69話 錬金術師とエリクサー
錬金術師の住居と思われる家の入口を探す。それらしきドアはあるのだが、なんか地面がじゅくじゅくしている。汚い。ドアに白いキノコが生えてる。汚い。魔物の素材らしき物や鉱物?のような物も落ちている。汚い。茶色しシミが付着した布や綿のような物も落ちている。汚い。
「あ~、シロ君…。」
『…主殿なんでしょうか』
「あ~、我々は錬金術師を探している」
『…はい、それで?』
「あ~、目の前にはファサスから聞いた錬金術師の家がある」
『…それで?』
「チミぃ、察しが悪いね?」
『…はい??』
「あ~、誰かがあのドアから訪問しなければならない」
『…はぁ』
「あ~、誰かがだね、あそこから錬金術師を呼…
「誰?うるさいねぇ」
中からきったない白衣を着た錬金術師と思われる中年女性が出てきた。
「初めまして。俺はA級冒険者のゼリウスだ。ファサスから腕の良い錬金術師を聞き、アナタを探し訪ねてきた。」
俺は挨拶して、その白衣の女性へと近─「くっせぇ!」
「あ?失礼な奴だねぇ。女性に向かって臭いなんて」
「いや、アンタ本当に臭い。すっぱ臭い!」
「うるさい!で、何の用なんだい?」
「あ、いや、すまない。つい本音が…。俺達はエリクサーに関する知識を持っている錬金術師を探している。」
「で、それがどうしたんだい?」
「アンタはエリクサーの濃度を上げ、効果を高めることは出来るか?」
「はぁ?エリクサーなんて入手も出来ないし、素材も手に入らないよ!」
「仮に、仮にだ。効果が高まったエリクサーがあれば切断された四肢が治ることは可能なのか?使用する量は考えないとして。」
「理屈で言えば可能さ。王族や高位貴族たちは、そのために霊薬に関する素材や情報、霊薬自体を独占しているからね。」
「霊薬とエリクサーは違うのか?」
「違うとも言えるし、同じとも言える。地域により素材や製造過程が異なるだけで効果自体は似たような物だしね。」
「アンタは未完成のエリクサーを完成させることは出来るのか?」
「その物を見ないと何とも言えない。私は一般素材から霊薬を完成させる研究をしているからね。で、持って…いるのかい…?その未完成のエリクサーを…」
俺は悩んだ。未完成であるがエリクサーに違いはない。安易に所有している情報を出すのはリスクが高い。だが、リスクを負わずにメリッ─「ハァハァ…」
錬金術師がハァハァ言い出した。ちょっとこの人怖い。
「出してよ。エリクサー。ぺろぺろ…させてよ…」
「えぇぇ…。なにこの人…」
『主殿、この方は少しおか─「ぺろぺろさせてぇぇぇぇぇぇ」
とんでもない変人だった。
この変人はテセウスに飛びつき、しがみ付いて体をまさぐり始めた。
「ちょ、ちょっと!アンタ何するんだ!てか臭い!離れろ!」
「ふがふが、くんくん。出せぇぇぇ。エリクサーをだせぇぇ」
『この変人!主殿から離れなさい!』
「ゼリウス!ラミに任せて!」
ラミが力業で錬金術師を引き剝がす。ラミの膂力には勝てないようで、彼女の腕の中でジタバタと暴れている。収拾がつかないので最後の手段に出る。
「#多くの火よ硬質の熱となり回り飛べ:………
錬金術師の家を目標に超高速回転したオリハルコンのビットが100本出現する。
回転ノイズが"キュィーン"と大量に鳴り響き、金属棒が空中に浮かんでいる。俺は一時中断したまま、彼女を見て警告する。
「おい、落ち着け。さもないとお前の家を破壊する」
「ほ、ほげぇぇぇぇ!!」
変人は叫び声まで変わっていた。
さすがに家が破壊されるのは困ったのか、彼女は落ち着きを取り戻した。
ラミに確保されたまま、そして話を再開する。
「ハァハァ、で持っているのかい?例のブツは」
「いや、ちょっと待て!なんか危ない薬の話みたいだぞ!」
「出してよ。もう我慢できない。ハァハァ。私のことは好きにしていいから」
「なんでそんな話になるんだ!落ち着け!」
「私の体を、ハァハァ、好きにぺろぺろしていいからぺろぺろさせてぇぇぇ!!」
「落ち着いたらほんの少しだけアンタにやる!だから落ち着け!」
「で、何の話だったかい?」
「アンタ急に落ち着きすぎだろ!!」
話が全く進まなかったので、仕方無しに少量だけ所持していることにし、秘密の場所で採取をすれば補充が可能ということにした。
「そうだねぇ、未完成のエリクサーを再精製すれば濃度は高まる。でも濃度が高いから効くって物でもないのさ。それなら煮詰めれば濃くなるからねぇ。そこは錬金術師の腕の見せ所さね。それに霊薬やエリクサーは保存方法も大事なのさ。」
「魔道具水筒などに保存している場合はどうなんだ?」
「んん?まあ魔道具に保存しているなら基本的には問題はないと思う。普通の瓶などに保存していると魔素や高位素材の成分が劣化するからねぇ。」
