39話 組織
草木の宿に戻った俺はエルフのリーダーを食堂に呼び出した。
「テセウス様、ご無事でなによりです。この度は本当にありがとうございます。我ら一同、代表して御礼申し上げます。」
「ああ。気にするな。それより名前を教えてくれ。」
「はい。私はエボルと申します。森のエルフ族の長をしておりました。」
「そうか。エボル。お前は何歳だ?」
「はい。私は110歳です。」
「あ…ああ。110歳か」
「あの成人女性は何歳だ?」
「あれは私の妻でパナと申します。私と同じ110歳です。ご所望であればテセウス様へ差し出します。」
「い…いや、そんなことは思ってない。そうだ娘の名前と歳は?」
「はい。姉がリナ。52歳です。妹がレナ。50歳です。」
「……あ。うん。そ、そうか。お前らの寿命ってどれぐらいなんだ?」
「エルフ族は200~300歳が平均的な寿命です。成人と呼ばれるのは50歳からです。」
「するとお前らの娘は成人しているんだな?」
「はい。もちろん。成人した生娘です。テセウス様へ捧げるの要件は満たしております。本人達も勿論、納得しております。」
「そ、そうなのか。まあ、それは置いといて…」
「娘、いや、テセウス様の従者ですがそこに待機させております。彼女達とお子を成し我らを導いて下さいますようお願い申し上げます。」
そして俺が言葉を発する前にエボルは姉妹を呼んだ。
姉のレナは金髪で180cmほどの長身、グラマーなスタイルで綺麗な顔立ち。
妹のリナは銀髪で165cmほどの背丈、スラっとしたスタイルで可愛らしい顔立ち。
「テセウス様、私は姉のレナと申します。この度は私共をお許し、お救い下さり誠にありがとうございます。一生涯を賭し誠心誠意お尽くしいたします。これから宜しくお願いします。」
「テセウス様、私は妹のレナと申します。姉とご挨拶が重複いたしますが、重ねて厚く御礼申し上げます。姉同様、私の一生涯を賭し誠心誠意お尽くしいたします。これから宜しくお願いします。」
「ああ、よろしく。先に伝えておくが俺にはアルカという女がいる。お前らが盗賊行為をしていた時に居た仲間の女だ。お前達の扱いはまだ決めてない。無下にするつもりは無いから安心しろ」
「「はい」」
「たった今から、お前たちは私達の娘ではない。親兄弟なぞ存在しない。テセウス様の従者と言う存在だ。達者で暮らせ。」
「「はい…。エボル様…」」
「な…なに、ちょっと重いんだが…別にいいじゃないか親子のままで。いつでも会えるんだし」
「いえ。けじめは必要です。テセウス様はお気になさらずに。親子の縁は既に切っております。」
俺は終始、エボルと姉妹にペースを握られていた。これは仕切り直しが必要と思い一度話し合いを中断した。
「今日は顔を見に来たけだ。明日また来る。それまで全員この宿で待機しろ」
「承知いたしました。テセウス様。」
「じゃあ、明日」
俺は草木の宿を出た、ら、姉妹が付いて来た。
「なんだ?宿で待てって言っただろ?」
姉「私達はテセウス様の従者。生きるも死ぬも同じ場所で同じ時を過ごします。テセウス様の行く所、私達もご同行いたします。」
「はぁ……好きにしろ…」
俺はアルカの店に戻ってきた。店の中からは作業音が聞こえる。
「おーい、戻ったぞ」
「テセウス、おかえりなさい」
『主殿、お帰りなさいませ』
俺の後ろで姉妹が立っている。アルカの視線が突き刺さる。
「こ、この二人は俺の従者らしい。今日から一緒に行動をするみたい…です」
姉「アルカ様、シロ様。私はリナと申します。これからお世話になります。テセウス様の従者として至らぬ所がございますが、精進して参りたく存じます。ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。」
妹「アルカ様、シロ様。私はレナと申します。これからお世話になります。テセウス様の従者として一生涯を賭して全ういたします。未熟者にてお手数をおかけしますが、皆様のご指導を賜りたく、お願い申し上げます。」
「え、あ…うん。アタシはアルカ。テセウスに全てを捧げた女よ。彼を裏切ったら殺すわ。よろしくね。」
