28話 貴族と礼儀
俺達は悲鳴のする方へと走った。するとサイクロプス(青)1匹と親子と思われる男女が見えた。その男女の格好は一流の冒険者にも見える装備をしている。俺はカミラとの経験から先に尋ねることにした。
「おい 助勢は必要か?」
すると壮年の男性が「頼む」とだけ答えてきた。シロとカミラに指示を出す。
「シロは俺と前衛だ。カミラは後衛で魔法を使え。デカ物の足を狙うぞ。動きを殺してしまえ!」
俺は二人に指示を出す。先にカミラが動いた。
「#水よ貫け:ウォータージャベリン!」
水の槍がサイクロプスの太腿に当たるが傷が少し付いた程度だった。そして俺が【鑑定能力】と念じる情報が流れ込んでくる。
━━━━━━ステータス━━━━━━
種族:サイクロプス
階位:第3階位
体力:188
魔力:76
技力:34
膂力:207
速力:22
心力:47
弱点──────────
火属性 闇属性 光属性
眼球 膝 心臓 ツノ
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「おいコイツ強いぞ。まともに相手をしてたら勝てん!膝だ。膝を徹底的に狙え!あと火属性も弱点だ!」
俺は鑑定内容の結果を二人に簡単に伝える。するとシロが膝を狙い、魔術の"火焔線"を全力で放った。
ゴォォォォ!!
シロの炎でサイクロプスが怯んだ隙に俺は石斧を膝へ打ち付ける。
バキッッ!!
サイクロプスが片膝をつく。アイツの動きを奪った。俺は二人に再び指示を出す。
「二人とも安全圏まで距離を取れ!」
『はい!』 「うん、わかった」
俺達はサイクロプスから距離を取り、緊張している心を静める。ヤツは怒り狂って棍棒を振り回している。ちょっと近付けそうにない。俺は石斧を目玉へ投げてやろうと考えた。最悪、失敗しても石斧を拾って逃げられるし他の攻撃手段を試せばいい。そして石斧を全力で目玉へ向けて投げた。
ヒュン ヒュン ヒュン…
ベギャッ… ドサッ…
見事にサイクロプスの眼球に石斧が命中した。ヤツはゆっくりと崩れるように倒れた。どうやら絶命したようだ。
「やったわ!テセウス凄いじゃない!」
『主殿!素晴らしい一撃です!』
「そ、そうか、へへっ」
俺は照れながら一撃が決まった事に安堵する。最近、自分のステータスを確認していない。キングスライムの時にレベルが上がった実感があったので、後で確認をしようと思った。親子と思われる男女の方を見ると目をむいて驚いている。そして壮年の男性が話しかけてくる。
「助力に感謝いたします。このお礼は必ずしますので街まで戻られたら屋敷へお越しください。」
壮年の男は感謝の言葉を述べてきた。すると15~16歳だろうか、少女の方が話しかけてきた。
「私たちを助けるのは当然の行為ですわ。領民は貴族を敬い付き従うもの。謝礼なんて不要ですわ。」
「お嬢様、それではサムス家の品格が疑われます。助力へ感謝の意を示し、褒美を与えることも必要かと。」
「セバス、助けを求めたのはアナタですわ。サムス家は助けを求めておりません。褒美を与えるならアナタが施すことね。」
唖然してその会話を聞いていたら、彼女がこちらを向き、優雅に一礼をして自己紹介をした。
「申し遅れまして。わたくし、ハグルの街の領主である、サムス男爵家の長女リリアナ・サムス・デ・ハグルですわ」
俺はリリアナの言葉に釈然としないだが、一応、自己紹介はすることにする。
「俺はテセウス、この白いオーガはシロ。そしてこの女はカミラだ。3人とも冒険者だ」
「さようでございますの、テセウス様達は冒険者ですのね。このサイクロプスのツノはわたくしが頂きますわ。そのために森まで来たのですから」
「は? お前は何を言ってるんだ?助けてもらったうえに素材まで寄こせだと?ふざけるな!」
「まあ、野蛮なお言葉ですのね。冒険者は粗暴な方々が多いとは聞いておりましたが、やはりテセウス様も礼儀をご存じないですのね」
「お前が礼儀とか言うなや!褒美は出さん、素材は寄こせって、無茶苦茶やんけ!」
「テセウス、あまり貴族に逆らわないようがいいよ… 後で何されるか分からないし…」
「カミラ!お前は黙っとけ!おい、リリアナとか言ったな。救助報酬は別にいらん。金目当てで助けた訳じゃないからな。だが、この角はやらん。それとこれとは話が別や!」
「まあ、強欲なお方ですのね。早くその角を外し、わたくしに差し出さないと後悔することになりますわよ」
「はあ!? 解体までさせるつもりなんか?お前はどこまでふざけてるんや!」
「お嬢様、私が解体いたしますのでお待ちください。」
セバスと呼ばれる壮年の男性が、俯せに倒れ絶命しているサイクロプスのツノを長剣で解体しようとした。しかし、長剣の性能が足りないのか、膂力が不足しているのか外れなかった。
「おい、お前! 勝手に触るな!」
「お嬢様、このサイクロプスは第三階位、青階色です。死してなお身体が固く、私ではツノを外せないようです。」
「あら、そうですのね。ではテセウス様、ツノを外して屋敷まで持ってきてくださるかしら?」
「……お前は俺に喧嘩を売ってるんやな?よし、ならば全て買ってやる。」
「ちょっとテセウス!貴族相手に本当にそれはマズいって!」
「うふふ。そのお言葉、承りましてよ。ではツノを持って屋敷にお越しになるのをお待ちしておりますわ。」
俺の話をまともに聞かずに貴族の男女が帰っていった。




