7-11 新見の楽しいラーメン教室
遊戯王のデッキ調整の無限ループにハマっていました。新規と禁止制限が同時に来ると調整するデッキが一気に増えますね…
新見は観念したように小さく息を吐いた。
「え、あー……申し上げにくいのですが…私が、その“ラーメン”を作って、屋台で販売して回っておるのです……」
「…………」
気まずい沈黙。
「先ほどのお話を聞いて……かなりご苦労されていたようでしたので。その……なかなか名乗り上げることができず……」
「あー、そうでしたのか!いえいえ、とんでもない!」
六代目イタチョーも慌てて頭を下げる。
新見と六代目は謝りあいお互いにペコペコしあう謝罪合戦になった。
「ならさっそく作ってくれと言いたいところじゃが晩餐会の後ではさすがに厳しいな。六代目よ、明日”あそこ”を使わせてやれ。」
流石に晩餐の後にラーメンはさすがに胃の容量が限界になるドワーフ王は六代目イタチョーに指示した。
「!あそこですね、ついでに手の空いているものも集めましょう!」
王の意図を汲んだ六代目はそう言うと明日に向けて再度厨房にそそくさと戻っていった。
その姿を見送った途端。
新見、ゼノン、ゴリオンの三人から、同時に力が抜けた。
「はぁ~~~~……」
「疲れた……」
「まったくじゃ……」
三人揃って、椅子へ深くもたれかかる。
今日一日で、あまりにも色々なことが起こりすぎた。
そんな三人をよそに、ドワーフ王がゴリオンへ詰め寄った。
「しかし兄者! ずるいではないか!」
「何がじゃ?」
「まさか、幻のレシピをすでに堪能していたとは!」
「いや…ワシも知らんかったんじゃ…まさか、あの麺料理が母上が長年追い求めていた料理だったなんて、普通夢にも思わんじゃろ…」
ゴリオンはげんなりした顔で手を横に振る。
「……それもそうか」
ドワーフ王も納得したように頷く。
二人がそんな会話をしている中――。
「……んあ?」
と腑抜けた声がしたので全員視線を向けると酔って顔を真っ赤にした先王がボトルを抱えながら寝ぼけていた。
「寝てる…?」
ゼノンが呆然と呟く。
「いつの間に…」
と薫もボソッと呟いた。
「んごぉ…」
豪快ないびきが響く。
どうやら先王は料理と酒を存分に堪能した結果、いつの間にか酔いつぶれていたらしい。
こうして、波乱続きの晩餐会は先王のいびきと共に終わりを告げた。
翌朝。
新見は普段の屋台営業で着ている服装に着替えると、約束通り厨房へと向かった。
「おはようございます。新見様」
「お、おはようございます…」
厨房へ入った新見を出迎えたのは、すでに身支度を整えた六代目イタチョーとその後ろには、数人のドワーフたちが整然と並んでいる。
おそらく弟子か、厨房を補佐している料理人たちなのだろう。
「「「おはようございます!」」」
一斉に元気な挨拶が飛んできた。
一瞬ひるんだ新見をよそに六代目が
「では、新見様。こちらへどうぞ。」と厨房の奥からさらに城内を進んでいく。
そして、一つの扉の前で立ち止まった。
「こちらです」
扉を開ける。
「おお……」
そこにあったのは、先ほどの厨房よりも一回り、いや二回りほど狭い厨房だった。
しかし、調理台に竈、鍋や包丁などの調理器具は一通り揃っている。
掃除も行き届いており、まるで小さな厨房のようだった。
「ここは?」
新見が尋ねると、六代目は少し誇らしげに説明した。
「ここは、過去に四代目や五代目が使用していた“料理研究用の部屋”です」
「料理研究部屋……」
「はい」
六代目は部屋の中を見渡す。
「ここでかつて様々なレシピの再現や、新作料理の開発の試行錯誤がなされていました。」
「六代目使ってないのか?」と新見が問いかけると
「私は調理器具にこだわるタイプでしたのでここの調理器具はどうにもしっくりこないのです。なのでもっぱら料理の研究はここではなく普段の厨房でやってます…まだまだ未熟です。」とイタチョーは頬を掻きながら困り顔をする。
