【アレグロ】杠聖奈美登場! 3 ◎挿絵あり
ガラガラっと、教室のドアが強めに開け放たれた。
教室にいるクラスメイトは一瞬ピタリと止まる。
[男子生徒A]:「えっ!? あ、アイツは……」
[男子生徒B]:「な、何しに来たんだ?」
何やらクラスメイトがザワザワし出したぞ。開け放たれたドアの場所にいるのは、一人の女性……随分と厳しそうな顔をしている。それに、見覚えがないわけでもない。あれは確か……隣のクラスの……。
[聖奈美]:「…………」
こっちに歩いてくるぞ、……ひょっとして、俺?
[聖奈美]:「……っ!」
そのまさか。俺の目の前に止まり、鋭い視線が向けられた。
[吹雪]:「な、何だ? いきなり来てそんな目で俺を見て……」
[聖奈美]:「あなたが、大久保吹雪?」
[吹雪]:「あ、ああそうだが?」
[聖奈美]:「あなた……一体どんな方法で1位になったの?」
[吹雪]:「な、何がだ?」
[聖奈美]:「実技試験よ。魔法の実技試験」
[吹雪]:「そ、それがどうしたって言うんだよ」
[聖奈美]:「あなた1位になっていたじゃない。あたしを、杠聖奈美を差し置いてね」
杠……ああ、そうだ、思い出したぞ。こいつは、生徒会の会長だ。何でも色んな要素が合わさった結果「氷の魔女」と、名が付けられたって翔が前言ってたな。そいつが、一体俺に何のようだ?
[聖奈美]:「一度ならず二度までも、このあたしが実技で負けるなんて……信じられないわ」
[吹雪]:「さっきから何だって言うんだよ」
[聖奈美]:「このあたしが、二度も負けるなんて、あってはいけないことなのよ。いえ、有り得ないわ。あなた、どんな方法を使ったの?」
[吹雪]:「……いきなり人のところに来て何言うかと思えば、随分とひどい言われようだな……何もやってない。ただ、努力しただけだ」
[聖奈美]:「じゃああなた、実力で1位になったって言うの?」
[吹雪]:「それ以外に何がある。実技だぞ? 誤魔化せるところはないはずだ」
[聖奈美]:「そ、それはそうだけど……だってあたしは見てないもの。証拠にはならないわ」
[吹雪]:「……その立ち回り、クレーマーだぞ?」
[聖奈美]:「……っ!? あなた、あたしをクレーマーって言ったの?」
[吹雪]:「テストだぞ? 横で教師がじっくり見てるのに、それであたしが見てないから証拠にはならないって言われたら……どうしようもないじゃねぇか。それが通ってしまったらお前が今回2位だった時の点数だって証拠にできないじゃないか」
[聖奈美]:「う……」
[吹雪]:「まあ、それでもって言うのなら、俺の実技を見てくれた先生の名前教えてやるけどよ」
[聖奈美]:「……」
[クラスメイトA]:「あの杠と対等にしゃべってるぞ」
[クラスメイトB]:「大久保すげーな……」
[聖奈美]:「い、言っておくけどね」
[吹雪]:「何だよ?」
[聖奈美]:「あたしはテストでずっと良い点数をキープしてきたの。実技以外は、あなたよりもずっといい点数を取ってるの。全体順位だって、あなたよりもずーっと上なんだから」
[吹雪]:「……それはすごいと思うが」
[聖奈美]:「分からないの? あなたは?」
[吹雪]:「何が?」
[聖奈美]:「杠の法則よ」
[吹雪]:「何だそれは!?」
[聖奈美]:「杠聖奈美=頭がいい=テストでいい点を取るのは当たり前=負けるわけがない=負けることは許されないのよ」
[吹雪]:「いや……ちょっと何言われてるか分からねぇよ」
[聖奈美]:「とにかく! 負けたくないのよ!」
[吹雪]:「でも、結果は出ちゃっただろ?」
[聖奈美]:「うう~!」
[吹雪]:「どうして俺が悪者みたいな目で見るんだよ……」
[聖奈美]:「……あたしは納得できないの!」
[吹雪]:「それは、お前が冷静さを欠いているからじゃないのか?」
[聖奈美]:「……あたしを唸らせて見なさいよ」
[吹雪]:「俺の声、聞こえてるか? 実技に関して言えば、負けたのはお前なんだぞ?」
[聖奈美]:「あたしは負けてない。まだ決まってないわ」
[吹雪]:「いや、だから……決まったんだって」
[聖奈美]:「あたしが決まってないって言ったら決まってないの。そう決まってるの」
何ていう……本当にこの子は生徒会か? やってること無茶苦茶だが……よっぽど気持ちが乱れてるようだ。
[聖奈美]:「大体何よ、その吹雪って名前は。氷系の魔法を得意とするあたしへの挑戦状?」
[吹雪]:「名前は関係ないだろ。俺の意思でこの名前にしたんじゃないんだよ」
変わってる名前だとはよく言われるが、今問題はそこじゃない。
[聖奈美]:「あなた、気に入らないわ」
[吹雪]:「…………」
あえて黙って目を見返す俺に、杠は言葉を続ける。
[聖奈美]:「……納得させて欲しいの」
[吹雪]:「じゃあ、どうやって? あと、何で上から目線?」
[聖奈美]:「見せてくれてもいいわよ?」
ツンデレっぽくなっただけだった。
[聖奈美]:「とにかく見せてほしいの! それまであたしは、あなたが実技で1位だって認めないからね」
[吹雪]:「認めたくないなら、どうぞご自由に……」
[聖奈美]:「逃げるの? あたしに怖気づいて、尻尾巻いて逃げるの?」
ちょっと待て、何なんだこの状況は……どうして俺が、気持ち不利な状況に追い込まれているんだ。