(コイツさらっと怖いこと言いやがるな)
『私はテセウス様の従魔シロと申します。主殿には多大な恩義があり、未だ返せぬ身ではありますが、貴殿同様、生涯を賭して御恩に報いる事を…』
「シロ…長くなるからもういい。アルカ、ミスリルっていくらか出来たか?」
「40kgぐらいなら精錬が終わってそこに置いてるよ。熱いから気を付けて」
俺はミスリルのインゴットを手に取り…
「あっちぃぃぃぃ!!」
「テセウス! 大丈夫!」
『主殿!!』
妹「テセウス様!」
姉「私は水を!#水よ出でよ:ウォーター」
俺は手をやけどした。それに驚き全員が飛び寄ってきた。レナが水球を出したら、全員がびちゃびちゃに濡れた。
「いや…みんなゴメン。ちょっと軽率だった」
姉と妹が突然土下座をしてきた。
姉「申し訳御座いません。この度の不始末。如何様にも罰をお受けいたします。」
妹「リナに同じく」
「おい。立て。そこまでしなくていい。気にするな。俺の不注意が原因だ」
姉妹「「はい」」
「おい、アルカ、手袋貸してくれ」
「はい。どうぞ」
俺はアルカから手袋を借り魔道具袋に40kgのミスリルインゴットを収納した。
「ちょっと換金してくる」
俺はそう言って冒険者ギルドへ向かった。やっぱり姉妹は着いてきた…。俺はギルドに入り、納品カウンターに向かう。夕方と言う事もあり冒険者でフロアは混雑していた。納品カウンターにも列が出来ていたので俺は素直に並ぶ。
姉妹には酒場のテーブルで飲み物を注文し、待つように指示をして、銀貨を4枚渡す。見える所に居るからか、姉妹は素直に指示に従った。
待つこと数十分、俺の順番が来た。カウンターにミスリル納品と伝え鞄からインゴットを出す。その量40kg。職員が少し驚いていたが気にしなかった。冒険者証も渡した。
職員がインゴットを調べる。おそらく要求以上の品質だろう。特に問題も無く納品された。支払い方法を聞かれたので金貨と小金貨を半々でと伝えた。ようやくパーティー資金をいくらか手に入れた。この納品実績で俺だけがD級となりシルバーの冒険者証となった。
酒場のカウンターに向かうと、姉妹を数人の男冒険者が囲んでいた。
男1[ おいおい~、無視するなよ。一緒に酒を飲もうぜ]
男2[ 俺達はC級なんだぜ。奢ってやるからちょっと来いよ]
姉「……」
妹「……」
「おい、待たせたな」
男1[ なんだ、貴様は?じゃまするんじゃねえ!]
「俺の連れだ。向こうに行け」
男2[ てめえ、横取りするつもりか!]
「わかったから、どっか行け」
俺は面倒になってきた。このテンプレ的冒険者の絡みが…。
男1[ てめえ、表に出ろ!ぶっ殺してやる]
どちらにしてもギルドから出る必要があるので表に出た。
男2[ おらおら、ビビってんのか?掛かって来いよ]
「お前がぶっ殺すから表に出ろって言ったんだろ?」
男1[ ああん?なにビビってんだ?]
俺は良い機会だと思って、C級の男を鑑定した。
━━━━━━ステータス━━━━━━
種族:人間族(男1)
階位:22
体力:101
魔力:98
技力:61
膂力:87
速力:61
心力:43
弱点──────────
火属性 雷属性 水属性 頭部 心臓
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意外と強い事に俺は驚いた。他の獣人男性も鑑定した。
━━━━━━ステータス━━━━━━
種族:犬人族(男2)
階位:18
体力:127
魔力:30
技力:18
膂力:142
速力:88
心力:29
弱点──────────
火属性 雷属性 水属性 頭部 心臓
━━━━━━━━━━━━━━━━━
この鑑定結果をみて参考になった。
人間族はバランス型、犬人族は体力膂力速度特化型と思われる。そんな事をしている間に周囲に人が集まってきた。このままだと憲兵が来て事情聴取となるだろう。ちょっと面倒だなと思い、姉妹にギルドの決闘立ち会いを依頼するように指示した。
「おい、このままだと共倒れで憲兵に連行される。ギルドの決闘立ち会いを俺は要請する」
男1[ おいおい、ビビってるのか?]
