7‐12 ドワーフ国との別れ
申し訳ございません。月初作業に追われていました。
退職者からの引き継ぎに顧客の増加…一気に忙しくなって書いてる時間がどんどん減っていく…
∩(´;ヮ;`)∩ンヒィ~
「うちの麺は、全卵二個に加えて、小麦粉八に対して水が二。そこに、先ほどできたかん水を〇・四くらい入れる」
配合から説明する新見に真剣にメモを取るドワーフ達。
そしてアイテムボックスから久々の登場!製麺機!
水回ししたのち伸ばした麺帯を圧延、複合圧延の工程へと進めていく。
「ここらへんはパスタとよく似てますな」
とドワーフ達のうちの一人がつぶやいた。
そして裁断用の刃を取り付けて麵ができる様子を見て歓喜の声が上がる。
「これで麺づくりの全工程だ。」
「工程はほとんどパスタに似ていますがこの製麺機についてはパスタマシーンの一部を流用できそうですね。復興がある程度進んだら専用の製麺機について鍛冶場に話を進めるのも良いですね」とイタチョーが先ほど新見が使用した製麺機について興味を示した。
「まぁ、その辺はそっちで進めてくれ…」と新見は反応に困ったように言う。
「で、次はスープなんだけど……」
スープについて語りだすと新見が用意した材料へ目を向ける。
「うちの場合はガラと野菜を使ってる。ただ、これはどのスープにするかで素材や調理法が変わる」
「……?」
六代目が首を傾げた。
「どのスープにするか……?」
「そう。全部言うとキリがなくなるから割愛するけど魚介系だったり、動物系だったり、ちなみに、うちでは鳥白湯と清湯スープの動物系の二種類で売ってる」
「ほぉ~」
そう言うと新見は仕込み中の鍋―の中身をドワーフ達に見せた。
流石に全員が同時に見ようにもお立ち台が足りなかったので順番に見ることに
エリート集団だけあって特に揉めもせず自然に並び出す様子を見て
(おっさんたちだったら”俺が先だ”とか言って我さきへと突っ込んで喧嘩しそうだな…)
とちょっと失礼なことを想像する新見。
「コカトリスをベースにネギ…生姜は入っていないようだ…」スープの仕込みの様子を見て
匂いやスープの中の具材、眼前の調理法だけで自分たちでもスープが再現できるか考えだすドワーフも出だした。
「まぁ、今のドワーフ国の状態だと魚介系が無難かな。」
「魚系?」
「主に鰹節とか煮干しを使ったラーメンだね」
「それは俗にいう”出汁”なのでは?」
「まぁ広義的に言えばこのスープも”出汁”なんだけどね、専門用語の話はいったん置いといてスープ作るぞ」
と言い新見は乾物の鰹節、乾燥昆布、煮干しを使い、出汁を濃いめに煮だす。
「イタチョーさん、昨日言ってた”アレ”用意できる?」とイタチョーに訊くと
「”アレ”ですね、少々お待ちを。」
すぐにピンときた六代目は一度部屋を出て少しすると一斗缶を抱えて再度部屋に入ってきた
「こちらですね!」
そして、すぐさま一斗缶を新見の前へ差し出す。
「そうそう、これこれ」
蓋を開けて中を覗き込む新見。
一斗缶の中には、たっぷりの醤油。
その中に、何やら紙のようなものと、乾燥したキノコらしきものがいくつも浮かんでいる。
「これは……?」
料理団のドワーフたちも興味津々で覗き込む。
「これは”カエシ”って言ってな」
新見は一斗缶を指差しながら説明を始める。
「どんぶりにスープを注ぐ前に、あらかじめ入れておく調味料だ」
「直接、醤油を入れるのではダメなのですか?」
料理団の一人が挙手しながら尋ねる。
「あー、まあ……そうしたくなる気持ちは分かるけどな」
新見は少し苦笑する。
「直接入れると、醤油の風味が飛びやすいんだ。それに、お客さんによって好きな塩気の具合も違うだろ?」
「ふむ……」
「だから、あらかじめ濃いめの味を作っておいて、スープと合わせる量で調整できるようにしてあるんだ」
「たしかに……味の好みは人によって違いますね!」
ドワーフは納得したように頷くと、手元のメモ帳へ慌てて書き込んでいく。
それを見た他の料理人たちも、
「なるほど……」
「これは重要だな」
「配合だけでなく、提供時の調整も必要なのか」
と、それぞれのメモへ次々と書き足していく。
六代目イタチョーもまた、一斗缶を置いて真剣な表情で筆を走らせていた。
「…しかし、驚いたよ」
「?」
「乾燥キノコが無事だったのは知ってたけど…まさか、乾物部屋が無事で乾燥昆布や煮干しがあんなにあるとはな」
新見は、醤油の中に浮かぶ昆布をしげしげと眺める。
「見た瞬間、思わず声が出ちまったよ……」
「ほっほっほ」
六代目イタチョーは、どこか誇らしげに笑った。
「ここから随分と遠い、ミーハイの街から直接買い付けているのですよ」
「ミーハイから?」
「ええ。出汁を取るために、最高級品を取り揃えております」
そう言って、一斗缶をぽん、と軽く叩く。
「この国で手に入る食材だけでは、どうしても限界がありますからな」
「なるほどなぁ……」
新見は感心したように頷く。
いよいよ、仕上げの段階に入る。
新見はまず、丼の底へカエシを適量
そこへ熱々のスープを注ぎ、湯切りしたばかりの麺を静かに沈める。
箸で麺を軽く整え、鶏チャーシューを数枚。
そして、刻んだネギを添える。
「……よし」
ドワーフ国での初のラーメン(魚介醤油ラーメン)が完成した!