(謙遜なのか天才なのか…)と新見はふと思ったがイタチョーはつづけて
「では、早速ですが新見様のラーメン作りのお手前を拝見したい!」
と声をかけた。
新見の楽しいラーメン教室の開幕である。
新見は基本である普段のコカトリスラーメンにつかう食材、麺、具について話す。
「醤油があるのは知ってたが入手ルートが貴族経由しないといけないから味付け…じゃなかったカエシは塩をベースに煮干しを油で炒って匂いを移したのを…」
新見の一言一句を聞き漏らさずドワーフ達はメモを書く手が止まらない。
「んで、肝心の麺なんだが…最後の材料”かんすい”について先に話そう」
「「おぉ~!」」
待ってましたと言わんばかりの声が上がる。
「まず、かんすいの入手法だが…」
新見がそう切り出した瞬間、六代目をはじめとしたドワーフたちの視線が一斉に集まった。
何しろ、何百年もの間、彼らが探し続けてきた最後の材料である。
その入手方法ともなれば、気にならないはずがない。
「…………」
「…………」
皆、少しそわそわしながら新見の手元を見つめる。
新見が向かったのは、厨房の片隅にあるかまどだった。
「お、ちゃんとあるな。」
新見はそう言うとかまどの中の灰を集め出す。
「に、新見殿……?」
六代目が困惑した声を上げる。
しかし新見は構わず、かまどに溜まっていた灰を集めていく。
ドワーフたちの頭上に、本当に「?」マークが浮かんでいるように見える。
「必要なのは炭を燃やした後にできるこの”灰”だ」
「?直接小麦粉に入れるのですか?」
ドワーフの一人が手を挙げて問うた。
「そのままじゃぁさすがに食えたものじゃないよ。」
そう言うと新見は適量の灰を水の入ったボウルへ投入した。
「そしたら、かき混ぜる。」
ぐるぐるとボウル内の灰と水をかき混ぜる異様な光景、もちろん灰と水は溶け切らない。
そんな様子にドワーフたちは完全に言葉を失っていた。
やがて灰が十分に水へ馴染んだところで、新見は濾し布とコップを取り出す。
「これを濾して……」
灰を含んだ液体を布へ流し込む。
コップの上に敷いた布を通り抜けた液体が、下に置いたガラスのコップへ溜まっていく。
ある程度たまったところで流し込むをやめるとコップには先ほどの水と同じく透明な液体が入っていた。
「これが、”かんすい”だ」
「「「…………?」」」
一同、沈黙。
「まぁ、いきなりこれが”かんすい”だ!って言われても困惑するわな。」
そう言うと新見はアイテムボックスから瓶入りの粉末状のかんすいを取り出す。
「この液体から水を取り除いたのがこの粉だ。匂い嗅いでみ?」
そう言うとドワーフ達に瓶のふたを開けたものと先ほど濾した液体の匂いを嗅ぎ比べする。
「!ほんとだ。かすかだがこの瓶の中と同じ匂いがこの液体からするぞ!」
「しかし到底食べ物の匂いとは程遠いような…」
「何を言うか、バニラは匂いこそ豊かだが味はほとんどないではないか。それの逆も然りじゃないか」
と各々の感想を述べる。
「あー、初めてのものに興奮する気持ちはわかるが続けるぞ。
粉末状のものは、うちのメンバーのスキルで抽出したものだけど、かんすいは一度水に溶かして使うからな。このコップの様な状態でも十分使えるぞ」
「おぉ~~!」
その瞬間、ドワーフたちから感嘆の声が上がった。
「まさか灰からとは……!」
「答えを見た後なら何とでも言えるが……これほどあっさりとは……」
「しかし、灰を水に溶かすという発想は、何百年経っても出てこなかったぞ……」
「四代目や五代目が苦戦するわけだ……」
それぞれが口々に感想を述べる。
「これを小麦粉に加えることで、普通に小麦粉と水だけで作った麺とは違う、独特のコシと食感が生まれるんだ」
「なるほど……!」
六代目は好奇な目線で新見の麺づくりの続きを見ていく。
ホントはスープ作りから麺づくりまで詳しく書きたかったのですがかなり長くなったので割愛します…




