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異世界転移物語〜傍若無人なおっさんの成り上がり〜  作者: ゴディバン
第三章 組織と収入
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50話 衝突と没落

 リリアナの実家である男爵家の領兵が帰還した。リリアナも拠点に帰ってきた。損害は大きくないようだが王国から戦費補填が出ないらしい。男爵家の財政が傾くかもと噂が流れた。


 「ただいま戻りましたわ。」


 「ああ、リリアナお帰り。」


 「今回の一時帰宅を認めて下さり、貴方には感謝しますわ。」


 「そうか、派兵はどんな状況なんだ?」


 「戦闘は散発的で双方の被害は軽微でしたわ。ただ、連合帝国軍が撤退して戦線が崩れ教国が退却を決定したみたいですの。」


 「連合帝国軍が撤退か。恐らく王族の拉致が原因だろうな。まあ兄弟が無事で良かったな。」


 「ありがとうですの。」


 男爵家から派兵した軍は1000名ほど。その遠征費は全額負担。そして王国からの補填は無し。リリアナが「お父様が魔国の教会を取り締まって戦費を取り戻すって騒いでいましたわ」と言ってた。サザ教会にも騎士団はいる。大丈夫だろうか?男爵家は悪循環に陥りそうな気がした。


 帝国に派遣していた隠密部隊が戻ってきた。多数の人材を引き連れて。


 今回の教国連合軍の出兵で大きな損害を出し、帝国内の税が大幅に引き上げられたとか。それに伴い多種多様の職人や農民が財産を巻き上げられ路頭に迷っている。その人々に隠密隊は片っ端から手を差し伸べ王国に連れて帰ってきた。彼らが「後で家族と向かうと言ってた人々もいます。調達した人数は把握できておりません。」と苦笑いしながら報告してきた。


 コリアラ王国内の景気も非常に悪くなっている。物の流通が激減している。金属や木材などの戦略物資や食料の入手が非常に困難になってきた。戦争による消費が原因だろう。俺は手詰まりになる前に未開地へ多数の人材を派遣して、自給自足の開拓を行うことにした。万が一の避難先を確保する意味も含めて。


 「シロ、大きな仕事を任せたい。部下を連れて未開地に行き、拠点を築いて開墾をし、物資の自給自足が行えるようにして欲しい。」


 「未開地で新たな拠点を築き、集落を作るのですね?お任せ下さい。」


 「そうだ。街で食料などは片っ端から集めてシロへ送る。だから拠点の建築と開墾を最優先で進めて欲しい。」


 「承知いたしました。」


 俺は未開地に以下の連中を馬車数台と荷馬車で送ることにした。

 また、大半の備蓄戦略物資や食材などを魔道具袋に入れて持たせた。


 シロ、エボル、オンジュ、パナ、ラミ、両翼、魔法術師

 ジャギ隊4名、リリアナ

 表第1・第2小隊8名

 工作隊4名

 裏第1・第2小隊8名

 猫少年5名

 犬少年5名

 ルカ(錬金術師)、アルカの弟子3人、鍛冶師2名

 付与術師、補佐2名、雑務2名

 の合計54名と帝国からの避難民を60名前後


 ハグルの街には

 俺、アルカ、隠密隊及び収益部販売係、帝国避難民の40名が残った。

 拠点に避難民を全員住まわせるには手狭く、止む無く未開地へ送り込む事となった。


 そして獣人村長の村に使者を送り、未開地へ移住して開墾と農作をして欲しいと要請した。彼らの村には30名ほどが暮らしている。全員に話をするのに時間が欲しいと言われた。「後日、案内の使者を送る。それまでに移住者を募って欲しい。」とお願いをした。


 ハグルの街は物資の流通が滞っている。しかしサザ教会は大規模な炊き出しを行い、住人への奉仕活動を毎日にように行っている。教会騎士団が護衛となり、物資が頻繁に運ばれているようだ。バックに魔国が付いているのでそこから支援物資が送られているのだろう。


 街の住民からサザ教会の評価が上がり、信者が急増している。これが魔国の狙いなのだろう。武力侵攻の余波で住民が困窮している土地にサザ教会が進出して施しを行う。宗教に国境は無い。先兵としてサザ教会が布教活動を行い、信者を獲得して心を掴む。信者から騎士団を募り、魔国側の武力へと勢力替えを行う。


