【アイレント】共同練習 2
[セフィル]:「よーし、半分まで来たな。ここからもう少しペースを上げよう、行けるか?」
[吹雪]:「は、はい。大丈夫です」
[フェルシア]:「後10周よ、吹雪くんファイト」
フェルシア先生の激励を聞きながら俺は11周目を走り出す。
[セフィル]:「お、女子たちはどうやらゴールしたようだな」
横目で見ると、ゴール地点で女子たちは楽しそうにしていた。走りきったんだな、全員。
[セフィル]:「5周だけとはいえ、よく走りきったものだ」
[吹雪]:「そうですね」
[セフィル]:「何だ? 随分反応が薄いじゃないか」
[吹雪]:「いや、だって……走ってるからしゃべり辛いんですよ」
息苦しくて、相槌をするのがやっとだ。
[セフィル]:「吹雪なら走りながらでもしゃべれるだろう」
[吹雪]:「いや、何ですか? その訳分からない理論は」
[セフィル]:「ブリザード理論だ」
[吹雪]:「だから何ですか? それは」
[セフィル]:「おもしろいな、吹雪は」
[吹雪]:「からかわないでくださいよ……」
[セフィル]:「はっはっは」
何というか、最近は学園長にからかわれてばかりの気がするな……。学園で一番偉い存在だからして、あまり強く言うことはできないんだけど。
[セフィル]:「どうだ? 最近あの4人とは仲良くやれているのか?」
[吹雪]:「まあ、それなりには」
たまに杠に怒られてしまう以外は、順調と言っていいかもしれない。
[吹雪]:「ぼちぼちってところです」
[セフィル]:「そうか、ならよかった。全員に嫌われてるとか返されたらどうしようかと思っていたところだ」
[吹雪]:「……怖いこと言わないでくださいよ」
[セフィル]:「心配するな、ちょっと言ってみたかっただけだ」
[吹雪]:「あまりそういうことは言わないでほしいんですけど……」
想像するだけでイヤな気持ちになる。
[セフィル]:「イイ子たちだと思うぞ、みんな」
[吹雪]:「そうですか?」
[セフィル]:「ああ、みんな熱心に練習に取り組んでくれるし、聞き分けもいい。ピアニストになるにふさわしい器だったと言っていいだろう」
[吹雪]:「マユ姉も入ってるんですか? その中には」
[セフィル]:「ああ、もちろんだ」
[吹雪]:「おお……」
[セフィル]:「何だ? その反応は? 意外とでも言いたそうだな」
[吹雪]:「俺、普段のマユ姉知っちゃってますから、練習はまじめに取り組んでいるのは知ってるんですけど、ふさわしい器って言われるとどうしても……」
[セフィル]:「姉弟故に疑問が残るわけか」
[吹雪]:「全力で姉を褒めたたえるのも、何か気持ち悪いでしょう?」
[セフィル]:「いいじゃないか、別に私はシスコン、ブラコンぐらいでは退かないぞ?」
[吹雪]:「いや、そういう問題でもないんですよ」
[セフィル]:「ん? 違うのか?」
[吹雪]:「俺が言いたいのは、姉っていうふるいにかけると、本当のマユ姉の姿を信じがたいってことです」
[セフィル]:「つまり、繭子は頑張っているんだろうなー、程度ということか?」
[吹雪]:「そんなところです」
[セフィル]:「心配するな、私の目から見ても繭子はしっかり取り組んでいるよ」
[吹雪]:「そうですか、ならよかったです」
[セフィル]:「…………で?」
[吹雪]:「で?」
[セフィル]:「何だ?」
[吹雪]:「いや、学園長が聞いてきたんでしょう?」
[セフィル]:「何か言いたそうな顔をしていた気がしたからな」
[吹雪]:「何も考えてませんよ、別に」
