6-10 嘘だろ!?ここで!?
新見は実はテンションファイターで強敵との戦闘中にテンションが上がると口調が途端に荒くなります。
「嬢ちゃん! 大丈夫か!」
ゴルゴーンバジリスクの敵意が新見へ向いたのを確認すると、ゴリオンはすぐさまゼノンのもとへ駆け寄った。
「えぇ……。まさか、あそこまで執拗に狙ってくるなんて……」
ゼノンは苦笑を浮かべながら回復ポーションの栓を抜き、一気に飲み干す。
視線の先では、新見がゴルゴーンバジリスクの猛攻を紙一重でかわしながら、隙を突いては反撃を叩き込んでいた。
「あやつなら心配はいらんじゃろ。それより、何かわかったか?」
ゴリオンの問いに、ゼノンは息を整えながら頷く。
「喉元の魔石……やっぱりあれよ。攻撃されるたびに露骨に反応が違う。力の源なのか、心臓みたいな急所なのかは分からないけど、とにかくあいつにとって一番大事な部分なのは間違いないわ。」
「ならば、」
ゴリオンは口元を吊り上げた。
「攻撃手段を削いでやるまでじゃ。」短い作戦会議を交わしている間も、新見は押されるどころか、巧みにいなしながらカウンターで傷を増やしていく。
ついに無視できないほどの損傷になったのか、ゴルゴーンバジリスクは大きく翼を広げた。
バサァッ!!
巨体が一気に宙へ舞い上がる。
「あっ、おい! てめぇ、逃げる気か!」
新見が叫ぶ。
だが、ゴルゴーンバジリスクは意に介さず、さらに高度を上げようと翼を打った。
その瞬間、
ドゴォッ!!
一本の極太の矢が夜空を裂き、右翼を貫いた。
「ギャァァァッ!!」
悲鳴を上げた魔物が体勢を崩す。
新見が振り向けば、そこには巨大な兵器を構えたゴリオンとゼノンの姿があった。
ゴリオンが《テンプレート》で即座に組み上げたのは、大型の弩砲
そして照準を合わせたゼノンが、スキル《投射必中》を発動していた。
片翼を射抜かれたゴルゴーンバジリスクは高度を維持できず、螺旋を描くように地上へ降下していく。
「今だ!」
その一瞬を、新見は見逃さなかった。
落下地点へ一直線に駆け込み、渾身の力で喉元の黒紫色の魔石へ剣を突き立てる。
ギィィィン!!
剣先はついに魔石へ食い込んだ。
しかし、深く突き刺さったのか今度は剣が抜けなくなる。
「しまっ――!」
叫ぶ間もなく、ゴルゴーンバジリスクが大地へ激突した。
「今じゃぁぁぁッ!!」
ゴリオンが雄叫びを上げながら駆ける。
狙うのは、魔石に突き立ったままの新見の剣。
ガァァァンッ!!
ウォーハンマーを大きく振りかぶりまるでパイルバンカーのように、剣身を魔石の奥深くへと叩き込む。
ゴルゴーンバジリスクは断末魔にも似た絶叫を響かせ、全身を激しく痙攣させた。
「おぉ! やるな、おっさん!」
魔石へ深々と剣がめり込んだのを見て、新見が親指を立てる。
「ふぅ…老体には、ちときついわい」
ゴリオンはウォーハンマーを肩に担ぎ、腰を軽く叩いて息を整えた。
「……待って!」
ゼノンが鋭い声を上げる。
「何か変よ!」
三人の視線が一斉にゴルゴーンバジリスクへ向く。
喉元の魔石には大きな亀裂が走り、剣は根元まで突き刺さっている。
本来なら絶命していてもおかしくない致命傷にもかかわらず、ゴルゴーンバジリスクはその場で崩れ落ちることなく、ゆっくりと首を天へ向けた。
「クェ…クェ…クェ…」
どこか間の抜けた、妙に気の抜ける鳴き声だった。
「…チョコボール?」
新見がぽつりと呟く。
「いいから黙って!懐かしいけども!」
ゼノンのツッコミが間髪入れず飛ぶ。
新見の渾身のボケは、一切の容赦なく切り捨てられた。
その時だった。
喉元に突き刺さっていた黒紫色の魔石が、突如として妖しく脈動を始める。
ピシッ――。
細かな亀裂が蜘蛛の巣のように広がり、眩い紫黒色の光が溢れ出した。
「うおっ、なんじゃ!?」
ゴリオンが思わず身構える。
次の瞬間、魔石は甲高い音を立てて砕け散った。
同時に、深々と刺さっていた新見の剣が力を失ったように床へと落ちる。
「自爆…!? それとも石化光線!?」
ゼノンが弓を構え直し、光から目を細める。
「いや…これは…」
砕けた魔石から放たれた光がゴルゴーンバジリスクの全身を包み込み、肉体そのものを作り変えていく。
光が晴れるとそこに立っていたのは、ゴルゴーンバジリスクではなかった。
灰色の巨大な鳥の頭に漆黒の獅子の胴体。
そして、うねる三本の緑色の蛇の尾。
その見た目はまさに灰色のグリフォンそのものだが、その尾だけは胴体に見合わず派手な色の蛇だった。
「げぇっ……ここで進化すんのかよ!?」
新見は思わず顔をしかめながら、即座に鑑定魔法を発動する。
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《ゴルゴニックグリフォン(キメラ種)》
食用可。ただし適切な処理を行わずに食べると石化するため注意。
バジリスクを凌駕する石化能力を持つグリフォン。
地上・空中の両方で高い戦闘能力を発揮する Aランク相当 の魔物。
ただし、別種の因子が混ざっており、通常のグリフォンには存在しない三本の蛇の尾を持つ。
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(グリフォンかぁ…やっかいだけど…ん?この(キメラ種)ってなんだ?)
今まで見たことのない分類名に戸惑う新見。
その意味を考える暇はない。
「まずいわね…どうやらあの黒い魔石は弱点というより、蓄えた魔力を一気に還元して、魔物を強化したり進化させるための器だったのね。」
ゼノンが険しい表情で呟く。
「しかも進化先がグリフォンとは…こいつは骨が折れそうだわい。」
ゴリオンはウォーハンマーを握り直し、苦笑を浮かべる。
だが、新見だけは不敵に笑った。
「なーに。」
剣を拾い上げ、その切っ先をゆっくりと新たな魔物へ向ける。
「ラウンド2といこうじゃないか。」
新見がそう言うと三人は残しておいた二本目の予防薬を一気に飲み干す。
ゴルゴニックグリフォンもまた、すぐには飛びかかってこない。
まるでこちらの力を測るかのように、黄金色の瞳で三人をじっと見据えていた。
来週は更新お休みです。
私事で申し訳ないのですが異動になりましたのでいろいろと整理しないといけなくなりましたので。
(懲戒じゃないよ。)




