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異世界転移物語〜傍若無人なおっさんの成り上がり〜  作者: ゴディバン
第三章 組織と収入
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51話 拉致そして旅立ち

 「テセウス、起きて。」


 今は真夜中だ。


 「うぅーん。アルカどうしたんだ?こんな真夜中に」


 俺は眠気を我慢しながら質問した。


 「眠たいのにごめんね。今のうちにハグルの街を出発しましょ。男爵の件が王城に伝わったらテセウスは貴族殺しとして処刑されるわ。一緒に街を出て逃げましょ。」


 アルカは冷静だった。既に帝国からの避難民40名は隠密隊の1名が案内となり未開地へ出立していた。


 「ああ…、わかった準備をする。少し待っててくれ。」


 拠点内の必要な物を片っ端から魔道具袋に詰め込んで準備をする。あまり時間が無い。俺は急いて玄関ホールに向かいアルカと合流しようとしたその時、外から大勢の騒がしい声と金属の斬撃音が聞こえた。


 「まさか! アルカ!」


 外には隠密隊のエルフ少年2名が倒れていた。残り2名は騎士団らしき者たちと戦闘をしている。「アルカ!どこだ!」俺は必死に周囲を見渡す。するとアルカを担ぎ飛竜へ搭乗する魔導士らしきものが見えた。「おい!待てぇぇぇ!!」俺は全力で走り飛竜へ飛び掛かった。


 しかし、飛竜は意識を失っているように見えるアルカを乗せて飛び立って行った。


 俺は全身の血が沸騰した。アルカを奪った。許さない。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す…


 コイツらは誰だ。何が目的でアルカを攫う。なぜ俺からアルカを奪う。頭の中がぐちゃぐちゃになった。騎士団らしき者達が何名居たか分からない。俺は怒りで薄れゆく意識の、ギリギリの所で隠密隊に下がれとだけ伝えることが出来た。


 目前に立つ者は全て敵だ。「死にたくなければ武器を捨てて投降しろ。そうすれば苦しまずに殺してやる。歯向かうヤツは苦しみながら死ね。」俺はそう敵に向かい叫んだ。


 アルカに作ってもらったオリハルコンの剣を抜刀し正面に構える。この剣を握るとアルカと一緒にいるような気持になり、思考がクリアになる。騎士団と思わしき連中が切り掛かってくる。俺は進みながらそれを右へ左へと避け、殺さずに四肢を切り伏せてゆく。


 20人ほど切り進んだとき、魔導士と思わしき数名が魔法を放ってきた。黒い靄が俺を襲う。頭の中に直接声が聞こえる。「我に従え!我に従え!我に従え!」俺は思い切り叫んだ。「うるせぇぇぇぇぇ!!」すると黒い霧が消え、頭に聞こえた声も消えた。その瞬間、俺は、これは魔術の闇操殺だと理解した。洗脳し操る人族の固有魔術(スキル)だ。


 心力の低い者が心力の高い者に洗脳され、意識を奪われたり操られたりする。恐らくアルカはこの魔術により意識を奪われたのだろう。彼女の身体能力なら、この程度の者達に後れを取らない。唯一の弱点をピンポイントで攻められてしまった。


