62話 奪還そして帰還
情報が更新されたSISマップには大量の〝unknown〟輝点の中に、アルカと思われる〝ally〟の表示を見つけた。俺はアルカが生きていた事とハナコの探索で識別出来たことに喜んだ。
面識の無い者が探索をした結果を敵味方識別出来るのか心配だった。だが、端末を通じて識別情報は蓄積共有されるらしい。俺はSISに心から感謝した。
その時、戦時警報のようなモーターサイレン音が鳴り響き、光魔法のサーチライトが上空を照らした。
(ハナコ、俺達は即時行動する。撤退して身を隠してくれ。)
(ワシはこのまま旋回して陽動する。主達の侵入を確認してから撤退する。)
(すまない。危険だと感じたら即時撤退してくれ。)
(あい。わかった。)
走りながら、今までに無い1000個のビットを意識して収容所の壁面へ放った。
スガガガガーーーーーーーン!!!
土煙が一面に舞い、視界が閉ざされた。
だが、俺は構わず壁面の開口を目指して突進した。
「クロ、内部の探査を頼む!」
「ワカッタ」
サイレンは鳴り響き、サーチライトが上空から俺達に向けられる。すかさず数十個程度のビット魔法をサーチライトへ打ち込み次々と破壊する。
兵士が続々と施設から出て来る。俺はその兵士に躊躇なくビット魔法を撃ち込んだ。
兵士の彼らは悲鳴を上げ、次々と倒れる。恐らく即死だったと思う。俺はアルカを拉致した魔国の兵士達に向ける慈悲は、持ち合わせて無かった。
シロとラミも迫りくる兵士を攻撃し、そして倒していく。クロがアルカまでの施設を走り回り、SISマップを完成させる。俺達はその後に続き、施設を走った。
途中、ドワーフ達が収容されている房を発見した。ラミに指示をしてドアを破壊し、次々と開放して行った。
そして…
アルカが収容されている、独房を発見した。
「アルカ…。迎えに来たよ…。遅くなってごめん。」
「テセウス?テセウスなの?」
アルカの声が聞こえた。彼女は生きていた。俺はその声を聴いて安心した。
「ああそうだ。今すぐここから脱出する。ドアを破壊するから離れてくれ。」
「大丈夫。アタシはドアから離れているわ…。」
そしてビット魔法を頑丈な錠前に撃ち込み、ドアを開けた。
「アルカ…さあ一緒に行こう。」
俺はベッドに横になっているアルカに手を差し出した。
しかし、彼女は起き上がらなかった。
「アルカ…?どうした?早く逃げよう。」
「あのね、アタシ…。綺麗な体じゃ無くなったの…。ごめんね…」
「アルカ?そんな事は気にしなくてもいい。俺がお前を綺麗にする。ここでの出来事は忘れるんだ。」
「違うの…あのね、アタシ…」
「アタシ…歩け…ない…の。ごめ…んね、足が無くなっちゃたの…」
バッと彼女に近づき、布団を取って足を見た。
「あぁ……アルカ…」
「ごめんね。綺麗な体じゃ…無くて…」
「テセウスに相応しくないよね…」
「こんな…足じゃ嫌われても仕方ないよね…」
余りの怒りに俺は全身の血が沸騰した。
「がああぁぁぁ!!!許さあぁぁん!!皆殺しにしてやる!!」
そこからは怒りに意識を支配され、魔国を滅ぼす事しか考えられなかった。
膂力が向上したシロがアルカを担いで急ぎ退却をした。
俺は、その後、感情を制御出来ずに片っ端から兵士を殺害して回った。
収容所から次々と警備兵が迫りくる。
俺はビット魔法とオリハルコン剣で撃ち抜き、そして切り刻んだ。
収容所の殆どの兵士を倒しただろうか、俺は外に出て魔王城に向かった。
工業特区はサイレンが鳴り響き、拡声器と思われる物で「侵入者を撃退せよ」と声が響き渡る。
応援で駆け付けた数名の魔導士が、洗脳の闇魔術を俺に放つ。
ステータスの上昇した俺には効果が無く、俺は魔導士へ逆に洗脳の闇魔術を放った。そして魔王城を襲撃せよと命じた。虚ろな目をした魔導士達が魔王城へ向かって行った。そして魔都警備隊と思わしき飛竜が特区へ大量に飛来した。
俺はその大量の飛竜目掛けて、ビット魔法を撃ちまくった。魔力の温存とかは考えていなかったと思う。飛び交う飛竜が次々と落下する。そして落下した飛竜に剣で止めを刺す。ふと横を見ると、そこには獣化したラミが一緒に戦っていた。
民間人も多数、巻き込んだと思う。逃げ纏う人々が多くみられた。
それでも俺は魔王城を目指して進む。特区からの道中で戦車が10台ほど現れた。砲身を俺に向け砲撃準備をしていた。その戦車へビット魔法を思い切り撃ちこむ。オリハルコンのビットは豆腐に針を突き刺すように貫通して、戦車は爆風と共に全て破裂した。
特区の道中から魔都の城下町へ入る、そして正面に魔王城が見えた。怒りが再び湧き出た。俺は全力で走り魔王城へ向かった。
魔王城の前は闇魔法で洗脳した数名の魔導士が倒れていた。恐らく反撃に合い、打ち取られたのだろう。城壁が焦げ付いている。
城門は閉ざされ、侵入を阻んでいた。俺はビット魔法を〝数多く〟と念じて城門へ打ち込んだ。だが、その瞬間、魔力が尽き俺は意識を失った…。
ガラガラ ガタン ガラガラ ガタン ガラガラ…
「う…ん。ここは? 荷馬車?」
「あ、テセウス!起きた?大丈夫?」
「あ、あ、あ、アルカァ…」
俺は声にならない声で彼女を名を呼んだ。
魔力が尽きた俺を救出したのはラミだった。
彼女は俺の危うさを懸念して、傍で共に戦い、そして救出してくれた。
「ラミ、すまない。ありがとう。」
「いいよ。その気持ちは分かるから。」
「そうだ!アルカ、足は…」
「うん…ごめんね…。」
魔道具水筒からエリクサーを取り出してアルカの足にかけてみたが、欠損部位の修復には至らなかった。
『このエリクサーでは濃度が薄いのじゃ。錬金術師に再生成を依頼すると治るやもしれんの。』
「そうだ!サムス男爵がエリクサーの素材を集めてたはず。リリアナに聞けば何か分かるかも!未開地の拠点に戻るぞ!」
俺は青いサイクロプスのツノの事を思い出した。だが、サムス男爵に襲われた報復で殺害をしている。リリアナが教えてくれるだろうか?無理ならば他の手段を検討すればいい。今はアルカを救出出来た事を素直に喜ぼう。
「カトリク教国の経路は、魔国軍と遭遇する可能性がある。ドツイン帝国からコリアラ王国に抜けて、そして未開地へ向かおう。」




