43話 人員増強
ベタな夢落ちでショックを受けた俺はシロに八つ当たりしながら朝食を終え、森の調査探索を再開する。野営地はそのまま残している。
森の深部に向けて進む。周囲の荒れ方が酷くなっている。
俺は皆に警戒を促し【周囲探査】を念じる。
「何かいるな…」
1つの生体反応を感じた。何かは分からない。しかし原因の魔物であると確信する。
「約500m前方に生体反応が1つ!警戒を怠るな!」
慎重に前進する。リナとレナを後方に下げる。俺とシロが前に出る。ジャギ隊は中衛に配置する。
「皆、止まれ!」
第六感とも言うべき感覚が警鐘を鳴らした。
「来る…」
とその瞬間
グルゥァァァァァ!!
トカゲ?いやドラゴン?
いや何か分からない。5mぐらいの体躯で強力な爪と顎を持つ魔物が出現した。
モ「あ、あれは、ジャバウォック!!」
『主殿!! ここは撤退を!!』
俺は即座に第六感の警鐘を信じて出現数500本の穿孔魔法を放つ。
「#多くの火よ硬質の熱となり回り飛べ:メタルバラージィィ!!!」
目前頭上に超高速回転した金属棒が500本出現する。魔力がごっそりと減るのを感じる。コイツは危険だ。様子見は無しだ。
金属棒の回転ノイズが""ギュヒィーーーン""と大量に鳴り響き、空中に浮かんでジャバウォック目掛けて飛翔した。
ヒュン…
ズガガアァァァン!!
土煙が舞っている。大半のビットが命中しただろうか?
皆に後退するように指示を出し、俺も下がり警戒をする。
土煙が収まり視界が回復する。ジャバウォックに動きは見られない。
俺は油断せずに次の手を打つ
「#多くの火よ硬質の熱となり……
『ま、待ってくれ…』
声が聞こえた。人族とは違う、シロと同じ聞こえ方がする。
「誰だ?」
『ワタシは今…攻撃された者だ…』
「何だ?」
『攻撃を止めてくれないか…?』
「なぜだ?」
『なぜワタシを攻撃する?』
「お前が森を荒らす討伐対象だからだ」
『もう、荒らさない…誓おう。見逃してくれ。』
「駄目だ。死ね。」
「#多くの火よ硬質の熱……
『ちょ、ちょ、、待…』
「ちょちょま??」
『待ってよ。ラミを助けてよ。』
「ラミって誰だ?あとなぜ急に喋り方が変わる?それが素なのか?」
『ホントにゴメンって。ワタシ、ラミを助けてよ。』
「ワタシラミ??」
『ワタシは"ジャバウォック"の"ラミ"』
土煙が収まり視界が確保される。
血みどろになったトカゲ?ドラゴン?の様な不思議な魔物が横たわっていた。
「で、お前が"ラミ"として、助ける義理はない。」
『もう意識はハッキリと戻ったのよ。暴れたりしないから攻撃しないで…』
「どう言う事なんだ?」
ラミと名乗るジャバウォックから話を聞いた。自分に関して名前以外は不明で、気付いた時にはこの森に存在していたという。召喚されたのか転移させられたのかも不明らしい。そして、先ほどまでは何かに操られるように意識が支配されていたのだが、瀕死の重傷になり痛みで意識が戻ったとのこと。
「なあ、誰かジャバウォックを詳しく知ってるか?」
モ「オレはギルドで資料を見たことがありやす。何でも正体不明の魔物で森に突然出現するみたいっす。破壊の限りを尽くし、近隣に甚大な被害を及ぼすとか。」
「なるほど。害獣か。よし。殺そう。」
『ちょ、ちょっと待ってよ。お願い。もう暴れないから信じて!』
「お前は害獣だろ?駆除されろ」
『お願い!ちゃんと言う事聞くから。何でもするから!』
「こんなトカゲの化け物に"何でもする"って言われても嬉しくもない」
『待って、ワタシ人化できるの!』
「ピクッ…」
『ワタシはメスよ。人化すると人間のメスになれるわ!』
「ピク…ピクッ…」
『助けてくれたら好きにしていいわ!』
「コホン… 詳しく聞かせてもらおうか」
モ「ボス、人化させて従属契約を結べばコイツは逆らえなくなりますぜ。」
「従属契約って従魔のことだろ?あれって、そこまで強制力は無いぞ?」
モ「いえ。それは人族には例外なんです。スクロールを使って従属契約を結ぶと契約内容を自由に設定出来るんっすよ。俗に奴隷契約とも言いますが。」
「そのスクロールは持ってるのか?」
モ「へい。なのでこの話をしました。ただ金貨3枚しましたので…へへっ、その…」
