8-2 ギルド長からの呼び出し
JapaneseRamenSimulatorにドハマりしてました。
勝手は全然違いますけどラーメン屋で働いていたころを思い出しますねぇ(ハゲの評論家はいませんでしたけど)
しばらくして、新見とゴリオンが集合場所である冒険者ギルドの掲示板前にやって来た。
「お待たせ。こっちは結構すんなり済んだぜ」
新見は軽く手を上げながら二人に声をかける。
「それはよかったわね」
ゼノンが答えると、新見は何気なく掲示板へ目を向けた。
「……ん?」
貼り出された依頼書を眺めていた新見が、ふと首を傾げる。
「なあ、ここの掲示板って、常駐してる冒険者の数にしては依頼が少なくないか?」
掲示板に貼られている依頼書の大半は薬草の採取や簡単な素材の納品といった、常時受注可能な依頼ばかりで残った討伐依頼は通常手が出ないAランクかSランクの数件だけである。
「討伐依頼なんて、ほとんど残ってないじゃないか。魔王討伐後だからこういうものなのか?」
「……そうね」
ゼノンは腕を組み、じとりとした目で新見を見た。
「どこかの誰かさんが、依頼に出ていた魔物を片っ端から討伐した挙げ句、その素材まで買い取りに出しているものね」
「マジかよ! どこのどいつだ、そんな荒らしみたいなことをする奴は!」
新見は心底驚いた様子で声を上げた。
そのあまりにも見事な反応に、ゼノンは思わず額を押さえた。
「……はぁ」
呆れたようにため息をつくと、ゼノンは腕を組んだまま、親指で背後を指し示した。
そこには、買い取りカウンターを取り囲むように集まった大勢のギルド職員たちの姿があった。
職員たちは魔物の素材を一つずつ確認し、種類や状態を照合しながら、慌ただしく査定を進めている。
その中心で、薫が査定額を記した書類を手に、相場と見比べながら真剣な顔で確認作業をしていた。
その光景を見た新見は、しばらく黙り込んだのち
「あ~…俺らか」
ようやくすべてを察したように呟いた。
隣では、ゴリオンも呆れ顔で首を横に振っていた。
「まったく…お主の無自覚っぷりにはほれぼれするわい…」
「いやぁ~、それほどでもw」と照れる新見
「「皮肉じゃい(よ)!」」
「うぉ!」
二人に即座にツッコまれた新見はひるんだ。
「まあ、今に始まったことではないじゃろ」
「それもそうね……」
ゼノンは半ば諦めたようにため息をついた。
そんな三人のもとへ、一人のギルド職員が歩み寄ってきた。
「お話し中のところ、失礼いたします」
「あら、どうしたの?」
ゼノンが振り返ると、職員は軽く一礼してから口を開いた。
「先ほどお話しした件ですが、ギルド長がお待ちです。ご案内いたしましょうか?」
「ああ、そうだったわね。すぐに伺うから、少し待っていてもらえるかしら?」
「かしこまりました。それでは、そのように伝えてまいります」
職員はほっとしたように表情を明るくすると、ギルドの奥へと戻っていった。
「……ん? 今のは何だ?」
やり取りを眺めていた新見が、不思議そうに首を傾げる。
「ギルド長からのお呼だしよ。もしかしたら、狩場を荒らしたことで叱られるかもしれないわね?」
ゼノンは腕を組み、どこか意地の悪い笑みを浮かべた。
「えっ、俺のせいなのか!?」
新見は驚いて声を上げた。
「いや、どっちかというと、おっs」
「ウオッホン!!」
まるで他言無用と言わんばかりにあからさまな咳払いに新見は口をつぐんだ。
ドワーフ国の一件は他言無用であると王に頼まれていたのだった。
そんなやり取りをしていると、先ほどの職員が戻ってきた。
「お待たせいたしました。それでは、ギルド長室へご案内いたします」
案内の道中新見は買い取りカウンターの方へチラっと目を向けた。
そこでは今も、薫が大量の魔物素材の査定に付き合っている。
「薫は…後でいいか」
そう判断した新見は、ゼノンとゴリオンに続いて職員の後を追った。
ギルド長室へ足を踏み入れると、そこには恰幅のいい男が待ち構えていた。