 侵略と信仰の両方で他国を制圧しているようだ。魔王は相当の切れ者だろう。


 そんな時、男爵から領主の館まで出頭するようにとの命令が、俺のところに寄せられた。リリアナに「お前、男爵に何か言ったのか?」と聞いたのだが「特に何も言ってませんわ」と返答した。不思議に思いながら領主の館に向かった。そして執務室のドアまで案内された。


 「テセウス参りました。」


 「入れ。」


 男爵の周囲には警備のためだろうか、数名の領兵が立っている。俺は不穏な空気を感じたので【周囲探索】を念じて様子を探る。両隣の部屋と廊下に大勢の気配を察知した。失敗した。図られたようだ。ともかく俺は話を聞くことにした。


 「お呼びでしょうか男爵様。」


 「うむ。今日は貴様に話があってな。」


 「はい。何でございましょうか?」


 「ワシの調べた情報によると貴様は相当の資産を蓄えているそうじゃないか。それを領地の非常事態宣言に基づき全て接収する。」


 「は?今何と?」


 「貴様の資産を全て接収すると言ったのだ。」


 「何故でしょうか?お聞きしても?」


 俺は資産管理を信頼している幹部連中にしか任していない。どこから情報が漏れた?リリアナか?しかし彼女は食堂で配膳しかしていない。組織の財務情報など掴むことは不可能だ。だが今はそんな事を考えるよりも、この事態を切り抜ける方法を見つけなければ。


 「貴様に拒否権は無い。これは領主命令だ。資産の隠し場所を教えるんだ。命が惜しければな。」


 未開地へ収益部以外の大半を送り込んだ。今は拠点に防衛力は無い。タイミングが良すぎる。恐らくずっと監視されてたのだろう。

 

「我々に資産などございません。何なら調べて頂いても構いませんよ。」


 俺はとりあえず様子を探るために駆け引きを始めた。


 「ふはは。そうか。しかしもう遅い。ワシの手下が貴様の屋敷へ向かい家宅捜索を始めている頃だ。」


 金貨は俺とアルカとシロの魔道具鞄に分散させて全て収納している。必要な時に各自で取り出して渡していた。拠点を調べても、金貨100枚も出てこないだろう。


 「この王国の法律は国民の財産は保護される。と書かれた条文があるはずです。領主権限でも民の財産を接収する事は出来ないはずですが?」


 「この街はワシの一族が開拓して発展させた街だ。ワシが法律だ。」


 あ、バカだこいつ。


 「そうですか。では私も王国法に従い、自衛の権利を行使します。」


 「ふはははっ。貴様はもう取り囲まれておる。無駄な足掻きは止めるんだな。」


 知ってる。探索したし。領主だから下手に出たのが失敗だったな。もう猫被るのはいいか。疲れるし。


 「そうか。強硬手段にでるんだな。おい、お前、もう後悔しても遅いぞ。」


 その時、領兵の一人が「貴様!男爵様に対してその口の利き方は何だ!」と叫んできた。俺は「黙れ。国民の財産を奪おうとする輩に敬意など不要だ!」と言い返した。


 「ぶはは。威勢がいいな。だが、この話を聞いても強気でいられるか。おい連れて来い。」


 男爵が合図をするとドアから収益部の販売担当と庶務の3名が連行されてきた。


 「店舗の商品と売上金は全て接収した。店と屋敷は残してやる。こいつらの命が惜しくばクランの資産を全て差し出せ。」


 失敗した。店舗の在庫を処分するのに販売係だけを残したのが裏目に出た。仕方が無い。


 「わかった。クランの資産は俺一人で管理をしている。金は大事だからな。半分を差し出そう。これで勘弁してくれないか?」


 今、俺の魔法具鞄には金貨3000枚前後を収納している。最悪は全て取られても仕方が無い。命には代えられない。だが、素直に差し出すと疑われるので、諦め悪く足掻く演技をした。


