32話 報酬の使い道2
俺はアルカに店をどうしたいのか聞いてみた。すると俺に任せるとの事だった。そして彼女が小金貨20枚と銀貨6枚を渡してきた。これが全財産らしい。このお金は先日俺が購入代金で支払った分だった。
「アルカ、そのお金はお前が持っとけ。俺達は今はお金に困っていない。何かの時のために持っててくれ。」
俺はそうアルカに伝えると彼女はコクンと頷いた。
「今は稼いだ金を俺が全て管理し、そして俺がまとめて払っている。だからお前の生活に関する費用も俺が全て払うから心配するな」
「アタシの全てがアンタの物だからそれでいい。」
「アルカの店は売却せずにそのまま維持する。素材が入ったらお前が鍛冶など出来るしな。防具以外も何か作れるのか?」
「防具が一番得意なだけで、武器や服、道具なども問題無く作れるよ。魔道具は付与が出来ないから全く無理だけどね。」
「そっか。お前凄いな」
そう言うとアルカは顔を真っ赤にして俯いた。
「じゃあ、今から金融ギルドに行ってカミラの借金を清算しに行くぞ」
俺達はカミラの店から金融ギルドへ向かった。
金融ギルドはお金を取り扱っているため、建物は石造りで塀に覆われ、頑丈に出来ている。
俺とカミラは二人で中に入り、受付の職員へ話し掛けた。
「コイツの借金を清算しにきた」
「ご返済ですね。身分証の提示をお願いします。」
カミラはシルバーの冒険者証を出した。忘れがちなのだがコイツはC級冒険者だ。弱いけど…。
「カミラ様ですね。前納利子を差し引き、現在のご利用額は小金貨250枚となっております。本日の返済額は幾らになさいますか?」
「おい!カミラ!話が違うぞ!お前は小金貨200枚って言ってたじゃねーか!」
俺はビックリしてカミラに問い詰めた。するとカミラは悪びれる事も無く答えた。
「そんな事いったっけ?覚えてないな~」
コイツの性格が悪いことを忘れていた。俺のミスだった。今更言っても仕方が無いので金貨25枚を受付の職員へ渡すことした。
「はい。確かに全額返済を確認致しました。借用証がこちらになります。またのご利用をお待ちしております。」
俺は受付職員からカミラの借用証を受け取った。するとカミラが、その借用証を渡せと騒いだので頭に拳骨をプレゼントした。
「いったぁ~い。何すんのよ!」
「うるさい!黙れ!本当は全額払ってお前に借用証を渡そうと思ってたが止めじゃボケ!嘘ついた罰じゃ。これは保険としてお前の債権を俺が持つ」
「何それ!話が違うじゃない!」
「お前が言うな!」
こいつが信用ならないと改めて思った。そういえば触らせるって言って、まだ一度も触ってないしな。これは詐欺だな。俺はそんなどうでもいい事まで不審に思い、カミラを再び警戒するようになった。
「テセウス、用事は終わったのかい?」
「ああ、アルカ、終わった。次は俺達の宿にお前の部屋も取りに行こうか」
俺達は世界樹の宿に向かいアルカの部屋を取る事ことにする。宿に着き、カウンターの職員へ部屋の空きを確認してもらう。するとアルカが俺に話しかけてきた。
「テセウスと一緒の部屋がいい。アタシはアンタの物だからね。」
「え!? あ、うん。そ、そうなのか?」
俺は急なアルカの発言に背筋が寒くなり、少し動揺してしまった。
「ではテセウス様のお部屋を2人部屋へ変更致します。ご宿泊は5日分の予定で宜しいでしょうか?」
「ん?、あ、ああ、それで構わない。」
そうして俺の部屋は同じフロアの違う2人部屋へ変更となった。この後の予定をシロとカミラに伝えようと振り向いたところ
「あれ?おい、シロ。カミラはどこに行った?」
『カミラ殿は少し用事があると言って宿の入り口で別れましたが。主殿には伝えてあると仰りましたが。』
「え?聞いてないぞ。アイツは、ほんとに適当な奴だな…」
夕食までには戻ってくると思い、今日の予定はこれで解散にすることにした。俺達は部屋に戻り夕食まで休む事にした。シロとカミラは一人部屋。俺とアルカが二人部屋の状況だ。俺とアルカが部屋に入るとアルカが話しかけてきた。
「こんなおばさんを貰ってくれてありがとう。アンタの好きにしていいんだからね。アタシの全てはアンタ委ねたんだ。つまりアンタの物なんだよ。」
やはり話が相当食い違って通じているみたいだ。俺はそれの食い違いを修正するために今の状況を話した。
「アルカ、お前の面倒を全て見るとは言った。でも、それはお前の全てを俺が貰うのでは無く仲間として面倒を見るって事なんだ」
「シロとは従魔契約をしている。でも彼は仲間だ。彼にも人権が在るし、それを尊重してる。カミラは性格の悪さから街の冒険者に見捨てられ困っていたから俺が仲間に引き受けた。だからお前もそんなに思いつめなくてもいいんだ」
