7-8 晩餐会への招待
耳漏がひどいなと以前中耳炎になった時の耳鼻科の処方箋の点耳薬をつけたのですがあまり効果がなかったんですよ。
で、一日一回のラベルを剥がして薬の名前を検索したらまさかの目薬…しかも効果に対して中耳炎とか何も書いてなかったんですよ。
藪かよ。
やっぱりセカンドオピニオンは大事ですね。
そこからの復興は、驚くほど早かった。
石化からの経緯を聞くため唯一の生存者であるドワーフを王城に招き、町中の被害状況を確認。
復興計画の第一弾を立て終わると怒涛の石化解除が始まった。
まずは料理団。
次に王の側近たち。
城内を掃除するメイドたち。
そして天守閣や破壊された家屋を修復するための大工たち。
「この人数で大丈夫ですか?」
薫が次々と石化解除薬を手渡しながら尋ねる。
「問題ない。必要な人材から順番に戻していくぞ」
ドワーフ王が手元の名簿を確認しながら答える。
石化を解除された者たちは、驚きこそしたものの、宰相や大臣たちの説明に状況を理解するや否やすぐに自分たちの仕事へ取りかかった。
新見も厨房関係の復旧を手伝い、ゼノンはメイドたちとともに城内の清掃。
薫はマジックバッグを駆使して、大工たちが必要とする木材や石材などを右へ左へと運び回った。
そしてゴリオン、ドワーフ王、先王を中心に、宰相や大臣たちも加わって、次の石化を解除計画の第二弾の人材の選定を進めていった。
その一方でマリーはというと
誰にも邪魔されない場所を見つけては、城内を気ままに散歩していた。
日当たりのいい場所を見つければ、そこで丸くなって昼寝。
そして、
食事の時間になると、どこからともなくちゃっかり現れる。
「……あの子、ちゃんと時間分かってるのかしら?」
ゼノンがつぶやくが
当のマリーはそんなことなど気にも留めず、出された食事をもぐもぐと食べていた。
猫が猫しているだけだった。
そうして復旧作業は進むことわずか三日。
城内は、見違えるほどの姿を取り戻していた。
天守閣も最低限の修繕を終え、穴の開いていた壁には新しい木材が組まれている。
石化していた者たちも必要な範囲から順次復帰し、王城内には再び人の声が戻っていた。
謁見の間。
かつて魔物の巣となっていた天守閣は修繕され、綺麗に整えられたその場所で、新見たちはドワーフ王と向かい合っていた。
(天守閣、すっごい和風なのに服装が洋風なの、すっげぇ違和感あるな…)と新見が思っていると
「さて……」
ドワーフ王が一歩前へ出る。
「いろいろとバタバタしていて、正式に礼を言うのが遅くなってしまった。この国を救ってくれたこと、改めて礼を言わせてもらう」
その言葉とともに、王は深々と頭を下げた。
それに連なり家臣たち全員が頭を下げた。
「いやいや、そんな……」
新見は慌てて手を振る。
「本来であれば褒賞とか用意したいのだがこの惨状の復旧が最優先。後日改めて正式な場で褒賞を送らせていただく。」と横の宰相が申し訳なく言う。
「いえいえ、是非復旧に精を出していただきたい」とゴリオンがいう。
「とはいえ恩人を手ぶらで返すのも忍びない。ワシ個人のお礼としてお主たちを晩餐会へ招待したい」
「晩餐会?」
「そうじゃ、個人的な晩餐会じゃからそこまで正式なものではないが苦労掛けたお主たちをねぎらいたいのじゃ。参加する者もごくわずかじゃ」
とドワーフ王が髭をさすりながら笑いながら言う。
「そ、そういうことなら…ありがたくご馳走になります」
と新見は緊張気味に答えた。
「うむ、なら今夜は客室にてくつろいでくれ。」
そう言い謁見は終わった。
晩餐会の準備が整うまでの間、新見たちはメイドたちに案内され、客室へと移動することになった。
「こちらのお部屋でお待ちくださいませ」
案内されたのは、ゲストルームもとい、人族向けに用意された客室だった。
襖を思わせる引き戸に、畳。
どこか高級旅館を思わせる、妙に懐かしい雰囲気の部屋だった。
「おお…なんか旅館みたいだな」
「そうね、なんだか懐かしい気分になるわ!」
そう言うと一行は靴を脱ぎ、部屋へと上がる。
(ゴリオンだけは別室へ案内されているため、この場にいるのは新見、ゼノン、薫の三人。)
やがて新見は、ふと思い出したようにアイテムボックスを覗き込んだ。
「王様と晩餐会かぁ…スーツどこやったっけ?」
ごそごそと中身を漁る。
「あったあった……って、これは違うか」
出てきたのは全身を金色のスパンコールで覆われた、趣味の悪いド派手なスーツ。
照明を反射してギラギラと輝いている。
「…………」
「…………」
薫とゼノンが無言になる。
新見は何事もなかったかのように、すぐにアイテムボックスへ戻した。
「なんでそんなもの持ってるんです?」と薫が口を開く
「…なんとなく」
気まずいのか新見はそっぽを向いた。
「なんとなくじゃないですよ…」とあきれる薫。
「ちなみにこのスーツ、
素材は、希少な繁殖期のケイブスケイルリザードの雄から取れた鱗だけど。性能が中途半端だからノリでスパンコールにしたらこうなった。」
呆れてものも言えないゼノン。
「って僕も一応確認しておこう」
薫もつられてマジックバッグを探り始める。
ゼノンは先ほど妙に静かだがよく見ると目線が泳いでいて少し青ざめていた。
「……ねぇ」
「ん?どした?」
「私…フォーマル用のドレス…持ってない…」
「…………」
新見と薫が顔を見合わせる。
流石に女物は持っていない。そういわんばかりの表情をお互いにしていた。
「どうしよう…。王様主催の晩餐会で普段着って、さすがにまずいわよね…」
ゼノンの顔がさらに青くなる。
その瞬間。
「こんな!」
「ことも!」
「あろうかと!」
「「「!?」」」
どこからともなく、三人のベテランメイドドワーフが現れた。
そして妙に目が輝いている。
「な、なに……?」
ゼノンが後ずさる。
しかしベテランのメイド三人は逃がさないと言わんばかりに距離を詰める。
「お客様にもフォーマルな場で着飾っていただくため!」
「ヒューマン用のドレス!」
「エルフ用のドレス!」
「「「それぞれサイズを合わせてご用意しております!」」」
「え?」
あまりの勢いにゼノンが固まる。
「ささ!」
「こちらへ!」
「時間がありませんよ!」
「ちょ、ちょっと待って!?」
三人のベテランメイドに左右と背後を固められ、ゼノンはそのまま部屋の外へ連行されていく。
バタン。
襖が閉まると部屋に静寂が一気に戻る。
「……すごかったな」
「はい……」
その後二人はしばらく黙っていたが、新見がぽつりと呟いた。
「やはり種族関係なくオバハンが最強なんだな…」
「そりゃそうですよ」
薫がそう言うと二人は無言で晩餐会用のスーツを取り出し着替えだす。
途中耳を澄ますと隣の部屋から
「髪型はこちらのほうが!」
「いえ、こちらです!」
「ちょっと! 私の意見は!?」
「「「きゃー、お似合いですわ!」」」
「いや!これは恥ずかしい!」
ベテランオバハンメイドとゼノンの悲鳴が響いていた。
結局なんだかんだ言ってオバハンが一番強いんです。