[セフィル]:「そうか、じゃあ私がしゃべってもいいか?」
[吹雪]:「いや、別に許可を取らなくても」
[セフィル]:「優しいな、吹雪は」
[吹雪]:「普通の返答だと思いますけど」
[セフィル]:「そうか、じゃあ話させてもらおう。いるのか?」
[吹雪]:「へ?」
[セフィル]:「だから何だ?」
[吹雪]:「いや、だから何でもありませんってば」
[セフィル]:「ふむ、そうか? じゃあ話を戻すが、いるのか?」
[吹雪]:「話が見えないんで、少し詳しく言っていただけますか?」
[セフィル]:「確かに、ちょっと端的すぎたか。じゃあ詳しく話すとしよう」
[フェルシア]:「はーい、吹雪くん後9周ね」
[舞羽]:「吹雪くん、ファイトー」
[繭子]:「ガンガンいっちゃえー、ふーちゃーん」
[カホラ]:「吹雪、ガンバ!」
[聖奈美]:「ほら、もっとペースを上げなさい!」
…………。
[セフィル]:「――というわけだよ」
[吹雪]:「いやいや、話が見えてきませんよ」
[セフィル]:「吹雪は鈍感だな」
[吹雪]:「いや、鈍感じゃなかったとしても分かんないですよ。俺、探偵じゃないんですから」
[セフィル]:「じゃあ教えてやるとしよう。吹雪は、あの4人の中で気になってる子はいないのか?」
[吹雪]:「ぶっ!?」
[セフィル]:「おい、きちゃないぞ? 吹雪」
[吹雪]:「何故赤ちゃん言葉ですか? それに変なこと言い出したのは学園長のほうでしょう」
[セフィル]:「ん? 何がだ?」
[吹雪]:「いや、そんな、気になってるとか……」
[セフィル]:「いたところでおかしいことじゃないじゃないか。あんなにかわいい女の子が周りにいるのに、気にならないわけはないだろう?」
[吹雪]:「そうかもしれませんけど……」
[セフィル]:「じゃあ、吹雪はあの4人は嫌いなのか?」
[吹雪]:「いや、極端にも程がありますよ、それは」
[セフィル]:「じゃあ好きなんだろう?」
[吹雪]:「いや、ですから……」
[セフィル]:「煮え切らない態度だなー」
[吹雪]:「だ、だって……」
[セフィル]:「冗談だよ、そんなに深く考えなくていい。ただ単純に、一緒にいて不快になるような子はいないだろう?」
[吹雪]:「それは、もちろんですよ」
[セフィル]:「なら、少し気になる子だっているはずじゃあないのか?」
[吹雪]:「……戻るんですか? そこに」
[セフィル]:「だって、知りたいんだもん」
[吹雪]:「もんって、学園長……」
時たま飛び出す現代風の口調にはつい動揺してしまうな。
[セフィル]:「ちょっと考えてみるだけいいじゃないか? 頭の中を空にして、一番最初に浮かんだ人物」
[吹雪]:「それは、あの4人限定ですか?」
[セフィル]:「うん、モチロンだ」
[吹雪]:「…………」
[セフィル]:「さあ、シンキングタイムを与えよう」
[吹雪]:「はあ、はあ……」
[セフィル]:「おい吹雪、息が荒れてるぞ?」
[吹雪]:「そりゃそうでしょう? 今、走ってるんですよ? それに、ペース上がってるんですよ」
[セフィル]:「ああ、そういえばそうだな」
[吹雪]:「いや、有り得ないでしょう? それは」
[セフィル]:「まあ、しばらく口を挟まないからしばし考えてみるといい」
[吹雪]:「絶対なんですか? それは」
[セフィル]:「しなかったら停学にでもするか?」
[吹雪]:「重すぎますよ、それは……」
[セフィル]:「じゃあ、するしかないだろう」
何故そこまで強要するのか……。最初に浮かんだ人物、か。
・舞羽
・聖奈美
・繭子
・カホラ先輩




