70話 エリクサーと錬金術師
早速ハレンにエリクサーの再精製を依頼する。彼女のラボで…。
「シロ、俺はアルカに連絡するからハレンを手伝ってやれ」
『え!? あのゴミ屋敷で手伝いですか? なぜ私が?』
「ラミは冒険者ギルドに行ってもらった」
『え!』
「リナとレナは馬車の整備と宿の手配に向かった」
『えぇぇ!』
「シロだけだ。何もしていないのは」
『えぇぇぇぇ!ひどい!』
最近シロが反抗期のようだ。出会った頃は素直に動いてくれたのに。
アルカにSIS通話で連絡する。
(アルカ、聞こえるか?)
(テセウス?聞こえるよ。)
(俺たちは砂漠の国の街に入っている。アルカは今どこだ?)
(山を越せなかったから、チャイナル人民国の首都に向かってるの)
(大丈夫か?何かあったのか?)
(うん。ハナコに背負ってもらってたんだけど山越えは無理だったの
それで魔国の影響がない国でテセウスを待つことにしたの)
(そうか、無事ならいいんだ。錬金術師を見つけたぞ。
今はエリクサーの再精製に取り掛かってる。)
(そうなんだ。出来たらいいね。)
(ああ、必ず治してやるからチャイナル人民国で待っててくれ)
(うん。無理しないでね。)
(大丈夫だ)
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クサッ… オェッ… ボォォォ…
シロがハレンの家を掃除して腐物をつまみ出し〝火焔線〟で燃やしている。
仕方がないので俺も手伝うことにする。
クッサァァ… ゲボッ… ボォォォ…
こんな場所で再精製をするとエリクッサーになってしまう。
俺とシロは涙目になりながら掃除をしたのであった。
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「なんとか我慢できる程度にはなったな」
『主殿、そうですね。こんな不潔な場所で霊薬は作れません』
「いうねぇ。ここは私の家なんだけどねぇ」
「とにかくだ、ここに準エリクサーを5リットル用意した。
今から再精製をして濃度を高めてくれ。
これを完成させるのは俺たちの目的でもあるんだ。」
「素材は私の手持ちで大丈夫だけど、アンタたちの手伝いも必要さね」
「もちろん手伝う。何をすればいいんだ?」
「この準エリクサーに私が研究した秘蔵の混合薬を入れる。するとほのかに発光するから魔力を注ぎ込んでおくれ」
「それだけでいいのか?」
「この準エリクサー5リットルが0.5リットルになるまで魔力を注いておくれ。絶対に途切れさせちゃいけないよ。ゴミに変わるからね。」
「どれぐらいの間、魔力を注げばいいんだ?」
「ん~、1週間ぐらいさね」
「へ??」
「い、いや無理だろ。魔力を注ぐのは交代してもいいのか?」
「それは大丈夫だねぇ。魔力が秘蔵の混合薬と結びつき、エリクサーに含まれる成分を高位結合させ、濃度が高まるさね。それが繰り返されることにより、準エリクサーからエリクサーへと変わるさね。」
手持ちの魔力薬では回復に足りないかもしれない。
俺は魔力は多いほうだが1週間は無理だ。交代をしても自然回復では間に合わない。シロへ大中小を問わず、街中の魔力薬を買い漁るように指示する。
ラミ、リナ、レナにもハレンの家に集まるようにSIS通話で連絡した。
「みんな集まったな。今からエリクサーの再精製を行う。目の前にある5リットルの準エリクサーが0.5リットルになるまで交代で魔力を注ぎ続ける。おおよそ1週間連続でだ。一番魔力が多い俺が主に注入作業をするが、魔力切れになる前に交代して魔力薬で回復をする。交代要員はシロとラミだ。リナとレナは補助をしてくれ。」
「「『はい』」」「は~い」
そしてアルカにSISで連絡をする
(アルカ聞こえるか?)
(テセウスどうしたの?)
