21話 旅立ちそして転送
ポチ…
【ステータス】を見ることが出来た俺はクロノス神に差し出す才能を選んだ。
━━━━━━ステータス━━━━━━
名前:山田
称号:高卒
階位:18
職業:零細企業社長
年齢:43
体力:90
魔力:1
技力:19
膂力:82
速力:44
心力:103
魔術──────────
魔法──────────
才能──────────
【言語理解】
【闇纏い】【※※※※】【※※※※】
【電気工事】【配管工事】【溶接工事】
【普通車運転】【大型車運転】
【書道初段】【珠算2級】
従属──────────
【ホワイトウルフ:ポチ】
【オーガβ種:シロ】
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この中で不要な〝才能〟は沢山ある。俺は【大型車運転】をクロノス神に差し出すことにした。
「交換する才能を決めた【大型車運転】だ。持ってても仕方がないしな。」
<そうだね。数百年、数千年経てば必要になるかもしれないけどね。>
「いや… さすがに俺死んでるわ…」
<随分と階位を上げたんだね。魔物や魔族を沢山倒したのかい?>
「そうだな。夜中に魔物の寝込みを襲って倒して回ったな。アイツらは夜中、寝ると起きないしな。楽だったわ。魔族も倒した。」
<一つアドバイスをあげるよ。魔物が夜中寝て起きないのは、この島だけだよ。他の場所では近付くと普通に反応するからね。魔族はケイロンと一緒に戦ったのかい?彼は強いでしょ?僕の子供だからね。>
「アイツって神なん!?ケンタウロスじゃなかったのか!?」
<あはは。僕の眷属ではあるけど彼は神じゃないよ。ちょっと$%#&*した関係との子でね。賢者で不死身なんだけど神にはなれなかったんだよ。>
「え?なんて? 聞こえなかったぞ。浮気相手との子供なのか?」
<その話はまた後で。さて君にプレゼントがあるんだ。転生させた意味は無いけど放置するつもりもなからね。まず年齢を若くしてあげよう。あと名前を変えて魔力を適合させてあげよう。君の名前はこの世界には違和感があるからね。>
「おお!それは助かる。名前は… 仕方がないか…」
<名前は僕が与えてあげるよ。この世界は貴族社会だから姓は名乗れないけどね。>
「なるほど、わかった… たのむ」
<ふふふ。そうだね。君の名は…
《テセウス》
君の世界の英雄の名だよ。
ミノタウロスを退治して
アテナイを建国した偉大なる王でもあるんだよ。>
「なぜ地球の話を知ってるんだ?しかも分不相応な名前だし…」
<僕は古の神なんだよ。当然、何でも知っているのさ。>
「そっか。クロノスの神さんは凄いんやな。ちょっと頼みがあるんだけどいいかな?」
<なんだい?>
「俺の持ってる〝才能〟なんだけど…等価交換でこの世界に適合しているのと交換して欲しいんだ。これから生きていくのにちょっとキツい。」
<何が欲しいんだい?あまり無茶な〝才能〟だと君の身体が持たないよ。>
欲しい才能が思いつかない。ならばクロノス神に聞いてみようと考えた。
俺の所持している才能のうち、この6個は、この世界で所持していても意味がないだろう。
【電気工事】【配管工事】【溶接工事】【普通車運転】【書道初段】【珠算2級】
「なあ、差し出したい才能が6個ほどあるんだ。悪いんだがそれで交換可能な才能を見繕って欲しい。」
<そうだね…君の所有しているこの才能は、天性の物じゃなく努力で入手可能なものだね。それに見合う才能はありふれた物しか無いけどいいのかい?>
「この世界のありふれた才能でも持ってないよりマシだろうと思う。欲を言えば、一つはチート級のが欲しい……です…」
<あはは。正直なのはいい事だよ。じゃあ努力と共に開花する才能を1つあげよう。あとの才能は生活才能になるね。>
【経験値増加+】【周囲探査】【鑑定能力】【毒物小耐性】【中毒小耐性】【調理能力】
「おお! この経験値増加は努力系チート!!助かるわ!」
<まず、毒物・中毒耐性なんだけど、この世界は衛生事情が悪いんだ。君の体じゃすぐに倒れてしまうと思うよ。なので、一般人と同じ程度の耐性を選んでみた。経験値増加は(+)が付いているだろ?通常の才能より効果が高く表れるよ。鑑定能力は、ここでは一般的な能力かな。周囲探索は狩人などは所有している能力だね。>
「何から何までありがとう!あと魔力の適合って言ってたな?魔法が使えるようになるのか?」
<まあそうだね。まず、魔法や魔道具は魔力を必ず必要とするんだ。魔法は与えることが出来ないけどね。この世界は魔法が使えなくても生物の全てが魔力を所持しているからね。君の階位に応じた魔力を適合させておくよ。さあ【ステータス】を確認してごらん?>
俺は言われた通りステータスを確認してみた。
━━━━━━ステータス━━━━━━
名前:テセウス
称号:無し
階位:18
職業:不定
年齢:20
体力:90
魔力:90
技力:19
膂力:82
速力:44
心力:103
魔術──────────
魔法──────────
才能──────────
【言語理解】【ステータス】
【闇纏い】【※※※※】【※※※※】
【経験値増加+】【周囲探査】
【鑑定能力】【毒物小耐性】
【中毒小耐性】【調理能力】
