47話 戦争への不安
ついにクランとして活動を始める。
フハハッ、"ただのリリアナ"には、これから下女として炊事洗濯など拠点の家事をさせよう。思い知ったか、売られた喧嘩の借りは返したぞ。真面目に1年ぐらい下女を務めれば家に帰してやろうかな。
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最近、収益部の活動が活発になってきた。鍛冶師が銅でポットの形状をした調理具を作る。探索部がダンジョンから魔石を取って来る。その魔石から火属性の魔石を選んで、付与術師が発熱の術式を組み込む。そしてニホン魔道具店でそれを販売している。売れ行きは絶好調だった。価格も抑えている。
似たような魔道具は販売されているのだが、これは大小とサイズを分けている。家庭用(大)と野営用(小)だ。しかも相場より4割も安く販売している。付与術師が悲鳴を上げながら毎日ポット魔道具を作っている。
その魔道具の噂とクランのミスリル装備を見てなのか、街のカトリク教会から依頼が来るようになった。特注のミスリル儀式道具などだ。儀式道具は聖銀、つまりミスリルで作る必要があるとか。これも安く対応している。相手は教会だ。各支部から注文が来るかもしれない事を期待して。
付与術師や鍛冶師などを探すようにエボルに指示を出す。この魔道具製作販売に商機を見出したからだ。錬金術師のルカは、王城の城下町に錬金レシピ本を探しに出ている。金貨を多く持たせたので、馬車と護衛を付けて出発させた。
拠点の食堂で休憩をしていた、戦闘訓練担当のラミを見つけて話し掛ける。教練中の猫少年と犬少年は、冒険者登録を済ましている。ラミが猫少年たちは5名1組なら、森の表層に限り素材探査が可能との事。犬少年は、まだ教育が必要で目途がたてば教えるとの事だった。
「おい、ラミ、戦闘訓練はどんな事を教えているんだ?」
『魔物と遭遇したときの対処法と戦闘方法が主かな。』
「それは魔物種族別なのか?」
『違うよ。大きく分けて、人型、獣型、飛空型の3つかな。』
「そうなのか。猫少年達はどんな感じだ?」
『彼らは種族特性で素早くて戦闘能力が高いから、教練は楽だったよ。』
「犬少年はどうだ?」
『彼らは嗅覚が鋭いけど、動きや戦闘能力は普通かな?』
「そっか、あとお前は俺の金属棒魔法を受けただろ?しかも500本だったけど、この魔法って威力はどれぐらいの強さだ?」
『あ、あれは無理。私は自分でも強いと思うよ。普通の魔物や高位魔族でも勝てる自信があるもん。でもあれは防げない。何て言うのかな~、無理矢理体にねじ込まれるって感じかな。』
「でもお前は生きてただろ?どの程度までなら耐えれるだ?」
『あの時はギリギリだったよ。あと数十本で死んだかな。あはは。』
ラミからビット魔法の威力を聞いたが、やはり規格外の魔法のようだ。だが、最近は組織運営が忙しくて、自身の成長に時間を費やしていない。魔王の軍勢が、この街を襲ってきたとき、俺は対抗出来るのだろうか……。
俺は拠点の庭に移動して、魔法の練習をする。
新たな魔法を考えた。魔法術師の意見を参考に考える。通常はどうやって覚えるのか聞いたところ、他国では魔法屋が存在しスクロールが販売されてる。それを本人にインストールすると使えるらしい。
ただ、適正の影響が大きく、使えるとは限らないとの事。
スクロールは基本魔法なので、後は本人の努力が必要だと。
なお、スクロールが無くても基本魔法の習得は出来るらしい。
やはり魔法は明確なイメージで、その事象に深い見識があれば覚えられる。スクロールも気になるが、他国の魔導技術の話だ。この国には無い。
地球の現代技術を応用して考えて、もし物質召喚となってもクロノス神にロックされているので、死ぬことはないだろう。
ふむ、やはり雷(電気)ベースか光の魔法が有力か。
レールガン… かっこいいな…
だが仕組みがサッパリ分からない。
レーザーガン… SFだな… かっこいいな…
海外の強力なレーザーポインターは紙を焼くほどの威力があったな。
拡散する光をレンズで集約していたはずだ。よし、実験だ。
「#強き光よ集約し発光せよ:レーザー」
イメージに基づく詠唱を唱えると…
”ピカー”
前方にスポットライトが当てられた。
「くっ… やっぱり…」
何となくそんな気がした。レーザーの仕組み…分からないし…
折角なのでライトの魔法を練習した。
「#発光せよ:ライト」
”俺がピカー”
うん。省略しすぎた。俺が光っている。
「#光球よ出現し発光せよ:ライトボール」
目の前に光球が浮かんで周囲を照らしている。
これは使えるな。詠唱省略は可能だろうか?
