23話 周囲探査と街
休憩を終えた俺達は、村長から聞いてた手っ取り早く金を作る方法として、狩猟を行うことにした。ハグルの街には外壁があり、門があり、兵士の門番がいる。
初めて入場するには、その門番に身分証の提示と賞罰の確認がされる。賞罰の確認は「水晶玉の魔道具」が使われるらしい。なんでも大昔に賢者と呼ばれる人が開発したとか。この世界で賢者と呼ばれるのは一人ではなく、それぞれの時代に数人は居るらしい。
人々は大小に関わらず必ず魔力を持つ。その魔力は個別に波長がある。重複しない周波数のようなものなのだろう。それを魔力波と呼ぶらしいのだが、その周波数を調べる魔道具だそうだ。
犯罪履歴が登録されていると真っ黒に水晶玉が変色するのだとか…
ファンタジーなのかハイテクなのか不思議な機能を持っている。
建築関係の仕事をしたいたので、魔力と魔道具を現代の設備に当てはめて考察する。魔力と魔力波は、電力と電波のようなものか。
魔道具はその電力(魔力)を動力源として動作する。電波(魔力波)の周波数を検査して、どこかの本体に問い合わせるみたいなものか。と言うことは、魔力は電源でもあり、電波のように飛び、そして通信も行えるのか。便利だな。魔力波数を知ればクラッキングができそうだなと思う。知識さえあれば…。
などと色々と考えているうちに街道沿いの森に兎が数匹見えた。
「シロ、狩猟をして換金できそうな素材を取ろか。あの兎なら、毛皮とか肉が使えるだろ」
『はい、動物は大して脅威ではありません。楽に倒す事が出来るでしょう』
俺は【周囲探索】を念じて辺りの生物反応を調べた。頭に情報が流れ込んでくる。その情報なのだが見えている兎は個別に認識する事が出来た。これは対象を視認して【周囲探索】を行ったことにより兎の魔力波数を知覚したのか?それで個別認識が可能になったのか?
今度は、シロを見て、もう一度【周囲探索】行う。
情報が更新される。その情報ではシロが側に居ることが認識出来た。
なぜだ?なぜ急に〝才能〟の技能が変化した?
再び考える。
もしかして魔力の構成概要を少し理解したからか?
【周囲探索】は「水晶玉の魔道具」と機能が似ているのか?
恐らく正解だろう。サンプリング数が少ないが概ね合っていると思う。
より深く考える。
この技能を理解できれば大きな武器になる。
魔力波を周波数と考えるなら、波長が有り周波数帯がある。マイクロ波や短波、中波などに似た存在があるはずだ。兎の帯域をバンドとしてカテゴライズすれば【周囲探索】の情報は兎の居場所が全て分別されるはずだ。
何となくだが、魔力の帯域をイメージして兎を見ながら、再び【周囲探索】を行う。情報が更新される。ビンゴだ!他の場所にも兎が居ることが分かる。
欠点は視認しながら行わないと、魔力波を知れないことか。だが特に問題は無い。
「シロ。さあ、あの兎を狩るぞ!」
『はい。承知しました。』
「火焔系は使うな。素材がダメになる。」
『では打撃で気絶させましょう』
シロは、素早く逃げる兎の背後に追いつき蹴りを入れる。兎が吹っ飛び、木にぶつかる。痙攣して動かない。
「いいぞ!シロ! 次は他の兎を狩りに行く」
俺は【周囲探索】から得た情報から他の兎と思われる場所へ向かう。やはり兎だった。走りだして蹴りを入れると、兎は吹っ飛び気絶する。
「よっしゃ。上出来だ。あっちにあと3匹居る。手分けして狩るぞ!」
『はい』
俺とシロは手分けして合計5匹の兎を狩った。
『主殿、兎の気配が分かるのでしょうか?』
「そうだ。神さんから貰った〝才能〟のお陰だ。【周囲探索】で分かるんだ」
俺達は兎を担ぎ、ハグルの街へ向かう。暫く歩くと外壁が見えてきた。
「そこそこ大きな街だな。俺とシロは身分証が無いからな。街に入って身分証を作るか。冒険者ギルドがいいだろう。」
外壁門が見え兵士の門番が見えた。様々な人々が並んでいる。俺達も並ぶことにする。暫く並んで俺達の順番が来た。兵士の門番から声が掛かる。
「身分証の提示をお願いします。」
「身分証は持ってない。外国から来たからな」
「許可を発行するには、確認が必要となります。別室で調査しますので、こちらへどうぞ。」
