31話 報酬の使い道
俺は領主の館を後にして草木の宿へ向かった。外は日が暮れ夕方になっていた。宿に着き、部屋へと向かいシロに声を掛ける。
「おい、戻ったぞ」
『主殿、ご無事で何よりです。』
そしてシロと一緒にカミラの部屋に向かおうとして部屋を出ると。カミラが部屋から出てきた。
「テセウス… 無事でよかった… 心配してたのよ」
「ああ、すまんな。でも領主の館に行って良かった。報酬をたっぷり貰ってきたからな。」
「え!? そうなの?」
『主殿の威厳に恐れて貴族共も頭を垂れたのでしょう!』
「いや… シロ… それは大げさだ… ただ交渉して適正な報酬を貰ってきた」
「じゃあ、貴族に恨みを買った訳じゃないのね」
「ああ、問題無い。カミラ、明日、金融ギルドに行って借金を全部返しに行こうか」
「……いいの?」
「ああ、かまわない。そのかわり、わっかてるな?今晩は寝ずに待っとけよ」
「え? あ、うん…」
『主殿… お金でカミラ殿を…』
「シロ、これは違うんだ!正当な対価をカミラから貰うだけなんだ!」
「シロ、心配してくれてありがとう。体は奪われても心までは自由にならないわ…」
『カミラ殿… 肉体はあくまで心の器でしかありません。たとえ器が汚れても心まで汚れることはございません』
「シロ、そうね。器は汚れても洗えばいいものね…」
「おい!!!俺が極悪非道な事をしてるみたいやんけ!!」
「『……』」
「ケッ… しゃーない。今回だけは許したる。次はあんな事やこんな事をするからな!」
俺は二人の反応に怯んで、負け惜しみを言いながら諦めていない事を宣言する。
「もうええ。食堂に行って食事にするぞ」
俺達は食堂に行き、夕食を取りながら男爵との経緯を二人に話す。
「…てな訳で、報酬を沢山貰った」
「どれ位の報酬だったの?」
他に聞かれては不用心なため、二人を近くに寄せる。
(金貨100枚つまり一千万Gや)
(えぇ!? そんなに!!)
(おい!声がデカイ!)
(だから明日は装備を整えに行って宿も変える)
(わかったわ)
その日は部屋に戻り、素直に休息を取るために就寝したのであった。
翌日、日の出と共に目が覚めて宿の変更と装備を買う為に宿を出立する。宿は中心部に近いか貴族街に近いほど高級になる。俺達は先に宿を選ぶことにした。
中心部、つまりロータリーの方に向かって歩く。すると石造りの大きな宿と思われる4階建ての建物を見つけた。〝世界樹の宿〟と書いてある。俺は宿の中に入りロビーを見渡す。天井にはシャンデリアがあり、ソファーが並んでいる。
現代のホテルとも思える豪華なロビーだった。
シャンデリアは魔道具と思われる光球が輝いていた。
そして俺はカウンターへ向かう。
受付職員と思わしきスーツを来た人間の若い女性に声を掛ける。
「ちょっといいか?料金の事を尋ねたいんだけど」
「いらっしゃいませ。世界樹の宿へようこそ。ご宿泊予算の確認ですね。一般室でお一人様 小金貨2枚となります。勿論、朝夕のお食事はご用意致します。」
「一般室じゃない部屋ってあるのか?」
「はい。特別室がございます。お一人様 金貨5枚となります。」
「あ、ああ、わかった。じゃあ一般室を3名で5日分を頼む」
「はい。承知致しました。合わせて小金貨30枚となります。」
俺は金貨3枚を受付女性に渡した。そして少し質問をする。
「この宿って冒険者はよく使うのか?」
「はい。御贔屓にして下さる方々もおられます。」
そう言って受付女性は鍵を3つ渡してきた。部屋は個室のようだ。俺はシロとカミラに鍵を渡し、部屋で次の鐘の音が鳴るまで休憩をするように言った。部屋は2階で並んでいる。俺達はそれぞれ部屋に入り小休止をする。
久し振りに一人でゆっくりとした気がした。
俺は自分のステータスを確認する事にする。
━━━━━━ステータス━━━━━━
名前:テセウス
称号:無し
階位:25
職業:冒険者
年齢:20
体力:277
魔力:269
技力:98
膂力:195
速力:135
心力:389
魔術──────────
魔法──────────
#ウォーター
才能──────────
【言語理解】【ステータス】
【闇纏い】【※※※※】【※※※※】
【経験値増加+】【周囲探査】
【鑑定能力】【毒物小耐性】
【中毒小耐性】【調理能力】
従属──────────
【オーガβ種:シロ】
━━━━━━━━━━━━━━━━━
ステータスを見て驚いた。随分と数値が上昇している。
【経験値増加+】が随分と影響しているのだろう。
だが、比較対象が無いので、これが高いか低いかは分からない。
