【アレグロ】杠聖奈美登場! 4
[聖奈美]:「その程度の男なの? あなたは」
[吹雪]:「……じゃあどうすりゃいいんだよ」
[聖奈美]:「簡単なことよ。マジックコロシアムに出てちょうだい。それで、決勝の舞台であたしと戦って、見事あたしに勝てたなら、認めてもいいわ」
……本来俺が言っても許されるんだよな、その台詞。
[聖奈美]:「実技でその成績をキープしているようだし、まさか決勝までこれないということはないでしょう? あたしが直々に、あなたの力を試してあげるわ」
[吹雪]:「お前が決勝まで上がってこれるって保障もないだろう」
[聖奈美]:「何ですって!? あなた、去年のマジックコロシアムを見てなかったの?」
[吹雪]:「見てたけど……それがどうしたっていうんだよ」
[聖奈美]:「あたし、去年1年生だけど、優勝したのよ。自分の実力を学園中に知らしめたのよ。それを知らないっていうの?」
[吹雪]:「そうだったのか……」
[聖奈美]:「くうう……何よそのどうでもよさそうな反応は」
確かにすごいとは思ってるけど、どうしても今の崩れてるキャラを見てると、すごいと思えなくなる。
[聖奈美]:「ホントに、あたしを怒らせるのが得意ね」
[吹雪]:「お前がこの教室に来なきゃこんなことにはならなかったと思うぞ」
[聖奈美]:「……あたしは今年、マジックコロシアムで二連覇がかかってるの。言わば優勝候補よ。そのあたしを下してみなさい。無理だとは思うけどね」
随分と自信があるようだな。やっぱり、出なきゃダメなのか? 流れからして。
[聖奈美]:「ここまで来て、出ないなんてことはないわよね。大久保吹雪」
[吹雪]:「ちょっと待て、今考えてる……」
[聖奈美]:「考えないでそこはスパっと決めなさいよ!」
[吹雪]:「ちょっと静かにしてくれ……」
[聖奈美]:「何でそんなに冷静なのよ……」
むしろどうしてそこまで血が上ってるのか……。
[舞羽]:「吹雪くん……」
確かに、ここまで言われて、黙ってるのもおもしろくないか。出る気なんて全くなかったんだが……仕方ない。
[吹雪]:「分かった、出てやるよ」
[聖奈美]:「…………」
[愛海]:「おおー、大久保くんが立ち上がった」
[聖奈美]:「いいのね? やっぱ出なきゃ良かったはなしよ?」
[吹雪]:「お前が出ろって言ったんじゃねぇかよ」
[聖奈美]:「そういうのは言わなくていいのよ」
[吹雪]:「何なんだよ……」
[聖奈美]:「見てなさい、あたしは絶対、あなたに勝ってみせるわ。絶対にね」
[吹雪]:「ああ、分かったよ」
[聖奈美]:「じゃあ、今日はこれで許してあげる!」
言うだけ言って、杠は身を翻して自分のクラスへと帰っていった。
[舞羽]:「ふ、吹雪くん」
[吹雪]:「――てわけだ。出ることになっちまったから、応援よろしくな」
[舞羽]:「う、うん。頑張ってね、吹雪くんなら絶対に勝てるよ。でも……大丈夫なの? 急にこんなことになって」
[吹雪]:「――まあ、大丈夫だろう」
少しだけ、気になるところもあるが、最近は――落ち着いてもいるしな。
[吹雪]:「やるからには頑張るよ」
[愛海]:「これはおもしろくなってきたわねー。今年のマジックコロシアムは必見ね」
[吹雪]:「そんな大事じゃないだろ?」
[愛海]:「いやいや、これはとんでもない名勝負になる予感がするわよ。近年は凡戦ばっかりであんまり見る気はしなかったけどさ、実技1位と2位の者同士の争いなんて、胸躍る大イベントじゃない。……どっちに賭けようかしら」
[吹雪]:「賭博かよ、おい!」
[愛海]:「大丈夫よ~、大久保くんのほうにも賭けるから~」
[吹雪]:「そういう問題じゃないって」
[翔]:「よし、オレも吹雪に一点賭けだ。負けんなよ? 吹雪」
[吹雪]:「賭けんな!」
[翔]:「翔だけに?」
[吹雪]:「……寝てろ」
[翔]:「ふぐおっ!?」
翔はまた机に突っ伏した。
[吹雪]:「ふう……にしても、すごい女だったな、あいつ」
[舞羽]:「うん、そうだね」
[ダルク]:「あまり、聖奈美を憎まないでやってくれませんか?」
[吹雪]:「ん? 誰だ?」
[ダルク]:「あ、ここ、ここです」
[吹雪]:「おお!?」
ふと顔を上げると、目の前にふわふわと浮かんでいる生き物の姿があった。
[吹雪]:「君は?」
[ダルク]:「あ、わたし聖奈美の使い魔やってます、ダルクっていいます。始めまして」
[吹雪]:「ああ、どうも」
[舞羽]:「おはようございます」
とりあえずは自己紹介をしておいた。何だ、あいつ使い魔なんて持ってるのか。随分と可愛らしい……そして理解力がありそうで。
[ダルク]:「すいません、えっと……」
[吹雪]:「ああ、吹雪だよ」
[舞羽]:「舞羽です、よろしくね」
