6-9 決戦は今夜
ここ最近出勤→家→飯→風呂→睡眠→出勤って感じになってます。
10時間寝ても日中常に眠いです…(ロングスリーパー)
まだ30前半なのにこれが体力の衰えなのかと感じる今日この頃です。
(運動は関節の古いケガがいまだに治らないのでほぼできないですね…)
翌日。
決戦は今夜。
一行は醸所の一角で金床(薫提供)を前に、それぞれ武器や装備の最終確認をしていた。
ゴリオンがそれぞれ簡易的だが調整をし、それぞれのポーチやアイテムボックス内に石化予防薬も収めてある。
装備を点検していたゼノンが、ふと新見へ視線を向けた。
「そういえば、ドワーフ国へ来る道中から思ってたんだけど。」
「ラーメン屋なのに、やたら戦闘慣れしてるわよね。」
少し首を傾げる。
「もしかして、元冒険者かなにか?」
新見はゴリオンから調整し終えた剣を鞘へ収めながら、あっさりと答えた。
「ん? まぁ、そんなところだ。いろいろ事情があって、今はおっさんの工房で世話になってたんだ。」
すると、隣で他の武具を点検していたゴリオンが鼻を鳴らす。
「何を言うとるか。どっちかと言えば、世話になったのはワシらの方じゃ。」
「そんなことないって。」
二人は顔を見合わせると、どちらからともなく照れくさそうに笑い合った。
「「ふふふ……。」」
それを見ていたゼノンは、
おっさん二人が笑い合う様子を心底引いたような目で二人を見つめる。
夜。
決行の時がやってきた。
王城へ向かうのは、新見、ゼノン、ゴリオンの三人。
薫は生存者のドワーフとともに醸造所へ残り、後方支援を担当することになった。
出発間際、生存者のドワーフは紙に力強く文字を書き記し、それを三人へ見せる。
『幸運を祈る』
短い一文だった。
だが、そこに込められた願いは十分すぎるほど伝わってくる。
「任せろ。」
新見は軽く手を挙げる。
ゴリオンは静かに頷き、ゼノンも「行ってくるわ」と微笑むと、三人は夜の王都へと姿を消した。
人気のない城下町を足音を殺して進む。
月明かりだけが石畳を淡く照らし、石化したドワーフたちの像が不気味な影を落としていた。
しばらく歩いたところで、ゴリオンが口を開く。
「聞いた話どおりなら、天守閣は少々厄介じゃのう。」
「というと?」
新見が小声で尋ねる。
「闇討ちには向かんということじゃ。」
ゴリオンは王城の輪郭を見上げながら続けた。
「あそこはただでさえ狭いうえに入口も一つしかない。それに加えて相手はあの巨体じゃ。どう回り込もうと、途中で必ず気づかれる。」
まるで城の構造を知り尽くしている口ぶりだった。
「つまり、こっちから行くんじゃなくて…向こうから来てもらえばいいってことか。」
そう聞いたゴリオンにやりと口角を上げた。
その言葉にゼノンも同じ考えへ至ったのか、小さく笑う。
「ええ。それが一番手っ取り早そうね。」
三人は王城の裏手へと回り込む。
昨夜と同じように、
月明かりを浴びながら、まるで見張り番のように天守の縁へちょこんと腰を下ろし、じっと夜の景色を眺めているゴルゴーンバジリスクがいた。
新見は物陰からその様子を確認すると、小さく口元を緩めた。
「よし……予定どおりだ。まずはゼノン頼んだぞ。」
まず仕掛けたのはゼノンだった。
王城の陰へ身を潜めながら、静かに弓を構える。
狙うのは…喉元にある黒紫色に鈍く輝く、あの謎の魔石だ。
ゆっくりと息を整え、矢をつがえる。
そして、小さく呟いた。
「…《投射必中》。」
淡い魔力が矢へと集まり、放たれた一矢は夜気を切り裂いて一直線に飛ぶ。
込めた魔力が続く限り長距離であろうと標的を外さない必中スキル。
矢は吸い込まれるようにゴルゴーンバジリスクの喉元へと向かい
ガキィンッ!!
金属同士が激突したような甲高い音が、夜空に響き渡った。
魔石へ命中、しかし砕けることはなく、矢は弾かれて落ちていく
新見はニヤリと笑う。
「こっちに気づいた!」
その言葉と同時に踵を返し、一直線に城下の大広間へ向かって走り出した。
「予定どおり、広場まで誘導するぞ!」
「了解!」
ゼノンもすぐさま後を追う。
「まったく、年寄りを走らせおって……!」
ぼやきながらも、ゴリオンはウォーハンマーを肩に担ぎ、二人の後を追った。
その背後では、ゴルゴーンバジリスクが大きく翼を広げる。
怒りに満ちた咆哮を上げながら、三人を追って夜空へと飛び立った。
「へへっ! 安眠妨害されたんだ。圧倒的にご機嫌斜めだな!」
新見は笑いながら石畳を蹴る。
その後方では、怒り狂ったゴルゴーンバジリスクが翼を大きく羽ばたかせ、一直線に追ってきていた。
「ギャアアアァァッ!!」
咆哮が夜の都に響き渡る。
「喉元の魔石に攻撃が当たった時だけ、明らかに反応が違うわね。」
ゼノンは走りながら器用に振り返り、再び弓を引く。
ヒュッ!
