40話 組織2
あれから4日が経過した。ミスリル銀の精錬がようやく完了した。その量960kg。俺達は5人で冒険者ギルドに向かいミスリルインゴットを全て納品して換金した。
なんと小金貨9600枚!報酬を金貨960枚で貰うことにした。現在の所持金は、金貨975枚、小金貨25枚 銀貨5枚。むふふ。俺達は金持ちになった。
俺、シロ、アルカの3人は、大量の納品実績が認められC級にランクアップする。これ以上のランクアップは、上級魔物の討伐、重要人物の護衛、特殊素材の納品などの実績が無ければ無理らしい。つまり普通の冒険者はC級が才能限界と言われているとのこと。
俺はその報酬の一部を馬車と魔道具鞄の購入資金に充てる。ミスリル鉱石を再び採掘するためと遠方への探索用だ。残りは拠点を確保するため、古くてもいいから屋敷を購入する。だが不動産の購入には資金不足だろう。そのため、俺達は先にミスリル鉱石を根こそぎ採掘する方針にした。
「アルカ、精錬を頑張ったな。ありがとう。悪いが、あともう少し頑張ってくれ」
「ううん。気にしないで。テセウスの役に立てて嬉しいよ。」
「今日は馬車と魔道具鞄をなどを見に行こか」
俺達は先に馬車を見に行くことにする。商業ギルドに寄り、馬車を取り扱っている店を確認する。その場所を教えてもらい、その店へ向かう事にする。
ついでに不動産の取り扱いも確認した。土地の所有権は第二種定期借地権だった。街は王国が所有しているためだ。そのため借地権と建物の購入となるそうだ。
第二種は、借地料が不要らしい。期限付きの権利購入形態みたいだ。
第一種は、借地料が必要だが、初期費用が安くなるとの事。
王国から下賜された建物の場合は土地所有権を有するらしい。
ギルドは、価格が金貨100枚~大金貨10,000枚までの様々な施設を取り扱っている。日本円に換算すると1000万円から100億円か…。冒険者でもランクが高ければ、金融ギルドから融資を受けて購入可能だそうだ。
100億円の施設って凄いんだろうな…
俺達は馬車屋に向かって歩いた。途中でかなり古く傷んで廃墟のようだが、庭が広く、大きな屋敷を見つけた。
これだけ古ければ広く大きくても安いだろう。後で商業ギルドへ価格確認するか。
そして俺達は馬車屋に着いた。
店主に予算と要望を伝えて色々な馬車を見せてもらう。予算は金貨100枚~金貨460枚。馬車の値段など想像もつかないので、店主に一任した。すると見た目は質素だが、しっかりとした作りの馬車を勧めてきた。荷物も載せられる。人もそれなりに乗れる。飾り気は無いが安っぽくなく、機能美すら感じる。
「これいいな! 幾らだ?」
「はい。これはとある貴族様が所有されていた馬車です。新しく馬車を導入されたため売却なされた物となります。費用は馬2頭込みで金貨600枚です。」
「むむむ… ちょっと高いな…」
「安い馬車もございますが、ご要望を満たす内容の馬車はこれのみとなります。」
「何とか金貨550枚にならないか?」
「申し訳ありません。そのようなサービスをしておりません。」
この世界は値引きと言う概念が無いのか、交渉の余地が無かった。
「むぅ…そうか…。ならこれを買う」
「ありがとうございます。」
俺は馬車を購入した。所持金は、金貨375枚/小金貨25枚/銀貨5枚となった。
「誰か御者をできるか?」
『私は馬の操縦は出来ません』
「アタシも無理なんだ」
「え?じゃあどうするんだ?」
『……』 「……」
姉「テセウス様、私は乗馬が行えます。」
妹「テセウス様、私も乗馬を行えます。」
「お、そうなのか?じゃあ御者もできるのか?」
姉「練習すれば問題無いかと」
妹「リナに同じく」
「そ、そうか。今度練習だな…。えっと…店主よ。これを運んでもらう事は可能か?」
「はい。配達は可能です」