「完成だ!」
「「「おぉ~!」」」
完成とともに拍手が鳴りだした。
「味見したいんだが…」
「お気になさらず、存分にご堪能ください。全行程は見せてもらいましたので後は我々でご用意いたします。」
新見の言うことを察してイタチョーが出来立てのラーメンを食するように新見に促した。
「そ、そう?じゃぁ、いただきます。」
ドワーフたちを横目に箸を取った。
まずはスープを一口。
続いて麺を啜る。
ズズッ。
口の中に広がる、芳醇な醤油の香り。
そして後から香る鰹節と昆布のうまみに煮干しの香り。
独特の弾力を持った麺の食感。
「…………」
新見の箸が、ほんの一瞬止まった。
(あぁ……これは……昔懐かしの中華そばだ……)
シンプル。だからこその良さがこのいっぱいに詰まっていた。
思わず、新見の口元が緩む。
そんな新見とは対照的に
「これが……!」
「これが、あの四代目イタチョーたちが追い求めていたラーメンなのか!」
「すごい……!」
周囲のドワーフたちは、もはや大騒ぎだった。
それぞれ自分の文のラーメンを作り、食したドワーフ達は興奮を隠せなかった。
ラーメンが完成すると、新見は先日、ドワーフ王たちと食事を共にした部屋へと通された。
広い卓の上には、それぞれの席に一杯ずつ、出来立てのラーメンが置かれている。
席に着いているのは、ドワーフ王、先王、ゴリオン、ゼノン、薫、そして新見。
全員の前にラーメンが揃ったところで、しばしの沈黙が流れる。
最初に口を開いたのは薫だった。
「おぉ! 王道の醤油ラーメンだ!」
目を輝かせながら、さっそく箸を手に取る。
「鶏白湯もいいけど、やっぱラーメンと言ったらこれよね」
ゼノンも嬉しそうに丼を覗き込む。
その横で、ゴリオンは湯気の立つスープを眺めながら、しみじみと呟いた。
「今までは塩ぐらいしか調味料がなかったからのぅ。ワシらにとっては、逆に新鮮じゃ」
「そうなのか?」
新見が意外そうに眉を上げる。
「ああ。醤油をスープに入れるなんぞ、ワシらには馴染みがないからの」
そんな二人のやり取りを聞いていた先王が、待ちきれないとばかりに箸を手に取る。
「とにかく、食ってみようではないか」
「そうね」
「いただきます」
それぞれが箸を手に取りラーメンをすする。
その時の新見を除いた全員のリアクションは先ほど研究室で見たドワーフとほぼ同じ光景だった。
新見はデジャヴを感じながら二杯目のラーメンをすすった。
ラーメンの試食会が終わると、新見たちは出立の準備を始めた。
今回の騒動もひと段落し、ドワーフ国もいよいよ本格的な復興へと動き始めている。
そんな中、いつまでも自分たちが居座っているわけにもいかない。
試食会の最後に、新見たちはドワーフ王へその旨を伝えていた。
「我々も、そろそろここを発とうと思います」
新見がそう告げると、ドワーフ王は少し寂しそうにしながらも頷いた。
「そうですな。本来ならば国を挙げて皆様を称えたいところですが……いつまでも引き留めるわけにもいきませんからな」
すると、横から六代目イタチョーが手を挙げた。
「それでしたら、せめて餞別くらいはご用意させてください」
「それはいい考えじゃな」
先王も賛同する。
「では、出立の際に渡すとしよう」
とドワーフ王がまとめる。
「ありがとうございます」
そう答えながらも、新見たちは顔を見合わせた。
(……これから復興だっていうのに、あの蔵にあったものとか渡されたりしないだろうな?)