「わかった。金貨4枚を払う。それを貰えるか?」
モ「へへっ ありがとうございやす。」
「おい。ラミとか言ったな。まず人化してみろ。」
『先にワタシの傷を回復してくれない?体力が持たないのよ』
俺は魔道具鞄から回復薬(大)を取り出しラミに飲ませる。
「このクソデカイ体に効くのか?」
『あぁ…痛みが引いていく…』
1本しか所有してない回復薬(大)をラミに与えた。効果があり彼女は人化を魔術を使用した。彼女は160cmぐらいで黒髪黒目、可も不可もないスタイルの18歳位の日本人と思える容姿だった。
『どお?ワタシの人化魔術は?』
「おい。全部見えてるぞ」
『何が?』
「乳とか下の毛とか色々…」
『それがどうかしたの?』
彼女は腰に手を当て仁王立ちしている。色々と見えて皆が困っている。俺は魔道具鞄から服を上下取り出し彼女に渡す。
「とりあえず、これを着ろ」
『なぜ?』
「色々と見えて俺らが困る」
人化をしても所詮は魔物。裸という概念が存在しなかった。
モヒカンからスクロールの使い方を聞く。俺は条件を設定し、それぞれ血を垂らす。スクロールが光って消失した。俺の右腕の紋様に変化が現れた。ダブルの紋様になった。
『ねえ、どんな契約内容にしたの?』
「それは教えられない。ただし強制力を含む内容にはなっている」
『ふーん』
彼女はあまり興味が無いようだった。
『これからちゃんとワタシの面倒を見てね。人化の体なら好きにしていいよ。』
「ゴクリ…あ、あぁ…夜に頂きます…」
『主殿… ちょっとそれは…』
リナとレナが俺を睨んでくる。シロは呆れていた…。
俺達はラミと野営地まで戻り事情聴取を行った。
最初に確認をしたのは意識が支配されてた時、記憶はあるかと聞いた。
記憶はあるとのこと。
次に確認をしたのはエルフの集落を襲ったか聞いてみた。
すると彼女はこの周囲からはあまり動いてない、襲ってないとのこと。
両翼に元集落の場所を聞いたが、この場所からは離れているらしい。
他に確認したのは、森をどの程度荒らしたのか聞いた。
彼女は、魔物が襲ってきて次々と撃退して食べていたらしい。
動植物は撃退し暴れた時、その周囲は破壊したかもしれないと言う。
あとはシロと同じ魔族語が何故喋れるのか聞いた。
それは分からないらしい。俺は恐らく魔物では無く、魔族なんだろうと考えた。
最後に襲ってきた魔物や見た魔物の種族や姿形を聞いた。
種族は分からない。姿形は色々な魔物が合体していたと言う。
モ「キメラ…」
「キメラ?俺も知ってるぞ。あの人造生物だろ?」
モ「はい。魔法で様々な種類を結合して生命を与えられた魔物っす。」
「そんな技術がこの国にあるのか?」
モ「いえ。この国では聞いたことがないっす。闇の魔法集団が合成に成功したと噂では聞きました。」
「闇の魔法集団?なにそれ?」
モ「この街に来てた他国の冒険者から聞いたのですが、隣の帝国にその危ない連中がいるらしいっす。その連中がキメラを合成したって噂です。」
「その連中は国家の連中か?」
モ「いえ。違うと思いますが詳しくは知らないっす。」
流石にモヒカンはC級冒険者だ。様々な情報を知っている。
俺達は街に帰り、冒険者ギルドにキメラの情報を伝えることにした。
南部の森から帰った俺は、冒険者ギルドに報告をする。森に出ている討伐依頼の情報について。キメラが複数出現して動植物を荒らしていることを。これで高位冒険者が討伐して森の事件は解決するだろうと思っていた。
そして、ジャバウォック(ラミ)の事はギルドへは伝えなかった。
俺達は拠点の屋敷に戻り、次の行動に向けて準備をする。
アルカから「また女が増えたのね」って嫌味を言われた。俺は内心ビビりながら「そうだ」とだけ返答した。アルカはそれ以上は、何も言ってこなかった。
ラミの人化はスイッチと言って、形態の切り替えを行う魔術らしい。切り替えだけなので、技力を継続的には消費しないとのこと。
エルフ達の訓練は順調らしい。役割分担をして、目的が明確になったからだと思う。
俺はモヒカンにフリーの錬金術師がいないか聞いてみた。
腕は分からないが、スラムで露店をしている者が居ると言った。