俺は諭すようにアルカへ話したが、彼女は小さな体を振るわせ目に涙を貯めて言ってきた。
「それはアタシを捨てるって事かい…?」
「いや、違うって… 今の話のドコを取ったらそうなるんだ…」
するとアルカが俺の胸に飛び込んで来た。彼女は小さく、柔らかく、甘く良い匂いがした。その女性特有の香りと柔らかさにクラクラしてしまった。
「じゃあ、アタシをずっと面倒見てくれるんだね?」
モミモミ
「ああ、心配すんな」
モミモミ モミモミ
「んっ…、本当に信じていいんだね?」
モミモミ モミモミ
「ああ、俺を信じろ。お前がいる限り、困るような事にはならん」
モミモミ モミモミ
「んっ… アンタを信じて付いてきて… よ、良かったよ。あっ…そこは…」
俺は無意識に何かをしながらアルカと話していた。その後、アルカから鍛冶に関する話を色々と聞いてると夕食の時間となった。俺とアルカが部屋を出て宿のレストランへ向かう。
すると先にシロが1人で座っていた。
「カミラはまだか?」
『部屋を出た時にカミラ殿の部屋を訪ねたのですが、まだ戻ってはおられない様子でした。』
「そっか、あいつはどこに行ってるんだ… まあいいか先に食事にするか」
俺達は食事を取り終え、明日の予定を話して部屋に戻る。
部屋に戻るとアルカが今日は覚悟がまだ出来ないから今度にして欲しいと言ってきた。俺は何のことだ?と分からない振りをして話をごまかす。
この宿には温水とまでは言えないが、部屋に魔道具シャワーが設置されている。俺は先にシャワーで水浴びをして自分のベッドに入る。その後、アルカがシャワーを浴びて俺のベッドに入ってきた。
………
……
…
・
しかし俺は眠気に負けて既に意識を失っていたのであった…
朝は日の出と共に目が覚める。これは異世界に来てからの習慣になっている。
「ふぁぁ… 良く寝た」
むにゅ…
「ふむ。この心地よい感触は…」
「あっ… もう朝だから… あまり…」
むにゅっ むにゅっ
俺は掛け布団を"バッ"と取り払った。そこには全裸で添い寝をしているアルカがいた。彼女の肢体は透けるような白さで美しく、そして甘い香りがする。彼女は真っ赤な顔をして俯き、両腕で隠した。
俺は全身全霊で彼女の体を見つめた。
「て、テセウス… 夜になったら好きなだけ見ていいから。今は明るいから勘弁して欲しい…」
そう言って彼女は掛け布団を体にまとい、俺にキスをしてきた。
「テセウス。先に言っておく事があるんだ。アンタは冒険者で才能があると思ってる。そしてこれから力を持ち出世するだろう。アタシはアンタが他に何人女を作っても構わない。アンタの側に居られればそれでいいからね。この国は一夫多妻制だ。力のある男はそれが普通なんだよ。」
アルカから驚きの発言を聞いてしまった。一夫多妻制が合法なのは現代では中東やアフリカの一部ぐらいしか聞いたことが無い。この世界は近代化が進んでいないため、それが合理的な種族維持の方法なのだろうと思った。
「そっか。お前は愛らしい女だな。何も心配するな。大切にするから」
「うん」
そして俺達は朝食を取るために宿のレストランへ向かった。
またシロが1人で席について待っていた。
「シロ、カミラは?」
『それが…その…』
「何だ?どうしたんだ?」
『夜もカミラ殿が戻った気配が無いので何かトラブルが発生したと思い、今朝方に冒険者ギルドに情報を確認しに行ったのですが…』
「で?確認してどうだったんだ?」
『あの…その…カミラ殿から伝言がございまして…』
「ん?シロ、ハッキリ言ったらどうだ。何があったんだ?」
『あの…カミラ殿からの伝言ですが。「今までありがとう。自由になったので旅にでます。パーティーは解散しておくね。」との事です…。』
俺はカミラに騙されたと理解した。しかし借金を払うと言い出したのは俺なので仕方が無いと諦める事にした。そしてカミラの宿の予約4日分をキャンセルして小金貨8枚が帰ってきた。
だが、俺はカミラの借用書を持っていた…
ふふふ…
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<所持品>
リュック
拾った服×1 ウエストポーチ
魔道具鞄
回復薬(大)×1個
回復薬(中)×4個
回復薬(小)×10個
黒皮の鎧×2個
生成色のズボン×4枚
藍色の上着×4枚
所持金:金貨×71枚 小金貨58枚 銀貨×0枚
(アルカの所持金は除く)
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