「じゃあ、職人街にあるアルカ防具店まで運んでくれるか?」
「かしこまりました」
俺はノープランで馬車を買ったが、今は誰も御者をできなかった。
まあ、姉妹が練習すれば大丈夫か…。
次に俺達は商業ギルドに拠点となる不動産の情報を確認しに行く。ギルドに着いた俺達は、不動産係の部署へ行き職員を呼ぶ。その職員に先ほど見かけた物件の事を聞いてみる。
あの屋敷は、子に恵まれず、廃嫡となった小貴族が所有していたそうだ。土地は王国へ返還され、一般売却用として市場に出回っているとの事。荒れてはいるが、十分居住に耐えうる作りをしているらしい。
「あの屋敷の価格を教えてほしい」
「第二種借地権は設定されたばかりなので、50年の占有権利となります。戦時徴収が発令されない限り権利の更新は可能です。借地権利購入が金貨1000枚です。屋敷が金貨500枚です。」
(全然足りない…)
「そうか。分かった。資金を段取りしてまた来る。俺はC級冒険者で、パーティー"ニホン"のリーダー、テセウスだ。」
「テセウス様ですね。承知いたしました。またのお越しをお待ちしております。」
俺は動揺を見せないように名乗った。先ほどから行動プランが予算関係でグダグダだった。
次は魔道具復袋を買うために先日の道具屋へ向かう。
「邪魔する」
「これはテセウス様、ようこそいらっしゃいませ」
この店で相当額の購入をしているためか店主は名前を覚えていた。
「魔道具袋ってあるか?」
「はい。先日と同じ物が2つございます。」
「じゃあ、それを2つ買う」
「え!? あ、ありがとうございます。」
値引き交渉は諦めた。そのうち良い商品が入荷したら優先的に販売してくれるだろう。
「あと、以下のものを用意してくれ」
・魔道具のテント(2人用)×2
・焚火セット×1
・調理器具セット×1
・調味料セット×1
・解体道具セット×1
・魔道具のランプ×2
「はい。こちらも在庫がございます。合わせて金貨121枚となります。」
俺は金貨121枚を支払った。
所持金は、金貨254枚/小金貨25枚/銀貨5枚になった。
以前に購入した同じ内容の野営道具は、別班にミスリル鉱石を採取させるために用意した。残りの問題は姉妹の御者訓練と配下になった者達の役割をどうするか。俺達は世界樹の宿に戻り、今後のプランを話しあった。
「全員、俺の部屋に集まってくれ」
二人部屋だが、5人程度なら問題なく入れる広さだ。
そして今後の行動方針を説明した。
「俺達の配下が増えてきた。これは意図的に増やしているんだ。」
『主殿、それは何故ですか?』
「俺は前の世界で"会社"つまり、営利団体を作り、その長をしていた。この世界でも組織を作って力を持ち、快適に暮らしたいんだ。あの島に行く方法も調べるのにも力が必要だしな…」
『主殿…私もポチ殿を迎えに行きたいです。』
「シロ、その名と話しは禁止しただろ」
『あっ…申し訳ございません』
姉「テセウス様、発言よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
姉「前の世界とは、何の事でしょうか?」
「ああ、お前らには説明して無かったな。うん。丁度いいか。今から説明するが、一族の連中にも口外禁止でこの事を説明するんだ」
俺は少し内容をごまかしつつ、転移の事を姉妹に説明した。姉妹は表情を一切変えず、真剣に話を聞いていた。
「と言う訳だ。なので中期の目的は島へ行く方法を探すこと。長期の目的は快適に暮らすこと。短期の目的は金を稼ぐことだ」
「まず組織の構成員を確認する」
俺
アルカ、シロ
リナ(姉)、レナ(妹)
エルフの一族
・成人男性8名
・成人女性1名
・少年男子9名
先日のC級冒険者
・人間族2名
・犬人族2名
「現在、27名が居る。C級冒険者の4名は、昨日出会ったんだ。」