俺は彼女に背を向け、異空間収納から魔道具水筒を取り出し、泉の水を少しだけ小瓶をに移し替える。そして周囲を見渡し、人が居ないことを確認して小瓶を見せる。
「これが未完成のエリクサーだ。詳細は話せない。これを再精製して四肢が回復するように作れるか?」
小瓶を開け、彼女の顔の前まで持っていく。ラミには目で離すなと合図を送った。
「ハァハァ、少し、少しだけ舐めてもいいかい?少しだけだから…」
俺は小瓶を彼女の口に当て、少しだけ泉の水を注いだ。
「ほんげぇぇぇぇぇぇぇ!」
彼女が失神して倒れた。
「えぇぇ…どうすんのこれ…」
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アヘ顔ダブルピースで失神している中年の彼女…
ラミも気持ち悪くなって地面に投げ捨てた。
『主殿…この人は大丈夫でしょうか?』
「死んではないと思うぞ。」
『いえ、そうではなく、錬金術師としてなのですが…』
「……今は他に手段が無いからな。」
『無理やり起こしますか?』
「そうだな。この表情で気絶しているのを見るとイライラするしな」
俺はウォーターの魔法を発現させて彼女にぶっかけた。
「ほぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「アンタはいちいちリアクションが癪に障るな…」
「ひ、ひどいねぇ。女性に水をぶっかけて起こすなんて。」
「これで少しは綺麗になっただろ。」
「口説いてるのかい?ブツのお礼に私をぺろぺろしてもいいんだよ。」
「そっちの綺麗じゃない!アンタが臭いから汚れが落ちたって意味だ!」
「お礼はいいのかい?私の胸は大きいよ。ほら。」
「す、少しぺろぺろについて話を聞かせてもらおうか」
『主殿…?』
おほん…うむ。話がまた進まないのでエリクサーの事を聞く。
「で、このエリクサーの濃度を上げて四肢を治すことは可能か?」
「可能だねぇ。だがこいつはちょっと薄い。準エリクサーって感じさね。高品位のエリクサーにするには大量に必要だねぇ。」
「大量にあれば可能なんだな?」
「ああ、可能だねぇ。」
「どれぐらい必要なんだ?」
「そうさねぇ、四肢の欠損状況にもよるねぇ」
「両足首の切断を完全に回復するまでだ。」
「うーん、その状況だと…5リットルは必要になるかねぇ」
「5リットル!?」
「ああ、それぐらい大量に必要とするさね」
魔道具水筒には、大量の泉の水が入っている。それこそ何百何千リットルはあるだろう。それを伝える訳にはいかないが、再精製を依頼する方向で話は進める。
「何とか5リットルの準エリクサーを用意する。これを高品位のエリクサーへ再精製して欲しい。その場合の報酬を教えてくれ。」
「そうさねぇ…。報酬は私を仲間にすることさねぇ。アンタたちは5リットルもの準エリクサーを用意できるのだろ?さすがはA級冒険者のパーティーさね。私へ定期的にこの準エリクサーを与えておくれ。」
条件は金品ではなく、定期的な泉の水を提供すること。内容自体に問題ないが、俺たちは魔国やコリアラ王国から追われる立場。彼女がこの旅について来られるとは思えない。少量の準エリクサー提供と金品で請け負ってくれないか交渉する。
「俺たちは身が危険になるほどの事情がある。アンタが同行するのは難しいと思う。ある程度の準エリクサーと金品で依頼を受けてくれないか?」
「イヤだイヤだイヤだーーー!ずっとブツをぺろぺろしたいのーーーー!」
「ちょ、おま「いーーやーーだーーー」
「私を好きにしていいから連れてって!!!!!!」
「俺たちは魔「いぃぃやぁぁだぁぁぁ!!!」
「ちょっと話を聞「ぺろぺろしたいのーーー!!」
「……私の胸は大きいよ」
「ふむ、一緒に行こうか」
俺の自慢はストライクゾーンが広いことだった。
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「アンタの名前を教えてくれ。」
「私の名前は〝ハレン〟よ」
彼女の同行が決定した。本当に危険となれば街に退避させればいいだろう。
そしてキリッとした表情でシロたちへ伝える。
「彼女の才能は有用だ。アルカの治療と俺たちの旅に必要だろう。」
『主殿…?』
「ゼリ…テセウス、アルカに言っちゃうよ?」
「まだやましい事はしていない」
「まだ??」
見知る事は全て守秘義務がある。と伝えて魔道具の契約書にサインをさせた。
不履行の場合は罰則が発動する。以前にもアルカの弟子へ使ったのだが
”この世界の契約は絶対である”
ハレンは仲間となり、情報を制約せずエリクサーを作ってもらうことができる。