俺達は詰所に案内された。そこで「水晶玉の魔道具」へ触れるように指示される。俺とシロは水晶玉へ触れたが何も変化は無かった。それから、出身地と街への訪問目的、滞在予定日数を聞かれた。それらに答え、一時入場許可証を発行してもらったが、1人の手数料、銀貨1枚が払えなかった。これは村長から聞いてて予測していたことだ。
物納が可能かを確認をする。そう、さきほど狩った兎だ。よくある事なのか兵士は物納は無理だが代理で換金をしてくるとのこと。血抜きをしていない兎5匹を渡し、申し訳ない気持ちになりがら、少し待つ。
暫くして、兵士が戻ってきた。銀貨5枚になった。5000Gか。上出来だな。銀貨2枚を手渡して、一時入場許可証を受け取る。質は悪いが紙は普通に存在するようだ。
有効期限は7日間。
今日が何月何日か分からないが、身分証を作るので問題は無いだろう。
そして俺達は、ようやく街に入ることが出来た。
街の中は中世の景観で、基本は木とレンガと石で作られている。
少し大きな建物がちらほらと見える。
それらも石とレンガ造りだ。
道行く人々は人間と獣人多い。
魔族も数人確認できた。
この街ではシロも困ることは無いだろう。
「シロ、さっそく冒険者ギルドを探して登録するぞ」
外壁門から続く大通りを進む。看板の文字が見える。読める。
これが言語チートの能力かと感心する。
中心部だろうか、ロータリーのような広場に出た。
そのロータリーに各ギルドがあった。冒険者ギルドも確認出来た。
石と赤いレンガ造りの2階建て、少し大きい建物だ。
小樽のレンガ造り倉庫事務所に似ている。
「ここが冒険者ギルドか。緊張するな。シロ、中に入って登録するぞ。」
木と鉄で作られた扉を開ける。中に入る。
今は昼過ぎだろうか、人は少ない。酒場兼食堂が併設されている。
少し視線を感じる。だが気にせずにカウンターまで進む。
そしてカウンター越しに赤髪の女性に話しかける。
「すまないが新規登録に来た。」
「冒険者への新規登録でしょうか?」
「ああそうだ」
「かしこまりました。こちらの用紙に登録事項をご記入下さい。文字を読めない場合や書けない場合は代筆を行います」
俺は文字は読めるが書けなかった。ギリシャ文字?に似ている。読めるのだから、勉強すればいずれ文字を書けるだろう。
「すまない。読めるが字は書けない。代筆を頼む。」
「かしこまりました。ではご確認いたします。お名前と出身地、年齢をどうぞ。」
「俺はテセウスで20歳。彼はシロで…」
「シロ、お前何歳だ?」
『はい。私は118歳です』
「えっ!? 118歳!? 凄い寿命だな…」
『魔族は長命ですので…』
「そうなのか…、あと出身地は二人ともニホンだ。」
「ニホン?ですか?」
「ああ、そうだ。ニホンだ。」
「どちらの国でしょうか?」
「賢者の転移でこの国に来た。場所は凄く遠いと思う。」
「承知しました。特技の魔法と魔術、そして才能をどうぞ。」
「その項目は告知義務があるのか?」
「いえ。任意です。ですが登録して頂くとクエストの依頼査定要素になります。この内容はギルド側に守秘義務があります。」
「そっか。
俺の才能は【周囲探索】と【鑑定】【調理能力】
魔法と魔術は使えん。シロは魔術の
【火焔纏い】と【火焔線】が使える。魔法と才能は無い。」
「内容は以上です。登録証を作成致します。それぞれ、こちらの水晶玉に触れて下さい。魔力を登録します。」
俺達は水晶玉に触れた。
「では、そのまま暫くお待ち下さい。」
職員が冒険者証の作成のためか、どこかに行った。
俺は【調理能力】の通知は必要なかった気がした。料理作れますアピールしてもクエストに意味がなさそうだからだ。などと考えていると女性の職員が戻ってきた。
「こちらが冒険者証になります。」
銅板と思われるカードと小冊子を受け取った。
「冒険者階級や特典、注意事項などは、その小冊子をご確認下さい。登録手数料として一人銀貨1枚となります。」
銀貨を2枚、職員へ手渡した。
「冒険者ギルドへようこそ!貴方様のご活躍を期待しております。」
マニュアル的な対応と加入挨拶を受けて俺達は冒険者となった。