『昨日出会ったのですか?』
「そうだ。俺が40kgのインゴットを換金に行っただろ?その時に配下にしたんだ。」
『仲間では無く配下ですか?』
「そうだ、配下だ。まあ、ちょっと色々あってな。」
俺はシロとアルカに昨日の出来事を説明した。
「そんな事があったんだ。アタシも一緒に行けば良かったよ。」
「いや。逆に俺一人で良かったんだ。そのお陰で絡まれて配下に出来たしな」
「そっか。アタシが行ってればそいつら即殺しにしてたかも」
(コイツの思考はヤンデレっぽいな…)
「おい、アルカ、俺が命令するまで、誰に対しても絶対に手出しするなよ」
「うん。わかった。テセウスの言う事は何でも聞くよ。」
やはりアルカはヤンデレだった。素直で可愛いのだが思考が極端だ。少しずつ、改善をさせないと大変な事になりそうだ。
「それで、次の目的は拠点の確保だ。あの屋敷を手に入れて全員そこに住む。アルカの店はそのまま維持する。資金に余力が出れば設備を増強する。明日はアルカの店に全員が集合する。それまでに役割を決めるぞ」
「姉妹は、馬車が納車されたら御者の練習をしろ」
姉妹「「はい」」
「シロは冒険者2人とエルフ1名を連れてミスリル鉱石の採掘に行ってくれ」
『はい』
「アルカはエルフの服と装備を一式作ってくれ。組織としての統一性がある装備と服だ」
「素材が無いよ?」
「手持ち資金は金貨254枚/小金貨25枚/銀貨5枚ある。金貨100枚で素材を買って作ってくれ」
「うん。分かった。」
「俺はC級冒険者とエルフの一族の適正などを調べる」
「明日の行動は以上だ。今日はこれで解散する」
それぞれ宿泊室へ帰って行った。姉妹の二人部屋も借りている。最近、忙しくてアルカとゆっくり過ごしていない。ミスリルの精錬中は、アルカも店に寝泊まりをして作業をしていた。
「アルカ、当分忙しくなる。大変だろうけど頑張ってくれ」
「ううん。アタシ嬉しいの。テセウスの役に立っているって実感がある。だからもっとアタシを使って欲しいの。」
「そっか。嬉しいことを言ってくれるな。ちょっとコッチに来い」
「うん。」
俺はアルカを抱き寄せ、キスをした。ふわっとアルカの甘い香りと汗の混じった匂いがした。彼女の首や胸などに顔を押し付けて香りを嗅ぐ。
「ちょ… ちょっとテセウス… 恥ずかしい…」
モミモミ カサカサ スルッ…
「あっ… そこは…」
むにゅ むにゅ むにぃ…
「だ…め…」
性的興奮がピークに達して、彼女をベッドへと運ぼうと
アルカを持ち上げ… 持ち上げ… 持ち…
「あっ…ん…どうしたの?」
「いや。お前の匂いを堪能してたんだ」
「先に水浴びをさせて欲しい…汗をかいてるから…」
「お前の汗はいい匂いがする。水浴びは後だ」
「うん…テセウスが言うなら…」
俺はアルカを再び持ち上げ… 持ち…
持ち上がらなかった…
「どうしたの…?さっきから?」
「お前、体重は何キロある?」
「え!? 恥ずかしいよ…女の子が体重を言うなんて…」
「いいから。何キロだ?」
「アタシ小さいけど重いの…その…ドワーフだから…筋肉が重くて…その…」
「で、何キロだ?」
「あの…その…299kgなの…」
「うん!? おれの聞き間違いか? も、もう一度、言ってくれ」
「に、299kgなの…」
「えええ!! 重いぃぃ!!」
「うわぁぁぁぁぁん!! テセウスに重いって言われたぁぁぁ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「いや、アルカ、違うんだ! その、アレだ、ごめんな」
「ぐすん… いやぁぁっぁぁ ごめんって言われたぁぁぁ!!」
「テセウスに嫌われたぁぁぁうわぁぁぁん」
彼女は一晩泣き続けた。そして俺は一晩中、彼女に謝罪と愛の言葉を伝え続けた……。