「#ライトボール」
ちゃんと光球が出現した。恐らく一度発動してイメージが固定されたのだろう。
次は虫メガネの要領で焦点を対象に定め、光魔法を発動すればレーザーになるのでは。と考えた。大丈夫だ。日光と虫メガネで黒い紙を焼いたことがある。イメージが十分にある。あの前方の木を狙おう。
「#光よ一点集約し発光せよ:レーザー」
”ジジジ…”
前方の木が少し焦げている。うん。使えない。
無理だな。今日は。最後に雷を試して終わりにするか。
「#雷雲よ直撃雷を対象に:サンダー」
ドガアァァァァン!!! バキバキッ!
「ヤバイ!燃えてる! #ウォーターボール!」
大きい水球が、燃え折れた木に向かって飛び、なんとか消火した。かなりビックリした。自然現象を理解しているためなのか、これほど威力で雷が発動するとは思っていなかった。
今日の練習はこの位にして終わろう。そろそろ夕食の時間だ。
アルカの所に寄って、一緒に食事を取ろう。
拠点の庭から工房に移動する。夕方になってるのでアルカしか居なかった。
他の鍛冶師は帰宅したり、食堂に移動したようだ。
「あ、テセウス。武器が完成したの。ちょっと見て欲しいんだけど。」
「お、完成したんだ!どれどれ。」
ギュッ… クンクン…
「ふむ、この汗の匂いと甘い体臭がたまらないな。」
「ちょ、ちょっと、ちゃんと武器を見て…」
もみ… もみ…
「この握り具合も最高だ。」
「だ、駄目…今はちゃんと武器を見て。」
「あ、ああ、ちょっと美少女が居たもので、つい」
「もう。いつでも触れるでしょ。」
「すまんすまん。この西洋剣がアルカ傑作品か… 神々しいオーラが出ているな。」
「これは純オリハルコンで作ったの。予算は聞かないでね。エヘッ」
「は、はい…」
純オリハルコン。つまり一体形成品だそうだ。刀身から鍔、柄まで一体で作られている。接合や組み込みによる強度低下も無いそうだ。
俺はその剣を振ってみる。馴染む。手足のように扱える。そして軽くなく、重くない。まるで生まれたときから持っている。そんな感覚を覚える。
「強度的に欠ける事は無いと思うけど、定期的に整備と調整に出してね。」
「ああ、ありがとう。一生大切にするよ。」
「な、なんか嬉しいな。一生大切にするって言われると恥ずかしい。アタシを捨てないでね。もっと努力するから。」
「え?あ、ああ。うん。」
会話に多少の食い違いを生じながら、剣を受け取り一緒に夕食に向かう。
食堂ではリリアナが配膳を忙しそうに行っていた。
「よお、リリアナ、頑張ってるか?」
「わたくしは、忙しいんですの。ご用なら、後にしてくださります?」
「ん、ああ、わかった。」
「ふんっ」
リリアナは、機嫌が悪いが真面目に働いていた。
根は悪い奴じゃ無いかもしれない。
食事を取りながら、最近の情報をシロとアルカと話し合う。
魔王が出現して周辺国を侵略している。ならば勇者も出現するのだろうか?
シロとアルカに聞いてみる。
「なあ、魔王が出現したんだ。勇者も出現するのか?」
『主殿、勇者ですか?それは何者ですか?』
「勇者?何それ?どんな種族?」
話が通じなかった。勇者を知らないらしい。
「英雄って言えば分かるか?」
『英雄は事後評価ではないのですか?』
「あ、そうやな…」
英雄と勇者、微妙に違うのだが聞くのを諦めた。
変わりに魔王の事を聞く。
「なあ、今まで魔王って存在したのか?」
「アタシは聞いたことがあるよ。魔族領って呼ばれる地域があって、そこの王様らしいよ。」
「じゃあ、その魔族領から魔物が大量になだれ込んで来るのか?」
「魔物じゃなく魔族だよ。人族と同じで軍隊を持ち、宣戦布告してくるよ。」
「あ、そっか…魔族か…」
「やっぱり魔族軍は強いのか?」
「それは分からないけど弱くは無いと思うな。」
魔王と言っても種族の違いで、結局は国の王と軍隊なんだと理解した。今は、もうの街から動けない。シロと二人の時は自由に移動は出来た。守る物が無いから。だが組織を作り、拠点を構え、皆の生活の面倒をみている。
戦争になって欲しくないな。と思いながら夕食を終え、部屋に戻った。




