【アイレント】共同練習 3
[セフィル]:「浮かんだか?」
[吹雪]:「まあ。でも、言うのは勘弁してください、恥ずかしいですから」
[セフィル]:「仕方ない、そこは汲み取ってあげるとしよう」
[吹雪]:「ありがとうございます」
[セフィル]:「……で? 気になってる人は?」
[吹雪]:「随分古典的なギャグですね……」
[セフィル]:「昔はウケていたんだがな、こういう典型的なものは」
[吹雪]:「あはは……」
[セフィル]:「さて、ここからは真面目に走るとしようか。息も上がってきてるみたいだしな」
学園長の会話に応じてたからなんだが、それは言うべきじゃないだろう。
[セフィル]:「よし、ペースアップだ」
[吹雪]:「は、はい……」
俺は意識してピッチを上げた。
……………………。
…………。
……。
[セフィル]:「よし、じゃあ次の練習に移るとしようか」
[吹雪]:「……はあ、はあ」
[舞羽]:「だ、大丈夫? 吹雪くん」
[吹雪]:「は、はっは……ギリギリだな、うん」
後半のペースアップが予想以上に体に応えたようだ。
[カホラ]:「ペース配分を間違えたの?」
[吹雪]:「いや、ペースは学園長が握ってるんで、俺はそれに従って走りました」
[カホラ]:「んー、お母さん、いつも吹雪をこんなになるまで追い込んでるの?」
[セフィル]:「いや、今日は特別だな」
[カホラ]:「どうして?」
[セフィル]:「男子というのは、女子の前で良い所を見せたくなるものだろう? それを密かに支えてあげようと思ったんだよ」
[カホラ]:「そ、それを言っちゃったら身も蓋もないわよ、お母さん……」
[セフィル]:「ふむ、やってしまったか?」
[カホラ]:「思い切りね」
[セフィル]:「すまないな、吹雪よ」
[吹雪]:「い、いえ……はあ、はあ……いい、メニューでしたよ……はあ、はあ……」
[セフィル]:「できた男だな、君は」
背中をパンパンと叩かれた。
[カホラ]:「お母さん、もう少し休ませてあげましょう? 吹雪、どう見てもまだやれそうにはないわ」
[セフィル]:「確かにそうだな、顔が死んでいる。ペースを上げた自覚はあるが、そんなに上がっていたか?」
[吹雪]:「そうですね……はあ、普段よりは早かったかもしれないです」
[セフィル]:「それはすまなかったな、次からはもう少し気を配るとしよう」
[舞羽]:「私、飲み物買ってくるよ。吹雪くん、何がいい?」
[吹雪]:「いいのか?」
[舞羽]:「うん、私はもうすっかり息も整ったから」
[セフィル]:「じゃあ、スポーツドリンク買ってきてくれ。種類は何でもいいから」
[舞羽]:「うん、分かった」
[繭子]:「あ、舞ちゃん、ワタシも行くよ~」
二人は小走りでグランドを翔けていった。
[聖奈美]:「学園長」
[セフィル]:「ん? どうした? 聖奈美」
[聖奈美]:「この後は、何をする予定なんですか?」
[セフィル]:「この後は、吹雪の魔力増加を図るメニューをみんなに手伝ってもらう予定だ。吹雪はもう知っているな?」
[吹雪]:「はい」
[聖奈美]:「魔力、増加?」
[セフィル]:「今のランニングもその一環ではあるんだ。魔力を維持できるくらいのスタミナを付けるためのな。今度は、実際に魔法を放出して、吹雪の魔力を高めてやるんだ」
疑問を持った杠に、学園長は丁寧に内容を説明していく。
[セフィル]:「いい表現が思いつかないから、こんな例えになってしまうが、聖奈美たちにはこれから吹雪のサンドバックになってもらうわけだ」
[聖奈美]:「さ、サンドバックですか?」
確かに、俺の攻撃を一方的に受けるわけだから間違ってはいない。
