61話 奪還までの準備
ティファルからの街道を通り魔都に到着した。魔国の関所は、オーガのシロが居たせいなのかフリーパスで通過した。魔国は魔族の国、本当はシロやラミ、そしてハナコが暮らしやすい場所なのだろう。
怪しまれないように魔都の宿屋へ向かった。魔族の国と言っても人の街と何も変わらなかった。
通貨も手持ちの金貨や銀貨で支払う事が出来た。
宿を確保した俺達は外出して観光のふりをした。そして工業特区の情報を収集する。これには魔族のシロが大活躍した。
鍛冶屋や道具屋などで小物を買いながら工業特区の事を聞いて回った。噂を聞いて働きたいと言う形にして。
特区の場所は簡単に判明した。街中に案内の看板が出ているからだ。
俺達は観光と称して工業特区に訪れた。
川沿いの広大な敷地に大小の様々な建物が今も建設されている。そして歓楽街も建設されていた。歓楽街の飲食店に入り、食事を取ることにする。そしてさり気なく特区の情報を収集した。しかし収容所の情報は全く入手出来なかった。
「収容所の情報が集まらない。これは特区を歩き回ってSISに地形情報を入れる事が先だな。」
『ええ、そうですね。』
「ああっ!!」
『どうされたのですか?」
「そうだ、SIS端末のアップグレードを色々とありすぎて忘れていた。」
一度、宿屋に戻る事にした。
そして一部屋に集まり、SISの収納からオリハルコンを取り出す。
「このオリハルコンはミスリルより魔量付与の相性がいい。だから上位の端末が作れると思う。」
俺はSISのトップメニューを確認した。
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Strategy Integration System
~SIS~
1.管理者設定
2.利用者登録
3.端末登録
4.起動設定
5.情報検索
6.表示設定
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[端末登録]→[登録解除]を選択した。
【登録解除する端末機器をSISに認識させて下さい。】
例の女性ガイダンスが頭の中に流れる。
シロから端末を受け取り、SISに接触させる。
【この端末を削除しますか?[Yes][No]】
俺は[Yes]を選択して、登録を解除した。
するとホーンラビットの魔石へと戻った。
「おお、元に戻るんだな。素材を無駄にせずに済むな。」
そして[端末登録]→[新規登録]を選択して
オリハルコンインゴットをSISに接触させた。
【高位魔導物質を上位端末へ変換登録しました。SISとリンク開始します。】
【ポーン…。上位端末の利用者を選択して下さい。】
予想通り、オリハルコンを使用すれば端末の機能制限が解除された。そして白い腕輪端末に変換され、その使用者を利用者リストからシロを選択した。
「これで色々な機能が使えるはずだ。シロ、装着してくれ。」
『はい』
・鑑定機能 ・演算処理補助機能 ・異空間保管庫
使えなかったこの機能を試した。シロに魔石の鑑定をさせたが、問題無く行う事が出来た。
『主殿、素晴らしいです。』
異空間保管庫も問題なく使用出来た。これから魔道具袋はフェイクとして使う事にする。演算処理補助は、使い方が不明なので計算だけで試したが、俺と同じく答えが頭に浮かんだらしいが正しい使用方法は不明だった。
そして、ラミ、クロ、ハナコの端末も上位端末へと変更して、それぞれに機能の試験をした。皆が問題無く使えた。
「よし、ではアルカ救出作戦の概要を説明する。」
「まず、クロ、お前は特区を片っ端から回って地理情報をSISに送信してくれ。」
「ワカッタ」
「次にシロ、お前は魔国で最も怪しまれない。だから建設労働者として潜入し管理者へ接近してくれ。」
『承知しました。』
「ラミとハナコ、お前達は歓楽街の酒場で働き、客から情報を引き出してくれ。」
『ワシが飛んべば、一瞬で特区の地形が把握出来るんじゃぞ?』
「いや、恐らく対空警戒網が存在する。飛行は脱出時のみとして欲しい。」
『うーむ、仕方無いのう…。』
「ワタシは酒場で働いて、特区の情報を聞き出せばいいのね?」
「ああ、頼む。それから皆は、ピンガーを救出決行時まで、絶対に打たないでくれ。警戒されると困るからな。」
各自の役割を決めて、今日から動くこととした。根城は各自バラバラの宿とした。定時連絡は朝・昼・夜の三回で一斉送信とした。
俺は、魔都の近代化の進捗度合を調べる事にした。最初に発見したのは特区から移動する小さな戦車だった。その後に自走式高射砲も見かけた。高射砲が開発されているということは、ハナコが飛行をしている時に狙撃される恐れが出てきた。
そして大きな問題は砲撃の威力だ。残念だが、これは調べる方法が無い。
そのため次を調査する事にした。
魔都には至る所に風魔石とミスリルの買取を案内する看板が有った。恐らく軍需素材と思われる。
街は特に近代化の恩恵は受けていなかった。軍事方面に特化して研究開発をしているのか。
特区に移動して調査をした。工場の煙突からは煤煙と思われる煙は排出されていなかった。白煙などは出ていたが、木材の焼却なのだろう。
それから推測して化石燃料の使用はないと判断する。では列車は蒸気機関で薪を使っているのだろうか?