「お前はそれしか言えんのか?」
男1「コイツ、ビビってるぜ!」
男2「そうだ、ビビってるぜ!」
男3「馬鹿だ、ビビってるぜ!」
男4「弱いな、ビビってるぜ!」
もう、限界だった、俺のストレスはピークに達した。そしてを詠唱を始める。
「#多くの火よ硬質の熱となり回り飛べ:………
目前頭上に超高速回転した金属棒が100本出現する。
回転ノイズが"キュィーン"と大量に鳴り響き
金属棒が空中に浮かんでいる。
俺は詠唱を一時中断して彼らを見た。
彼らは硬直して喋らなくなった。
俺は…
………:ファイ…
「 待って下さい!!! 」
姉のリナが俺に抱きつき後続の詠唱を止めた。
「それを撃てば彼らは全員死んでしまいます。どうかお考え直し下さい。」
ふと周囲を見ると集まってた観客も走って逃げていた。喧嘩を売ってきた男の冒険者達は震えて恐慌状態に陥っている。俺は詠唱イメージを霧散させて魔法を中断した。
姉「ありがとうございます。」
「なぜお前が感謝するんだ?」
姉「まずは、彼らに慈悲を与えて頂いたことに感謝いたします。」
姉「そして、具申します。彼らを殺すことは簡単です。しかし国家を敵に回すことになります。それは、今は得策とは思えません。」
妹「ギルド職員を連れて参りました。」
ギ「君が決闘立ち合い依頼をした者かね?」
「ああ、そうだ。相手はこいつらだ」
ギ「なぜ決闘になったのかね?」
「そんなことは知らん。コイツらに聞け」
ギ「君達、決闘立ち合いを望んでいるのかね?」
すると男冒険者4名は土下座をして謝ってきた。
「「「「すみません。勘弁して下さい。」」」」
ギ「君、こう言ってるけど、どうするのかね?」
「ああ、すまない。手間を取らせた。立ち合いは無しだ」
するとギルド職員は建物へ帰って行った。
こいつらの処遇をどうするのか考えた。エルフの問題も何も解決していない。今はコイツらに構っている時間は無い。いや…待てよ…利用出来るか。
「おい、お前ら、この始末どうするつもりだ?リーダーは誰だ?」
男1[ はい…。オレです。]
「おい、お前、どう始末をつけるんだ?」
男1[ すみません…わかりません…]
「じゃあ、お前ら、俺と南部の森に行こうか」
男1[ え? な…何をしに行くんですか…?]
「狩りだ。人型の獲物を狩りに行くんだ」
男1[ 本当に勘弁して下さい。有り金なら全部置いて行きます。 ]
「なぜだ?俺と森に狩りをしに行くだけじゃないか。お前らは冒険者だろ?」
男1[ 何でも言う事を聞きます。許して下さい。 ]
「仕方がないな "お前だけ" は許してやる。残りのお前ら立て。森に行くぞ」
「「「オレらも言う事を聞きます。許して下さい。」」」
「森へ狩りをしに行くだけなんだぞ?それで許してやるんだ。なぜ嫌なんだ?」
「「「許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい」」」
「ふぅ…仕方がない、許してやる代わりに手下になれ。裏切ったら…分かってるな?」
「「「「は、はいぃ。」」」」
俺は手下を手に入れた。姉妹の方を見ると彼女達は下を向き震えていた。
姉妹に金貨5枚を渡して草木の宿の支払いをするように指示した。
そして、姉妹に5日後、アルカの店へエルフ全員来るように伝言を頼んだ。
この冒険者4人組も同じようにアルカの店へ来るように命令した。
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所持金:金貨15枚 小金貨25枚 銀貨×5枚
(アルカの所持金は除く)
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