少々不安を抱きながら、出立の日を迎えることとなった。
出立の日。
霧の洞窟の入口には、ドワーフ王を中心に、大臣たちや宰相、そして六代目率いる料理団までが集まっていた。
これだけの人数に見送られるとは思っていなかった新見たちは、少々恐縮しながらその輪の中へ入っていく。
「改めて、本当に感謝する」
ドワーフ王が新見へ手を差し出す。
「こちらこそ。いろいろ世話になりました」
二人は固く握手を交わした。
「それで、餞別なのじゃが」
ドワーフ王がそう言うと、六代目たち料理団が前へ出る。
「こちらをどうぞ」
手渡されたのは、醤油や味噌をはじめとした保存の利く調味料の数々だった。
「おお……!」
新見の目が輝く。
「これは助かるな」
調味料はいくらあっても困らない。
さらにドワーフ王が宰相へ視線を送る。
それを察した宰相が、一通の書状を新見へ差し出した。
「こちらもどうぞ」
「これは?」
「王室御用達の醤油や味噌を醸造している蔵の仕入れ状でございます」
「仕入れ状?」
「ええ。今後、これらの調味料の仕入れが必要になりましたら、こちらに記された手順でお手紙をお送りください」
宰相はにこやかに続ける。
「こちらから特別割引にて、”最優先”でお送りいたします」
「えっ!?」
新見は思わず書状を二度見した。
「いいのか? こんなしがないラーメン屋台に、こんな待遇……」
「フフフ」
宰相は穏やかに笑った。
「ご謙遜を。それだけ我々ドワーフ国は、貴方様方に大恩があるということですよ」
「…ありがとうございます」
新見は改めて書状を大切そうにしまった。
そして今度は、先王がゴリオンの前へ歩み出る。
「そしてゴリオン。ワシからはこれを渡そう」
「ん?」
先王が取り出したのは、革製のウエストポーチのような袋だった。
それをゴリオンへ手渡す。
手に取ったゴリオンの表情が変わった。
「こ、こいつは……!〝マジックバッグ〟!?」
そして、驚愕の声を上げた。
「しかも、これ…宝物庫にあったやつじゃないか!」
その言葉を聞いた新見は、さりげなく鑑定魔法を発動する。
~~~《マジックバッグ(中)》~~~
収納容量:100×100×100m
出したい物を思い浮かべて手を入れることで即座に取り出し可能。
内部の時間は外界と同じ速度で経過する。
上級ダンジョンで発見された希少品。
~~~
(へ~、相当なレアアイテムじゃん……)
新見は思わず唸った。
(薫のマジックバッグは神様からのギフトだから規格外なだけで、本来ならこれでも国宝クラスなんだよな)
「よいのか!?」
ゴリオンも驚きを隠せない。
そんな兄を見て、先王は笑った。
「持っていけ、兄さん」
「しかし……」
「宝物庫の肥やしになるくらいなら、使われたほうが道具も本望じゃろうて」
「……」
ゴリオンはしばらくマジックバッグを見つめていた。
やがて、ふっと笑う。
「そうか……」
腰にマジックバッグを取り付けるゴリオンは
「後で返せと言われても、もう返さんからな」
「はっはっは! それでよい!」
兄弟は顔を見合わせ、豪快に笑った。
「それじゃあ、そろそろ行くか」
新見が声をかける。
「ああ」
ゴリオンが霧の洞窟へ歩み寄る。
そして、洞窟の入口へ手を突っ込んだ。
すると入った時のように霧の向こう側へと続く霧のトンネルが姿を現した。
「それでは皆さん、お世話になりました!」
「また会いましょう!」
新見、ゼノン、薫がそれぞれ手を振る。
「皆様、本当にありがとうございました!」
ドワーフ王に先王に宰相、六代目をはじめとした料理団も手を振り返す。
「……じゃあな、ドワーフ国」
そう呟き、歩みを進めた。
これでドワーフ王国編終了です!
新章は一回閑話を挟んでから公開いたします!