しかし、先程の戦車は小型で蒸気機関にしては煙が排出されていなかった。恐らく魔法を併用した動力機関と仮定した。
仮定を積み上げて仮説を検証する。すると、ある事が思い浮かんだ。
魔法をエネルギーとして利用するのは風が最も効率が良い。圧縮された風魔法を暴発させるのは爆発エネルギーに等しい。火魔法を熱に変換する方法もあるが、機構が複雑化する。それこそ現代機械などの専門知識が必要となり、この世界の人間では加工精度と機構制御をクリアするのは不可能だと思う。
アルカでさえ、俺が形状を詳細に伝えないと銃筒を作れなかったのだ。
火魔法を使えば蒸気機関の作成は可能だろう。しかし構造を複雑化するぐらいなら、風でタービンやプロペラを直接回す方が効率が良く構造が単純化する。
それに風魔石の買取が至る所に掲示していた。この仮説は限りなく正解に近いと思った。
すると転移者の魔王像が浮かんできた。恐らく高度な教育は受けているが、専門技術者では無く一般知識の範疇で近代化を進めている。広く浅く知識を有している大人と想像した。
宿に帰り、今日は下調べを終えることにした。
定時連絡では、有力な情報は無かった。
クロは明日にでも特区の地形情報を調べ終えるそうだ。
明後日は、収容所の特定に動く。
翌日、特区や魔王城の近くを回ったのだが、警備兵の監視が厳しくて情報収集が限界だった。
そして夜の定時連絡でラミが魔王不在の情報を入手した。
現在、カトリク教国に戦闘指揮のために出陣しているらしい。多少強引でも帰還までの間に救出を決行する事にした。
クロの特区地形情報収集が完了した。
俺はアルカを個別に【周囲探索】で識別ができる。収容所と思わしき巨大施設も目星を付けている。
そしてクロが情報収集を完了した夜、街の人気が少ない場所で集合した。
「ハナコ、危険なんだが、深夜に巨大施設上空を飛んで広域探査をして欲しい」
『うむ。それしか手段は無いのう。』
「そして、その情報を元に俺が収容所の外壁をビット魔法で破壊する。クロは外壁から侵入して内部の地形情報を収集して欲しい。ラミとシロは…、危険だが俺と同行して一緒に救出へと向かって欲しい。」
『主殿、やっと救えますね。』
「ワタシは強いから大丈夫!」
「では、深夜に特区入り口付近で落ち合おう。」
一度解散をして、深夜に現地で落ち合う事にした。俺は宿に戻り、出発すると店主に伝えて荷馬車を特区まで運んだ。そして皆の到着を待った。
それから数時間後、皆が寝静まる真夜中と思われる頃合いに全員が集合した。
「ハナコ、広域探査のタイミングはSISで連絡をする。」
『あい、任されよ。』
「じゃあ、シロ、ラミ、クロ。向かおう。」
ハナコを除く者達で収容所と思わしき施設の側面に潜んだ。
そしてSISで広域探査の指示を出した。
暫くして、SISマップに情報が更新された。