[セフィル]:「まあ、ボコボコになるのはバリアだから、間違っても直撃することはない。いくら吹雪の魔力が凄まじくても、5人分のバリアを破ることはできないだろう」
[吹雪]:「……破る頃には多分死にかけてますね」
[聖奈美]:「なるほど」
[セフィル]:「聖奈美もやりたいのか? ひょっとして」
[聖奈美]:「え? 何をですか?」
[セフィル]:「吹雪サイドの練習だが」
[聖奈美]:「え? どうして? やりたそうな顔してました?」
[セフィル]:「いや、そういうわけではないが。やけに詳しく聞くから、一緒に吹雪と練習したいのかと思ってな」
[聖奈美]:「そ、そんなことはないですよ。第一、あたしが練習しても意味がないじゃないですか。それに、大久保となんて……」
そこまで言って杠は言葉を止めた。
[聖奈美]:「とにかく、大丈夫ですから」
[カホラ]:「……残念ね、吹雪」
[吹雪]:「な、何がですか?」
[カホラ]:「あんなに冷たく言われちゃって」
[吹雪]:「別に気にしませんよ、あれがあいつの性格ですから。氷魔法の使い手ですし」
[カホラ]:「ふふ、上手いこと言うわね」
[聖奈美]:「そこっ! 聞こえてますよ!?」
[フェルシア]:「まあまあ聖奈美ちゃん、そんなに照れないで」
[聖奈美]:「何であたしが照れるんですか!?」
[フェルシア]:「自分のことなんだから、分かってるはずでしょう?」
[聖奈美]:「知りませんよ、そんなこと」
不機嫌そうに杠は顔を背けた。……この話は流したほうがよさそうだな。
[吹雪]:「そういえば、学園長」
[セフィル]:「どうした?」
[吹雪]:「練習始めてから一週間くらい経ちますけど、俺の魔力って少しは高まったんですかね?」
[セフィル]:「ふむ、確かにあの日から魔力の状況を確かめてはいなかったな。よし、じゃあ今から見てやろう」
[吹雪]:「ありがとうございます」
[セフィル]:「100円でいいぞ?」
[吹雪]:「か、金がいるんですか?」
[カホラ]:「お母さん?」
[セフィル]:「冗談だよ冗談、よし、じゃあ目を閉じてリラックスするんだ」
[吹雪]:「はい」
[セフィル]:「…………」
[吹雪]:「…………」
しばらくの沈黙。
[セフィル]:「うん、なるほど。いいぞ? 目を開けて」
[吹雪]:「どんなもんでした?」
[セフィル]:「うん、大体82ってところか。以前より7ほど上昇しているな」
[吹雪]:「あ、本当ですか?」
[セフィル]:「日々の鍛錬の成果が徐々に現れてるな」
[吹雪]:「よかったー」
[セフィル]:「何だ? 不安だったのか?」
[吹雪]:「そりゃあ、これだけやって何にも伸びてないって言ったら結構ショック大きいですからね」
[カホラ]:「吹雪の場合、ノーマルな状態の魔力が他の人より秀でてるからあまり伸びてるように見えないって可能性もあるわよね」
[セフィル]:「確かに、スタートの値が高かったからな」
[カホラ]:「これが翔とかだったら、きっととんでもない伸び率を誇っていたかもしれないわよ」
[聖奈美]:「でも、元々あいつに魔力なんてほとんどないですよ」
[カホラ]:「例えばの話よ、本気で話してはないわ」
[吹雪]:「……とにかく、上昇しててよかったです」
[セフィル]:「その調子で練習を続けていかなくてはな。目標はあくまで100だからして」
[吹雪]:「はい、努力します」
[聖奈美]:「…………」
[カホラ]:「どうしたの? 聖奈美」
[聖奈美]:「な、何でもないです」
[繭子]:「お待たせ~、ふーちゃん、買ってきたよ~」
ジュースを抱えて二人が戻ってきた。