(今からエリクサーの再精製に取り掛かるんだが1週間ほど手が離せない
SISで連絡を受けても返答できない可能性があるから、先に伝えておく)
(そんな大変なんだ。ごめんね。私のために…)
(いや、いいんだ。終わったら連絡するから待っててくれ)
(うん)
「よし、今から始めるぞ!」
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魔力を延々と注ぐのは本当にきつかった。
準エリクサーと秘蔵の混合薬を使っても簡単にはエリクサーは作れない。
だが、俺たちはついにエリクサーを作り出した。
「ハアハァ…やったな…」
『主殿…ついに…』
「これでアルカを治療できるね…ラミもうれしい」
魔道具ビーカーに入っているエリクサーが青白く発光している。
「ハレン、お前のおかげだ。心から感謝する。」
「研究を続けて良かったさね。私がエリクサーを完成させるとはねぇ…。」
「ハレン、感動もひとしおのところ悪いんだが、すぐに出発するぞ」
「ゼリウス、いやテセウス、私はここに残るさね。エリクサーをもっと簡単に作れたらアンタたちの役に立つだろ?私は足手まといだ。1年だけ時間をおくれ。もっと簡単に、もっと多くのエリクサーを作ってみせるさね。」
「そうか…なら準エリクサーをお前に分けるから役立ててくれ。」
「ありがとう。ならお礼にぺろぺろしていくかい?」
「い、いいのか? じゃあ胸か─『主殿?』
おほん…うむ。アルカの待つチャイナル人民国へ向かうとするか。
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ハレンにチャイナル人民国への経路を聞いた。
一つは俺たちが進んできた教都を経由してチャイナルへの街道を進むルート。
もう一つは、カーイロンの北にオアシスからの目印にした大きな山があり、その麓に古代のトンネルがあるらしい。そのトンネルを抜けると平原に出て、山脈に沿って南下するとチャイナル人民国の首都に着くとのことだった。
ただ、古代のトンネルは魔物の生息地となっており、冒険者を護衛に付けないと危険だと言われた。まあ、俺たちがその冒険者なんだが…。
「色々と助かった。古代のトンネルを通って向かうことにする。魔国の連中より魔物の方が安全だしな。俺たちは冒険者だ。魔物の相手も慣れている。」
「そう。気を付けて。私はここでアンタたちの無事を祈ってるさね」
「ああ、元気でな…」
ハレンの家を出て、アルカにエリクサーが完成したことをSISで伝える。そしてチャイナル人民国へ向かるから待っているようにとも。
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カーイロンの街をでて北へ進む。
ソリの魔道具を馬車に装着しているので道中は順調に進む。
そして古代のトンネルに着いた。
「大きいな。これってトンネルと言うよりダンジョンっぽいな」
『そうですね。馬車が普通に通れる大きさですね。』
古代のトンネルは直径が10mほどもあり、現代のトンネルに酷似していた。
「内部は明るいな。天井に付いているのは照明器具なのか?ナトリウム灯に似ているな。なんで地球のランプが付いているんだ?」
『ナトリウムトウですか?それは何でしょうか?』
「いや…独り言だ。警戒しながら先に進もう」
御者はリナとレナに任せた。俺とシロとラミは馬車から降りて周囲を警戒しながら歩く。途中、何度か魔物が出現したが問題なく討伐して進む。
古代のトンネルは長かった。だがこの中で野営をするのは危険なため、休憩もそこそこに通り抜けるまで進み続ける。
高速道路やトンネルに設置されているナトリウム灯が、なぜ異世界にあるのか不思議で理解できなかったが、この世界自体が理解の及ばない事象が多いので、この程度を気にしても仕方がないと、考えないことにした。
丸一日以上は進んだだろうか、特に問題もなく古代のトンネルを抜けることができた。途中で商隊などとすれ違うこともあったので、普通に使われている経路なんだろう。
トンネルを抜けると目前は一面の平原だった。舗装はされていないが、通行するには十分な踏み均された道がある。ハレンから聞いた通り、山脈に沿ってチャイナル人民国へと向かった。