放たれた矢は再び喉元の魔石へ。
ガキンッ!
硬い音とともに弾かれる。
その瞬間、ゴルゴーンバジリスクは翼を大きく広げ、怒りをあらわに首を振った。
「やっぱり。」
ゼノンは確信を深める。
「あの魔石、何かあるわ。」
次の瞬間。
ゴルゴーンバジリスクの両目が妖しく明滅し始める。
まるで淡い緑色の炎が灯ったかのように、その瞳がチカチカと輝いた。
「来るわ!」
ゼノンが叫ぶと同時に。ギィィィィンッ!!
両眼から扇状に広がる石化光線が夜の広場を薙ぎ払った。
建物も石畳も、逃げる三人も、そのすべてを飲み込む。
「うおっ……!」
新見たちはまともに光線を浴びた。一瞬、身体が硬直するような感覚が走る。
だがそれ以外は何も起きておらず腕も脚も問題なく動く。
「……よし!」
新見は拳を握ると
「ちゃんと効いてるな!」
石化予防薬は確かに効果を発揮していた。
ゼノンも安堵しつつ、すぐに表情を引き締める。
「当然。でも過信は禁物よ!」
「薬にも限界はあるわ。何度も浴びれば効果時間は短くなるでしょうし、切れたら終わりよ!なるべく被弾は避けるわよ!」
「了解!」
そう返事をすると、やがて視界が開け王城前の大広間へ飛び出した。
石像となったドワーフたちが並ぶ広大な空間。
巨体の魔物が暴れるには十分すぎる広さだった。
「よし……ここなら思い切り暴れられる。」
新見は二振りの剣を静かに抜き放つ。
が、ゴルゴーンバジリスクの視線は、先ほどから執拗に矢を射掛けてくるゼノンへと釘付けになっていた。
鋭い嘴が唸りを上げ、巨大な鉤爪が石畳を砕く。さらに尾の蛇が鞭のようにしなり、大地を叩きつける。
だが、その猛攻をゼノンは紙一重でかわし続ける。
「おいおい、こっちにも構ってくれよ! 寂しいじゃねぇか!」
その隙を逃さず、新見が懐へ飛び込んだ。
豪快に剣をふるうと尾の蛇の頭を一刀のもとに切り落とす。
そのまま返す刃で脚部にも深い傷を刻んだ。
ゴルゴーンバジリスクは痛みに怯むどころか、一瞥すらくれない。傷を負ったことなど意にも介さず、なおもゼノンだけを執拗に狙い続けていた。
(まずい……)
新見は舌打ちする。
(石化を解除できるのはゼノンだけだ。あいつが石になったら、その時点で確実に詰む)
どうにかして敵意をこちらへ向けなければならないと考えた新見。
(…そうだ!)
ちょうどゼノンが嘴の一撃をかわし、ゴルゴーンバジリスクの体勢がわずかに前へ流れる。
新見は一気に駆け出すとそのまま跳躍し、その巨大な背中へ飛び乗る。
そのまま首筋へと駆け上がり、首ごと喉元に埋め込まれた黒紫色の魔石めがけて剣を振り抜いた。
ガギィィンッ!!
首筋に刃が食い込む。
だが、魔石へ届いた瞬間、まるで見えない壁に阻まれたかのように剣先が止まった。
「硬っ……!」
押し込もうとしても、一寸たりとも刃は進まない。
その衝撃でようやくゴルゴーンバジリスクは背中の新見の存在を認識したのか
ギョロリ、と巨大な瞳が新見の方へ向く
「グルルルルァァァァァッ!!」
怒号にも似た咆哮が夜空を震わせる。
次の瞬間、巨体が激しく身をよじった。
「うおっ!?」
新見は背中から振り落とされ、石畳を二、三度転がって受け身を取る。
立ち上がると同時に、ゴルゴーンバジリスクの鋭い視線が今度はまっすぐ自分へ向けられていることに気づいた。
その双眸に宿るのは、明確な敵意。
(よし…敵意がこっちに向いた!)
狙い通り、バジリスクのヘイトは完全に新見へと移っていた。
次で6章の10話ですか…意外と長丁場になってしまいましたね…