俺は馬車に乗り両翼とスラム街へ向かった。馬車で街を回る。住人の視線が突き刺さる。俺はスラム街の入り口付近に戻り、馬車を待機させて徒歩で探す事にした。両翼の彼女達も付いてくると言ったのだが、危険なので待機を命じた。
「この辺だと聞いたのだが…」
モヒカンから聞いた、露店の場所付近を探すが何も無かった。
近くを歩く少女に露店の事を聞いてみる。
「ちょっと、いいかな?」
「なに?」
「ここに露店の薬屋があるって聞いたんだけど」
「その露店になんの用?」
「ちょっと話が聞きたくてな」
「なんの話?」
通りすがりの少女が色々と質問を返してくる。
「いや、別に知らないならいいんだ」
「だから、その露店になんの用なの?」
「君は関係者か?」
「そうよ」
「ここに錬金術師が居るって聞いたんだ。俺達はフリーの錬金術師を探してて、話が出来ないかと思ってここに来たんだ」
「そう。なぜ錬金術師が必要なの?」
俺はその少女に錬金術師を紹介してもらおうと色々と説明をした。
「その錬金術師は仲間にはなれないと思う。面倒を見ている人達がいるから。」
「そっか、それは仕方がないな。色々と教えてくれてありがとう」
俺は謝礼として、小金貨1枚を手渡した。
「ちょっと、こんなに貰えないわ」
「いいんだ。その錬金術師は面倒を見ている人が居るんだろ?その人に渡しといてくれ。なあ、錬金術師さん」
「…いつから気付いてたの?」
「いや。バレバレだろ。そんなに事細かく聞かれると本人って言ってるみたいだぞ」
「そうね。迂闊だったわ。でも仲間になれない理由があるのよ。ちょっと付いてきて。」
俺は彼女に付いて歩く。
暫く歩くと廃墟のような墓地が併設された修道院があった。
「ここで、この子達の面倒を見ているの。皆、親に捨てられて行き場の無い子たちよ」
猫人族と思われる痩せた少年が5人ほど寝込んでいた。
「アナタはこの子達の世話まで引き受けて私を仲間に出来る?無理でしょ?このスラムは弱者に甘くないのよ!もう二度とこの街には近… 」
「あ、いいぞ。全然問題ない。」
「そう。現実を見てアナタは… え?」
「いや、だから面倒みたらいいんだろ?全然大丈夫だぞ」
「えええええ!!」
随分オーバーリアクションな錬金術師だった。寝込んでいる猫少年5人の症状を聞いてみた。恐らく栄養失調だろう。屋敷に連れ帰り、食事を与えて安静にすれば回復するだろうと。
「じゃあ、お前は仲間になってもいいんだな?」
「この子達の面倒を見てくれるならアナタの仲間になってもいいわ。」
「そうか。ありがとう。ちょっと、あの子達にも聞いてくる」
俺は寝込んでいる猫少年達に声を掛けた。ここで、このまま彼女と暮らすか俺に付いてくるか。いや、もっと意思確認を確実にした方がいい。
「ここで飢えるか、俺の配下になるか。お前ら自分で選べ」
「ぼ、僕たちは… 生きたいです。ごはんがたべたいです…」
「そうかわかった。もう安心しろ」
スラム街の入り口で待っていた両翼と合流して、錬金術師達を馬車に乗せる。あの場所はいいのか?と聞いたが、放置されていたので勝手に住み着いたとの事。
拠点に帰ってきた俺達は猫少年5人に消化の良い食事を与えた。そして部屋を用意し、元気が出るまで安静にしておくように伝える。
アルカが「ま…また女を連れて帰ってきたのね…」と言ってきたが、俺は「問題無い。心配するな」と意味不明な言葉で返答した。
錬金術師の名前を聞いた。彼女は "ルカ" と言うらしい。猫少年達の名前も聞いたが覚えられなかった。そして、なぜ私を仲間にするのに5人の面倒を見てくれるのか?と聞いてきた。俺は既に20人以上の面倒を見ている。多少増えても誤差の範囲だと答えた。
ルカにどの程度の錬金術なのか聞いてみた。回復薬と解毒剤は作れるがそれ以上はレシピ本が無いから無理とのこと。レシピ本は高価で入手が困難なので、これ以上のスキルアップは諦めていると言った。今のレシピは、親が錬金術師だったので引き継いだそうだ。
そして数日が経ち、アルカが残りの装備を完成させた。
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組織名:ニホン
組織長:テセウス
目 的:営利及び軍事
資 金:金貨1550枚,小金貨24枚,銀貨5枚
構成員:32名+1匹
拠 点:ハグル街の屋敷




