【アレグロ】杠聖奈美登場! 2
[場所:教室]
教室に入った瞬間だった――。
[翔]:「吹雪~!」
[吹雪]:「おわあっ!?」
突然デカ物に胸に飛び込まれた。
[翔]:「な、何だよ突然、気持ち悪いから離れろ!」
[吹雪]:「オレ、頑張ったんだぜ? 今までにないくらい全力でテストに挑んだんだぜ、それなのに……それなのに……くう……」
ああ、なるほど。こいつの反応から察するにまたダメだったんだろう。これで掲示板の後ろからトップの座を6回防衛成功か。
とりあえずだ……。
[吹雪]:「いい加減離れろ、白い目で見られてる」
[翔]:「もう少し、このままでいさせて……」
[吹雪]:「お前は女子か!」
無理やり引っぺがした。
[翔]:「くそ、何でだよ……何がダメだったって言うんだよ」
[吹雪]:「勉強しないで遊んでたからに決まってんだろ」
[翔]:「そんなことはない、前よりも大幅に勉強時間は増やしたはずだ」
[吹雪]:「何分したんだよ、一体」
[翔]:「1時間」
[吹雪]:「少ないんだよ、それじゃあ」
[翔]:「そんなことは、いつもの60倍勉強したんだぞ?」
[吹雪]:「全然足りねぇんだよ」
つうか60倍って、今まで1分しかしてないってことか? 宿題すらできねぇぞそれじゃあ。
[吹雪]:「そんなんじゃあ当たり前だよ、お前がビリなのは必然だ」
[翔]:「でも、全部埋めたんだぞ? 一つ残らず埋めたんだぜ?」
[吹雪]:「埋め方に問題があったとしか言いようがない。関係ないことでも書いてたんじゃないのか?」
[翔]:「……くそ、悔しいぜ」
[吹雪]:「勉強時間をもっと増やせ、それしか方法はねぇよ」
[翔]:「それじゃあナンパができないじゃないか!?」
[吹雪]:「それを削れって! 一番いらない時間だろそれが」
[翔]:「生きがいなんだよ、吹雪はオレに死ねって言ってるの!?」
[吹雪]:「そんなことしなくても人間生きていけるって何度も言ってるんだ。いい加減目を覚ませ」
[翔]:「覚めてるからこうなってるんだよ」
[吹雪]:「ホントに、お前ってやつは……」
[翔]:「うわあああ、吹雪~」
[吹雪]:「だから、抱きつくな! 顔が近い! 大胸筋を触るなー!」
[クラスメイト]:「……大変だよな、大久保も」
いやいやクラスメイトたちよ、静観してないで少しは手伝ってくれよ!
俺と翔の戦いはしばらく続いた。
……………………。
[繭子]:「――というわけで、みんなよく頑張ったね。一先ずはお疲れ様~」
あれから翔は机に突っ伏してぴくりとも動かなくなった。どうやらビリということが結構ショックだったらしいな。
[繭子]:「特にふーちゃん、実技で1位はとってもすごいです。おねーちゃんは感動しました、また次も、1位狙って頑張ってね」
[吹雪]:「ありがとうございます」
[繭子]:「あーちょっと~、素っ気ないよ~? ふーちゃん」
[吹雪]:「今は、その呼び方やめてください、先生」
[繭子]:「ぐすん……繭子悲しい……」
どうせウソ泣きだろ。
[繭子]:「えっと、後は……そうだ。大半の人は済ませたとは思うけどー、マジックコロシアムの締め切りは今日の夕方までだから、出ようか考えてる人は急いで受付を済ませてね~? それと、ピアニストとハーモニクサーの発表の日取りも、絶対に忘れないように~。いいですか~?」
[クラスメイト]:「はーい」
[繭子]:「はい、じゃあ朝のホームルームはこれで終わりー、みんなまた授業でね~、ばいばーい」
マユ姉はトットコ走って教室を出て行った。
[愛海]:「おめでとう、ふーちゃん」
[吹雪]:「からかうなよな、日野」
[愛海]:「いいじゃなーい、愛されてる証拠じゃないの?」
[吹雪]:「学園で公私混同はしてほしくないんだよ」
学園に着いたら、あくまであっちは先生、こっちは生徒。
けじめはつけないとダメだろう。
[愛海]:「そんなこと言ったって、もうみんな分かっちゃってるわよ? 大久保くんと繭子先生の関係のことは」
[吹雪]:「まあ、そりゃそうだが」
あんだけ連呼されてれば、誰だって分かるだろう。
[愛海]:「今更気にしてもしょうがないんじゃないの?」
[吹雪]:「そうかもしれないけどよ……」
[愛海]:「それにかわいいしさ、ふーちゃんって呼び方」
[吹雪]:「……よせよ」
[愛海]:「吹雪っていう勇ましい名前を完璧に打ち壊す柔らかい呼び方、よく考えたものだわ、うん」
[吹雪]:「こっちは結構恥ずかしいんだぞ。しかもみんながいる前であんな呼び方されて……羞恥心がうずく」
[愛海]:「大丈夫よ、もうみんな分かってることだから」
[吹雪]:「何か納得いかないな、それは……」
[愛海]:「仲がいいってステキじゃない? ねえ舞羽」
[舞羽]:「あ、うん。そうだね」
斜め前の舞羽がこっちを振り向く。
[舞羽]:「吹雪くんと繭さんは、見ていて羨ましいよ」
[吹雪]:「ホントか?」
[舞羽]:「うん、今時珍しいと思うよ? あんなに仲がいいのは」
……仲が良いと言う一言で片付けていいものかは微妙だが。
[舞羽]:「私は、一人っ子だから分からないけど、繭さんみたいなお姉ちゃんなら欲しいと思うな」
[吹雪]:「あげるぞ? よかったら」
[舞羽]:「え、ええ? それは遠慮するよ」
[吹雪]:「何だよ、ウソかよ……」
[舞羽]:「そ、そうじゃなくて。いたらいいなってことで、実際にはもらえないよ……」
[吹雪]:「冗談に決まってるだろ? ……少し本音の部分もあるが」
[舞羽]:「え、ええ~?」
――会話をしている時だった。