従属──────────
【ホワイトウルフ:ポチ】
【オーガβ種:シロ】
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ステータスの内容を確認すると、様々な項目に変化があった。
<そろそろ、君の意識から僕は出いかないと大変なことになりそうだ。>
「え? どういうこと?」
<時間は沢山あるけど、君の脳がちょっと持ちそうにないみたいだね。あとは人族と魔族が暮らす街に転移させてあげるから君の従魔を連れておいで。ただし〝人に属する者〟しか転移は出来ないよ。>
「え?それってどういう事?」
<君の従魔であるホワイトウルフは転移させることは出来ないんだ。オーガの従魔は大丈夫なんだけどね。>
「え……… ポチはダメなのか?」
<申し訳ないけど転移陣に適合しないんだ。無理にさせると肉体が消滅しちゃうからね。お別れの時間を10分ほど与えてあげるよ。さあ行っておいで。この祭壇の後ろに転移陣があるから光り出したら遅れずに乗るんだよ。>
「え… そんな… 急に言われても……」
俺は霧の中にいた感覚から、引き戻され、気付けば祭壇の傍で立っていた。
『人間の子よ。どうした? クロノス様はご降臨なされたのか?』
後ろの方からケイロンの声が聞こえた。
俺は彼らの方へ歩き、クロノス神との事を話し出す。
「ああ、ケイロン。今までありがとう。色々とクロノスの神さんと話しをした。そして色んな協力と知識そして能力をもらった」
『そうか!それは良かったのじゃ。』
『主殿、色々な能力をクロノス神様に与えて頂いたのですか?』
「ああ〝才能〟と呼ばれる能力を俺のゴミみたいな〝才能〟と等価交換してもらった。」
『主ぃ、羨ましいでしゅ。色んな才能でしゅか?ワイも欲しいでしゅ。ま、ワイは孤高のホワイトウルフなんで最強でしゅけどね。』
『ポチ殿、今はご冗談を言われる時ではありませんぞ。』
『オイ!コラ!シロ! この大先輩に向かって舐めた口きいたら許さんで!』
『ん?主ぃ どうしたんでしゅか?ビンビンが収まらないんでしゅか?』
「…… ポチ… すまん」
『なにがでしゅか??』
『主殿、どうなされたのですか?』
『人間の子よ。クロノス様に協力を得たと言っておったな?もしや、転移のご協力をして下さるのか?』
「ああ…」
『そうか…』
『主殿、転移とはどういう事なのでしょうか?』
「クロノスの神さんに人族と魔族の暮らす街の近くまで転移してもらえる事になった。あの祭壇の後ろに転移陣があってあと少しで転移が始まる。光り出したら転移が始まるから遅れずに乗らなアカン… シロ。すまんな。復讐はもう手伝えそうにない。でも一緒に来てくれないか?」
『主殿… 私は復讐より主殿を選びます。まだ短い間しか共に過ごしておりませんが、命を救って頂いたこの恩義は簡単に捨てるほど軽いものではございません。』
「そっか…… シロ、本当にありがとう。ケイロン。ここでお別れだ。案内、助かったぞ。」
『そうか、行くのじゃな。達者でな。』
「ああ…」
『主ぃ~ ワイも当然付いて行きましゅよ。転移先でも大活躍してやりましゅ。』
「ポチ… お前には酷いことばかり言ったけど、本当は出会って嬉しかったんだ。一人で途方に暮れて、誰とも会話も無く、ゴブリンなどに恐れながら暮らしてた時にお前と会った。お前は適当なことばかり言ってたけど、それもまた楽しかった。」
『主殿、どうされたのですか?』
『えへへ、急に褒められても困りましゅ。ワイの凄さをやっとわかってくれたんでしゅね。』
「ああ…そうやな…お前はすごい。本当に…助かった。ありがとう。」
『主殿、もしや…』
『人間の子よ…』
『え?何でしゅか?この流れ?』
「あのな…ポチ…。すまない。本当にすまない。お前とは一緒に行けない…。お前は転移に適合出来ない…。だから…… ここで…… お別れになる…… 」
『え……? 冗談でしゅよね?』
「いや…」
『ポチ殿…』
『え……?なにそれ?そんなの転移してみないと分からないでしゅ!!!ワイも行くでしゅ!』
その時、祭壇の後ろが発光しだした。クロノス神から聞いた転移開始の合図である。
「ポチ!時間が無い!聞いてくれ!非適合者が無理に転移を行うと肉体が消滅する!たのむ、この島で暮らしててくれ!いつか…いつか必ずこの島に来る方法を見つけ出してお前を迎えに来る!信じてくれ!」
『主ぃ… 離れたくないでしゅ……』
「たのむ! ポチ!俺の言うことを聞いてくれ!」
『わ、ワイは孤高のホワイトウルフでしゅ!
つ、強いんでしゅ!
主ぃ、ワイの事は気にしなくても大丈夫。
あの小川の木の近くでのんびり暮らすでしゅ。
あそこはいいところだから…
まー、従魔のパスが切れたら魔族語が分からなくるけど…
黒髪の人間が来たらワイの魔術〝ガブッ〟でも食らわせるでしゅ。』
「ポチ…… すまん… いつか必ず…」
「くっ… シロ!行くぞ!」
『はい…』
俺達は発光し始めた転移陣に向かい全力で走った。
そして中心に乗りポチ達の方へ向く。
転移陣の発光が点滅へと変わる。
光のシャワーが俺達を包みながら吹き出す。
俺とシロはポチを見つめる。ポチも俺達を見つめる。
互いに無言で見つめ合って数秒後…。
『…ぃ……しゅ……』
目の前が真っ暗になった。