 「駄目だ。全部出せ。それともこいつらの命より貴様は金が大事だと言うのか?」


 「違う。彼女達の命の方が大事だ。だがこの資産を全て取られると明日から他のメンバーが飢えるんだ。半分で勘弁してくれ。」


 「いや駄目だ。全てを差し出さねばこいつらを殺す。」


 「頼む、言う事は何でもする。全部は取り上げないでくれ。」


 「ぶははは。いい気味だ。こないだの威勢が嘘のようだ。ならば床に這いつくばり犬の様にこれを食え。」


 そう言って執務机の上に置いていた食べ掛けのパンを床に投げた。


 「ほれ。どうした?ワンと鳴いて食べろ。そうすれば半分で許してやる。」


 俺は我慢の限界だった。だが、言う事を聞けば金貨1500枚で済み、彼女達の命も助かる。仕方がない…。プライドを捨てて従うしかない…。


 俺は膝を着き、両手を床に着けた。そして目の前に落ちているパンを「ワン」と言いながら…食べた…。


 「ぶははは!傑作だ!無様な犬が卑しそうに残飯を漁っているじゃないか!ぶはは」


 泣きそうだった。いや、悔しくて泣いていたかもしれない。だがクランの長になった。これは仕方のない事だ。組織を存続させるためには必要だったと心に言い聞かせる。


 「ひー、はははっ。最高の見世物だったぞ。さあ、最後の仕上げだ。おい、やれ!」


 「はっ」


 ガシッ… ギャァー… ドサドサッ…


 「え?」


 何だ。悲鳴が聞こえた。何が起きた?まさか…


 恐る恐る顔を上げた。目に映ったのは彼女達が血を流して倒れている光景だった。


 「楽しませてもらったぞ。資産はお前の魔道具袋に入っているのは知っている。あとはお前を始末して証拠を消すだけだ。おい、集まれ!」


 男爵の合図と共に隠れていた20名近くの兵士がドアから入って来る。


 「最後の慈悲に名前ぐらいは呼んでやろう。テセウス、貴様を始末して魔導具袋を奪ってお終いだ。犬の見世物は最高だったぞ。あの世で自慢するがいい。」




 「やれ…。」




 そして兵士たちが一斉に襲い掛かってきた。




 あの時、俺はどう行動したのか覚えていない。

 頭の中が真っ白だった。

 ふと気が付くと骸が転がる真っ赤な部屋の中で、無残な姿になった男爵の頭部を持っていた。


 執務室のドアは開いている。朱に染められた光景は廊下の先にまで続いていた。


 男爵の頭部を床に投げ捨て執務室を出て歩く。


 朱の道は屋敷内を兵士の骸と共に続いている。


 玄関から屋敷の外へ出る。


 外には大量の破壊痕と領兵の死体が積み上げられていた。


 「こ、これは俺がやったのか…?」


 覚えていない。いや、意図的に覚えてない振りをしてるのか?

 現実を直視した俺はその場で胃の中身を全て吐き、そして気を失った。


 「…セ…ス。………ス。しっ…りして。」


 何かが聞こえる。


 「テセ…ス。しっかり…て。」


「ねえ、起きて。テセウス。」


 誰かの声が聞こえた。アルカだった。

 周囲を見ると拠点の自室ベッドだった。


 「テセウス。良かった。気が付いたのね。」


 「ああ、アルカ。どうして俺はここに?」


 「アタシのお店に残りの道具などを取りに行ったら、領兵が販売の子を連行する所だったの。兵を追いかけて領主の館まで行ったわ。」


 「暫く外から様子を伺ってたら、中から大きな音が聞こえてテセウスが出てきたの。兵士と戦闘をしながら。そして駆け付けた兵士を全て倒し、テセウスは屋敷に戻ったわ。暫く外で待ってたら、出てきた貴方は倒れたの。」


 「アタシは貴方の息がある事を確認して、連行された彼女を探しに屋敷へ入ったの。そして、彼女達を見つけたわ…。」


 「そっか。全部見たんだな…。」


 「どんな時もテセウスの味方よ。全てを敵にしても貴方に付いていくわ。」


 「ありがとう。アルカ。彼女達はどうした?」


 「拠点に連れ帰って、埋葬したわ。」


 「そうか…可哀相な事をした…俺のミスだ。彼女達も未開地へ派遣していれば…」


 「テセウス、それは結果論よ。今は考えても仕方が無いわ。」


 「だけど…」


 彼女が突然、キスをしてきた。

 そして服を脱ぎ、全裸になり俺を抱きしめる。


 「いいの。今は。テセウス、アタシは貴方の味方よ。どんな時でも誰が相手でも」

 「今は私を見て…」


 俺は彼女の体に乱暴に貪りついた。アルカは笑顔で俺を見つめている。夜が明けるまで彼女の体に依存した。心が安定を求めている。


 何度も彼女の中で果てた。

 思いつく限りのありとあらゆる事を彼女にした。

 彼女は笑顔でそれを全て受け入れてくれた。



 そして俺は眠りについた。


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■□■□異世界転移で魔王になったよ。~極悪非道な物語~□■□■
サブのこちらも良ければお読みください。
こちらは軽いテンポと設定で進みます。
徐々に本作とサブが関連します。
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