今度、冒険者ギルド内で他の人のステータスを覗き見してやろうと考えた。
魔法も一つ覚えているようだ。
ウォーターは、冒険者なら誰でも使える魔法だとカミラが言ってたのを思い出した。
すると外から鐘の音が聞こえてきたので、魔道具鞄を持って部屋を出ることにする。
廊下に出るとすでにシロとカミラが待っていた。
「ん?早いな、お前ら」
「宿や部屋が豪華で落ち着かないのよ…」
『私も今まで集落で暮らしておりましたので、この様な豪華な所は落ち着きません』
二人とも貧乏性のように落ち着かないと言ってきた。しかし俺はその言葉を無視してここに泊まると言い切った。
そして先日訪れた防具屋に向かうことにする。そう、あの、おばさんドワーフ美少女に会うためである。少し歩いて、防具屋に到着した。
「邪魔するで」
「あら、いらっしゃい」
先日の美少女ドワーフがカウンター越しに挨拶をしてきた。
「今日は色々と買いに来た。そういや、アンタの名前を聞いてなかったな。教えてくれないか?」
「あたしはドワーフ族のアルカよ。宜しくね。」
「俺は人間族のテセウス。そしてこの白いのがオーガのシロ。この女は人間のカミラや」
「あっそう…」
アルカは二人に興味が無いようだった。そして二人もアルカと喋ることは無かった。
「お前ら何か欲しい防具はあるか?」
(ちょっとテセウス。この店に商品は殆ど無いじゃない)
カミラが小声で俺に話しかけてきた。
(それに潰れそうな小汚い店だし。他の店に行こうよ)
前に来た時も同じだったのだが、この店には商品が殆ど陳列されてなかった。
「アルカ、店に商品が少ないけどなんでだ?」
「ああ、そのことかい?長年、店をしてきたけど最近は防具を作れなくてね。素材は自分で採取しに行くんだけど、この頃、強い魔物が多く出現するようになって太刀打ち出来ずにいるのさ。素材を買い取ろうにも高騰しているから採算が合わなくてね。独り身だし、店を閉めようと思ってるのさ」
近頃は強い魔物が多く出現するようになっているそうだ。そういえば、キングスライムに青のサイクロプスなどを倒したな。などと俺は考えて、アルカにある事を聞いてみる。
「なあ、俺達はキングスライムや青のサイクロプスを最近倒したんだ。今までは出現数は少なかったのか?」
「そうだね。キングスライムなんかは滅多に現れる事は無かったね。青のサイクロプスも南部の森では聞いたことが無いね。」
「そっか。お前は店を閉めてどうするんだ?」
「この店を売って街を出てそのお金で細々と生きていくよ。もうおばさんだしね。今更、何も期待しちゃいないさ。」
「お前は鍛冶が出来るのか?」
「そうさ、だから店を開いていたのさ」
アルカは自分で素材を取りに行き、鍛冶も出来る。しかも店を閉めて街を出ると言っている。俺はチャンスだと思い、アルカに交渉してみる。
「なあ、アルカ。お前さえ良ければ俺達と一緒に行動しないか?」
「何を言ってるんだい。こんなおばさんを連れても旅の邪魔になるだけだよ。」
「いや、アルカは美少女だ。そのうえ素材も取れるし鍛冶も出来る。俺達には必要な存在だ。」
俺はシロとカミラに相談もせず勝手に決める。二人は相当驚いているようだ。しかし、アルカは突然の事なので悩んでいる。俺は強引に誘う事にした。
「アルカ、悩んでるなら俺と来い。お前の面倒は俺が全て見る。だから安心して俺の所へ来い」
「い、いいのかい… もう120歳のおばさんだよ。若い子の肌ツヤとかには勝てないし…」
「アルカ気にするな。俺がいいと言ってる。歳の事や肌など問題じゃない!俺に全部任せろ!」
「う、うん。アタシの事はアンタに全て任せるよ。店もお金も心も身体も全てアンタの物だよ…」
「え、うん!? し、心配するな。」
「捨てないでね…」
何か互いのニュアンスが違った気がした。俺は少し背筋が寒くなるのを感じながらアルカを仲間に迎えた。
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<補足>
1G=1円と思って下さい。
小金貨1枚=1万円
金貨1枚=小金貨10枚=銀貨100枚
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<所持品>
リュック
拾った服×1 ウエストポーチ
魔道具鞄
回復薬(大)×1個
回復薬(中)×4個
回復薬(小)×10個
黒皮の鎧×2個
生成色のズボン×4枚
藍色の上着×4枚
所持金:金貨×97枚 小金貨50枚 銀貨×0枚