[ダルク]:「吹雪さん、ごめんなさい。驚いたでしょう?」
[吹雪]:「……まあ、ちょっとな」
あんな唐突に勝負を申し込まれるとは思わなかったからな。
[吹雪]:「俺、何か悪いことしたか?」
[ダルク]:「いえ、そんなことは。吹雪さんは何にも悪くありませんよ」
[吹雪]:「そうなのか?」
[ダルク]:「はい、吹雪さんは自分で努力してあの結果を出したんですから、誰も口出しすることはできません。それに、誰も吹雪さんがズルをする人なんて思ってないでしょう?」
[舞羽]:「もちろんだよ」
いち早く舞羽がうなずいてくれた。
[ダルク]:「聖奈美は昔からあんな感じなんです。さっきのあれも、別に吹雪さんにイラついてたんじゃないと思います。多分、負けてしまった自分に対してイラついてたんだとわたしは思ってます」
さすが使い魔、主のことを理解しているようで。
[ダルク]:「聖奈美はすごく負けず嫌いでして。何でもトップになりたいって思ってる女の子なんです」
[吹雪]:「だから、生徒会か?」
[ダルク]:「そうかもしれないですね」
なるほどね。まあ、勝ちたいと思う気持ちは悪いとは思わないが。
[ダルク]:「根は普通の女の子ですから」
[翔]:「確かに、いや、それ以上だ」
[吹雪]:「うわっ!? 急に起きんな」
[翔]:「見てたか? 吹雪よ」
[吹雪]:「何をだよ?」
[翔]:「杠のことだよ。あいつ、かなりスタイル良かったぞ」
[吹雪]:「あの状況で何を見てんだよ! お前は」
[翔]:「女性って言ったらまずは体チェックだろ。基本だぞ」
[吹雪]:「――ふんっ!」
[翔]:「んがあっ!?」
ふう、大人しくなったな。
[吹雪]:「悪い、忘れてくれ」
[ダルク]:「あ、あはは……」
ダルクと舞羽は案の定苦笑いを浮かべていた。
[ダルク]:「男の人って、みんなあんなのなんですか?」
[吹雪]:「……無きにしもあらずだが、あいつは自他ともに認める変態だから。普通はあんなオープンではない」
[ダルク]:「な、なるほど」
[吹雪]:「悪いな、気持ち悪い奴で」
[ダルク]:「あ、大丈夫です」
[吹雪]:「――ダルク、別に敬語じゃなくていいぞ。普通にしゃべれ、何だかむずがゆい」
[ダルク]:「そ、そうですか?」
[吹雪]:「ああ、落ち着かないからよ」
[ダルク]:「――分かった。これでいい?」
[吹雪]:「うん」
[ダルク]:「ところで、吹雪は本当に出るの? マジックコロシアムに」
[吹雪]:「ん?」
[ダルク]:「だって、聖奈美が勝手に決めたことでしょ? 無理に出なくても問題ないと思うから」
[吹雪]:「んー、でもな。一度言った手前、キャンセルってのはちょっと気が引けるんだよな」
それに、あそこまで言われてしまうと、どうも気分がすっきりしない。
[吹雪]:「出る。出て杠を打ち負かして、完全に証明してやるさ」
[ダルク]:「……そっか。本当はマスターを応援しなくちゃいけないんだけど、頑張ってね」
[吹雪]:「おう、サンキュー」
[ダルク]:「決勝の時は聖奈美を応援しなきゃいけないから、許してね」
[吹雪]:「ダルクは、杠が決勝にいけることを確信してるんだな」
[ダルク]:「まあね、そうは見えなかったかもしれないけど、聖奈美は魔法が得意だし、去年は優勝してるし。いける可能性は高いと思う」
[吹雪]:「なるほど」
いい使い魔じゃないか、ダルクは。
[ダルク]:「じゃあ、そろそろ戻らないと。またね」
[吹雪]:「ああ」
[舞羽]:「バイバイ」
ダルクはふわふわと教室を出ていった。
[舞羽]:「杠さん、あんなかわいい使い魔飼ってたんだね」
[吹雪]:「みたいだな」
悔しいがそれだけ杠は力を持ってるということになる。人並みの魔力では使い魔は召喚することはできない。だけどあいつはそれを飼っている。使い魔を召喚するだけの魔力を持っているということだ。ナメてかかると痛い目を見そうだな。
[舞羽]:「私もほしいな、あんな使い魔」
[吹雪]:「魔導書でもあさってみたらどうだ? 明日から飼える使い魔、みたいな」
[舞羽]:「そんな簡単に召喚できたら苦労しないよー」
[翔]:「というか、吹雪よ」
[吹雪]:「もう起きるなよ、お前……」
[翔]:「お前マジックコロシアムに出るのか?」
[吹雪]:「ん? ああ、そういうことになっちまった」
[翔]:「じゃあ、オレに魔法を――」
[吹雪]:「却下だ」
[翔]:「まだ全部言ってないのに! どうして? 何で?」
[吹雪]:「そんな時間の余裕ないの」
[翔]:「そんなはっきりと!?」
[吹雪]:「今回は、易々と負けるわけにはいかないんだ」
[翔]:「残念だぜ、じゃあ、来年はよろしくな? な?」
[吹雪]:「か、考えといてやるよ」
というか、やっぱりお前出るのかよ……。




