【アイレント】共同練習
12月11日(土曜日)
[場所:グランド]
[セフィル]:「今日は気分転換に、ピアニストのみんなには吹雪のメニューに付き合ってもらおうと思う」
[舞羽]:「吹雪くんのメニューですか?」
[セフィル]:「そうだ、ずっとピアノピアノでは、みんなも息が続かないだろう? こうやって普段と違う趣向のメニューを入れることで、効率的なガス抜きが可能になると思うんだよ」
[聖奈美]:「なるほど」
[セフィル]:「吹雪もそう思うだろう?」
[吹雪]:「え? はい、そうですね」
[セフィル]:「ほら、ハーモニクサーもそう言っているぞ」
[吹雪]:「学園長、俺はいつもどおりのメニューをこなせばいいんですか?」
[セフィル]:「そうだな、吹雪はいつもどおりに、メニューどおりに進めてくれ」
[吹雪]:「はい、分かりました」
俺のガス抜きはどうやらないらしい。
[セフィル]:「すまんな、ガス抜きはピアニストとの戯れで我慢してくれ」
[吹雪]:「た、戯れ!?」
[カホラ]:「ちょっとお母さん、朝から変なこと言わないで」
[セフィル]:「おっとすまない。口が滑ってしまった」
[繭子]:「それで、ワタシたちは何をすればいいんですかー?」
[セフィル]:「うむ、まずは体力付けの基本、ランニングだ」
[舞羽]:「うわ、出た……」
周りの女子が少し顔をシカメる。
[セフィル]:「どうやら知ってる者もいるようだな」
[舞羽]:「はい、吹雪くん、いつも息を荒げて午後の授業に参加してますから」
[セフィル]:「心配するな、ピアニストのみんなにはそこまで全力で望んでもらおうとは思ってない。あくまで息抜き程度の気持ちで望んでくれればいい」
[聖奈美]:「そうですか」
[セフィル]:「吹雪はいつもどおりだぞ?」
[吹雪]:「はい、分かってます」
[舞羽]:「で、学園長、私たちは何周すればいいんですか?」
[セフィル]:「そうだな、このグランド1周が400mだから……逆に聞きたい。お前たちは何周くらい走れると思う?」
[舞羽]:「え? どうなんだろう」
[聖奈美]:「体育の授業とかだと2キロとかが普通ね」
[カホラ]:「そうね、男子は総じて女子よりも多く走っていたし」
[セフィル]:「気分転換で疲労してはマズいからな。じゃあ、とりあえず5周走ってみてくれ。辛かったら途中でやめてくれて構わない。あ、くどいようだが吹雪はいつもどおりな?」
[吹雪]:「はい、準備は出来てます」
[セフィル]:「うむ、結構。じゃあ女子たちも着替えてきてくれ。一足先にグランドで待ってるぞ」
[舞羽]:「はい、分かりました」
女子たちは更衣室へと向かって歩いていく。
[セフィル]:「……吹雪」
[吹雪]:「何ですか? 学園長」
[セフィル]:「女子たちの覗きには行かなくていいのか?」
[吹雪]:「いや、行きませんよ……」
死にたくはないからな……。
[繭子]:「えっほ、えっほ」
[舞羽]:「はあ、はあ……」
[カホラ]:「大丈夫? 舞羽」
[舞羽]:「はい、大丈夫です。あんまり運動してなかったから、やっぱり体がナマってますね」
[聖奈美]:「無理しなくてもいいんじゃなくて? 必ず走りきれって決まりはないわけだし」
[舞羽]:「あ、大丈夫。みんなと走ってるの、楽しいから」
[カホラ]:「そうね、頑張りましょ」
[セフィル]:「よーし、いいぞ。ここから少しペースアップだ!」
[吹雪]:「は、はい。はあ、はあ……」
ダダダダダダダダダダッ。
[繭子]:「は、速いよふーちゃん」
[舞羽]:「すごいなー、ペースが違うよ」
[聖奈美]:「まあ、男子だから当然ね」
[カホラ]:「それにしたって速いわね。吹雪、すっかりランナーみたいになっちゃったわね。走り方が陸上選手さながらだったわ」
[聖奈美]:「今の様子だけみたら、魔法の拾得の練習をしてるとは誰も思わないわね、あれはもはや駅伝よ」
[カホラ]:「しかもアンカーね、前を走る選手を抜かさんとするような勢い」
[繭子]:「わー、もうあんなに差がついてるよー」
[カホラ]:「このペースだと、もう1回追い抜かれるわね」
[繭子]:「ふーちゃんは何周走らなきゃいけないのー?」
[舞羽]:「どうなんでしょうね、私たちがスタートする前にはもうスタートしてましたし」
[カホラ]:「今私たちは3周目だから後2周だけど……フェルシア先生に聞いてみましょうか」
…………。
[繭子]:「フェルー」
[フェルシア]:「どうしたの? 繭子。ラスト1周、ファイトよ」
[繭子]:「あ、その前に一つ教えてほしいことがあるの」
[フェルシア]:「どうしたの?」
[繭子]:「えっとね――」
[カホラ]:「あ、繭子先生、後ろ!」
[繭子]:「へ?」
[吹雪]:「ぬおおおおおおっ!」
[繭子]:「ひゃああっ!?」
[セフィル]:「よーし、そのペースだ。すまんな繭子、驚かせてしまって」
ダダダダダダダダダダッ。
[繭子]:「何か、さっきよりペースが上がってない? ふーちゃん」
[フェルシア]:「ペース走だもの。上がっていくのは当然じゃない?」
[繭子]:「そ、そっか……」
[フェルシア]:「にしてもいい走りっぷりだわ、吹雪くん」
[カホラ]:「まあ、後ろからお母さんが発破かけてるし、ペースが上がるのは当たり前かもしれないけど」
[フェルシア]:「ふふ、で? 何の話だったっけ?」
[繭子]:「あ、そうだ。ふーちゃんってさ、グランド何周しなきゃいけないの?」
[フェルシア]:「普段は20周とか走ってるわよ」
[繭子]:「20周!? ホントに?」
[フェルシア]:「ええ、初めての時は死にかけてたけど、今は大分慣れてきたみたいでいいペースで走れてるみたいよ」
[舞羽]:「陸上部ってわけじゃないのにね……」
[カホラ]:「さすがは男の子かしらね」
[聖奈美]:「今、大久保は何周目なんですか?」
[聖奈美]:「えっと、今は……9周めかしら? 後11周、後ちょっとで後半戦ね」
[繭子]:「まだ半分もあるんだー」
[フェルシア]:「まだまだペースも上がっていくから、ここからが正念場ね」
[カホラ]:「……後1周走り終わったら、吹雪のこと応援してあげましょう」
[舞羽]:「そうですね」
[繭子]:「よーし、じゃあラスト1周出発しましょう」
[フェルシア]:「ふふ、頑張って」




