話をまとめて結論を俺に教えた。


「そして、こういう時は根回しすればいい。情報戦の先制はどんな時でも有利になる」


 そして攻略法も告げる。


「根回し?」

「ふふふ」


 魔法使いのヘルミーネは艶のある桃色の唇の端をあげ、目を細めて美しく笑んだ。




11月29日魔導士→魔法使いへ修正しました。

11月29日金の流星のメンバー二人にも名前をつけました。

リーダー→ローザ

剣士→エルナ

魔法使い→ヘルミーネ



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