「やあやあ、諸君! わざわざ時間を割いてもらって申し訳ないね。ささ、掛けて掛けて!」
男は満面の笑みを浮かべながら、応接用のソファーを勧めてきた。
ギルド長といえば、もっと威厳のある人物を想像していた新見たちだったが、目の前の男は意外にも低姿勢だった。
三人は少々戸惑いながらも、テーブルを挟んだソファーに腰を下ろす。
彼らが座ったのを確認すると、ギルド長も向かい側のソファーに腰を下ろした。
「さて、早速で申し訳ないんだが、君たち三人のギルドカードを見せてもらえるかな? 買い取りカウンターにいる彼の分は、すでに確認させてもらったからね。君たちの分だけで大丈夫だよ」
ギルド長に促され、新見たちはそれぞれギルドカードを差し出した。
三人分のカードを受け取ると、一枚ずつ目を通していく。
「ふむ……BランクにEランク、それからゴールドランクの鍛冶師か……」
そこまで確認すると、ギルド長は顎に手を当て、何やら考え込むように唸った。
「なるほどねぇ。ランクだけを見れば、あのレベルの魔物を討伐できるとは思えないが…しかし、今回納品された素材を見る限り、実力は相当なものと見える。いやはや、これは……」
その様子を見つめる新見たちの間に、何とも言えない不安が広がっていく。
そんなことを考えていると、ギルド長はハッと顔を上げた。
「ん? ああ! すまないすまない。つい考え込んでしまったね。要は、ギルドランクだけを見れば、君たちがあれほどの魔物を狩れるとは思えなかったって話さ。
でも、実際に納品された素材は本物だし、そもそも、あの魔物たちの討伐依頼は誰も受注してくれないし、それに、ここ最近は北の森へ向かおうとする冒険者がほとんどいなくてねぇ…実力者がここ最近不足がちで頭が痛くなるよ…」
と悩みの種をぶちまけるギルド長。
ギルド長はそこで一度言葉を切ると、実に晴れやかな笑顔を浮かべた。
「だから、こちらとしては大助かりなんだ! いやあ、本当にありがたいよ!」
「は、はあ……」
あまりにもあっけらかんとした説明に、新見達は曖昧な返事をするしかなかった。
「うん。君たちなら、例の話をしても大丈夫そうだ」
「例の話……?」
新見が聞き返すよりも早く、ギルド長はゴリオンのギルドカードだけ返却した。
「悪いけど、君たち二人のカードはもう少しだけ預からせてもらうよ。ランクアップの手続きをするからね」
「……え?」
「ランクアップ?」
新見とゼノンが揃って目を丸くした。
「それじゃあ、ちょっと手続きを済ませてくるから。少し待っていてくれたまえ」
そう言って扉を開け、部屋の外へ出ようとした、そのときだった。
「ぅるな~ん」
足元から、ひょっこりと何かが顔を出した。
「おっと?」
ギルド長は思わず足を止める。
入ってきたのは、従魔登録を完了して青いリボンを首に巻いたマリーだった。
「おや、君達の従魔かい? これはまた、かわいらしい子だねぇ」
ギルド長はマリーを見下ろし、目尻を下げた。
「それじゃあ、私は一度席を外すよ。すぐに戻るから、ゆっくりしていてくれたまえ」
そう言い残すと、ギルド長は部屋を出ていった。
扉が閉まった途端。
「な、な~んだ…。説教とかじゃないのね…」
三人は心の底から安堵したようにソファーへもたれかかった。
「いや、本当に…。俺、てっきり北の森で何かやらかしたって怒られるのかと思ったぞ……」
緊張の糸が切れたようにぐったりと背もたれに身を預けた。
三人が揃って脱力していると、マリーがとことこと歩き出す。
ぽすっ。
「ぐえっ!?」
なんと、マリーは新見の腹を踏み台にして、隣に座るゼノンの膝もとへと飛び移ったのだ。
「にゃー」
まるで甘えるような鳴き声を上げ、ゼノンを見上げる。
「もう、マリーったら……」
ゼノンはすっかり表情を緩めると、マリーを撫でだした
「こ、こいつ…」
猫らしい無遠慮な姿に新見は叱ろうにも叱れないもどかしい感覚に陥ったのだった
ちなみにこのギルド長割と苦労人なんですけど深堀するとなぜか心が居た堪れなくなるので止めておきます。