 理解した〝闇操殺〟の魔術を会得したのを自覚する。黒い霞を受けたからだろう。使い方、効果なども把握した。眼前の敵へ一斉に最大に技力を込めて闇操殺を放った。


 生き残った敵全員に及んだのが一目で把握できた。人形のように敵は立っている。俺は敵全員へ整列するように命令した。すると横一列に全員が整列した。


 俺は指揮官と思わしき人物に質問をする。


「おい、お前の所属を答えろ。」

「さざきょう きしだん なんぶほうめん たんとう しょうたい しょぞく」


「なぜ、アルカを拉致した?」

「ほんざん からの しじです」


「本山とはどこだ?」

「ほんざん は まこく です」


「本山の指示内容を言え。」

「どわーふ の しょざいを しらべ らち して ほんざんに おくること」 


「なぜドワーフを集めている?」

「わかりません」


 次に魔導士へ質問をした。


「お前の所属を答えろ。」

「まこく まどうしだん さざきょう しえんだいたい とくむぶ しょぞく」


「あの飛竜は魔国軍のか?」

「ひりゅうは まどうしだん さざきょう しえんだいたい しょぞく」


「あの飛竜はどこに向かった?」

「まこく こうぎょうとっく かじし しゅうようじょ」


「魔国工業特区とは何だ?」

「まおうさま けいかくによる だいきぼ こうぎょうちたい」


「工業特区はどこにある?」

「まこくおうと の とうほう かせんよこ の いったい」


「そうか、状況は把握した。お前ら全員動くな。」


 俺は横一列に並んだ連中の首を次々と刎ねた。


 アルカは魔王が進める工業特区の鍛冶師として拉致されたようだ。工業特区は魔国王都の東方河川横の一帯らしい。そこの鍛冶師収容所に運ばれている。


 倒れている隠密隊2名へ回復薬を与え、すぐに未開地へ出立する事を伝える。今すぐにアルカを救出に向かいたいが、ドワーフの鍛冶師として拉致されたのなら、ひとまず殺される心配は無い。シロ達と合流して準備を整えて救出に向かう事にした。1名を獣人村長の村へ派遣し、村人30人のうち、移住希望者のみを連れて来るように指示をする。


 ハグルの街を出て何日か経過したころ、未開地の新拠点に到着した。


 木々が切り開かれ小さな集落が出来ていた。

 建物は木造の粗末な物だが雨風は凌げる。


 シロ、エボル、オンジュを呼んで今回の事態を説明した。


 「……と言う訳なんだ。俺の不注意でアルカを奪われてしまった。俺は奪還するために魔国に潜入して、工業地帯の収容所を破壊しようと思う。シロ、命の保障は出来ないが一緒に来てくれないか?」


 『主殿、勿論です。来るなと言われても付いていきます。』


 「すまない。万が一の時は一緒に死んでくれ。」


 『はい。御供いたします。』


 「エボル、オンジュ、二人にはこの未開地開拓を任せたい。金貨も大半を置いて行く。これで何とか避難民と一緒に集落を発展させて力を蓄えてくれ。」


 「「承知しました…。」」


 「すまん。無理させて。両翼のリナとレナは現時点をもって従者を解任する。」


 「そ、そんな…。彼女たちはお連れ下さい!」


 「すまない。恐らく今回の旅は二人を守り切れない。分かってくれ…」


 「はい…」


 「皆には挨拶せずに出発する。他に同行すると言い出す者がでても困るしな。」


 「はい…。お気をつけて。帰りをお待ちしております。」


 「ああ…。元気でな。」


 シロと二人で未開地の拠点を出ようとしたとき、ラミが後ろから付いてきた。


 「ねえ、どこに行くの?ラミも連れて行ってよ。」


 「シロとちょっと旅に出て来る。ラミはここで留守番な。また戻ってくるから。」


 「だめ。ラミはテセウスに面倒を見てもらうんだよ。ここは違うからだめ。」


 「我儘言わないでくれ。大事な用事があるんだ。な、留守番しててくれ。」


 「アルカは?どこ?いつも一緒なのに居ないじゃん?」


 「ち、ちょっとアルカは先に行ってるんだ。今から合流するところだ。」


 「ん~。嘘だね。アルカに何かあった?」


 野生の感なのか、ラミの質問は鋭く、返答に困り出した。


 「いや。大丈夫だ。心配するな。」


 「ん~。嘘だね。だってテセウス泣いてるよ。」


 僕は気付かず泣いていた。外見は20歳だが中身は43歳のおっさんだ。

 精神的には成熟していると自分では思っていた。だが、無理だった。辛かった。


 涙が止まらず、その場で泣き崩れる。恥も外聞もなく泣いた。


 暫くして落ち着いた。泣き崩れて少しスッキリした。前向きに物事を考えられる。


 「ラミ、アルカが攫われた。シロと二人で魔国に潜入して救い出す。命の保障はできないんだ。だから待っててくれないか?」


 「嫌よ。」


 「頼む。本当に危険なんだ。シロには申し訳ないが一緒に死んでくれとお願いしている。だからラミはこの場所を守ってくれないか?」


 「い、や、よ。ワタシも一緒に死んであげる。二人じゃあの世で寂しいでしょ?」


 「ははっ…。そっか。すまない。ラミ、お前の命を俺にくれ。」


 「いいわ。あげる。さっさと行きましょう。」


 俺とシロ、ラミの三人でアルカ救出の旅が始まった。




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■□■□異世界転移で魔王になったよ。~極悪非道な物語~□■□■
サブのこちらも良ければお読みください。
こちらは軽いテンポと設定で進みます。
徐々に本作とサブが関連します。
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