6-6 食事をしていない?
仕事の愚痴で申し訳ないのですが
シート記入したのですが二本のところを一本だけになっちゃったのでそれを報告してたんですが
「なんで一本になったことを書かないの」でクレーム。
一本の売り上げを記入してそれを説明したら「見ればわかる」
…一本になったのシートに入ってるから”見ればわかる”のでは…?
と言う愚痴でした。
「な、なんですか今の!?」
薫が青ざめた顔で思わず声を上げた。
「あんな大きなコカトリス、見たことありませんよ!」
「飛んでたからコカトリスじゃなくてバジリスクよ。」
ゼノンは物陰からそっと外を窺いながら答える。
「それにしても…今まで行ったダンジョンでもあんな大きさのバジリスクは見たことないわね。この間の巨大毒リスと同じように、新種なのかしら…。」
腕を組み、小さく首を傾げるゼノン。
新見も頷く。
「多分そうだろうな。魔王が倒されてたから魔物の生態系に何かしらの影響があったのかもな。」
「隙を見て鑑定をかけたんだけど、『ゴルゴーンバジリスク』って表示された。」
「ゴルゴーン……。」
その名前を聞いたゼノンは顔をしかめる。
「石化能力を持つ怪物の名前そのものじゃない…。安直ね。」
今になって全身に鳥肌が立ち、思わず肩を震わせるゼノン。
それを見て命名したのは俺じゃないぞと新見は心の中で突っ込みながら続ける。
「んで、その鑑定だと石化能力を飛躍的に強化したバジリスクらしい。」
「やっぱりこの惨状の元凶は…。」
薫も息を呑む。
「でも、一つ気になることがある。」
新見は眉をひそめた。
「喉元に黒紫色の魔石みたいなのが埋まってたの見えただろ?」
「ええ、見えたわ。」
「あれだけさすがの鑑定魔法でも『詳細不明』って出てきたんだ。」
その一言に、二人とも目を丸くしながら声を揃えて
「「えっ?『詳細不明』?」」
「そうなんだよ。」
新見も納得できないというように首を振る。
「今までの鑑定魔法でもそんな表示が出たことなんて一度もないんだ。
少なくとも名前あたりか見た目の情報が出るのに、あの石だけは『詳細不明』の四文字だけ表示されたんだ。」
「…確かに、あれだけ妙に浮いて見えたわ。普通の魔石とも違う感じだったし。もしかしたら弱点なのかもしれないわね。」
「あるいは、あの魔物がああなった原因か。」
新見も同意するように頷いた。
ゼノンはすぐに表情を引き締める。
「とりあえず魔物とこの惨状についてはこんなものね。
そろそろ、おじさまとその生存者の人が心配になってきたわ。私たちも合流しましょう。案内してくれる?」
「ああ、こっちだ。」
新見は周囲を警戒しながら路地へ飛び出す。
二人も後に続き、唯一の生存者が待つ醸造所へと足早に向かっていった。
――――
醸造所へ戻ると、ゴリオンが居住スペースらしき部屋から姿を現した。
「おお、お前さんたち。無事じゃったか」
「おう、おっさん。こっちは大丈夫だ。それより、さっきの見たか?」
「あの灰色のバジリスクのことか? ここからでも空を飛ぶ姿は見えたぞ。怯える彼を落ち着かせるのに一苦労じゃったがの」
「それは……災難だったな」
新見は苦笑しながら肩をすくめる。
「で、どうする? どうやらあ奴は我らがドワーフ王城を根城にしておるようじゃ。」
「もちろん倒す。ただ、その前にもう少し情報が欲しいんだ」
新見は真剣な表情で続けた。
「そうくるとおもっとったわい、討伐に向かうならワシも問答無用でついていくからの。」
「そいつは頼もしいこって。」
実際頼もしいまであるゴリオンの助太刀発言に心強さを感じる新見。
「けど灰色のバジリスクを見た時『彼が怯えてた』って言ってたよな? 話を聞きたいんだけど大丈夫そうか?」
「ふむ……少し聞いてみよう」
ゴリオンは頷くと、居住スペースの奥へ入っていく。
しばらくして、部屋の奥からひょいと顔を出した。
「おーい、お前さんたち。入って来い」
そう言って手招きするゴリオン。
居住スペースへ入ると、そこは畳にも似た床板が敷かれた和風の居間だった。
(うお、畳!なつかしい!)と新見は久々の畳に場違いに感動した。
部屋の奥では、やつれたドワーフが毛布に身を包み、鉛筆と紙を手に新見たちを待っていた。
頬はこけ、目の下には濃い隈ができている。しかし、その瞳だけは先ほどよりも力強く、希望に満ちた光を宿していた。
「いや、すまないのぅ。あれほどのことがあったばかりだというのに」
ゴリオンが申し訳なさそうに頭をかく。
するとドワーフはゆっくりと首を横に振り、紙へ鉛筆を走らせた。
『そんなことはない。同胞にも言ったが、まずは助けに来てくれたことに礼を言いたい。おかげでだいぶ回復した。』
書き終えると、その紙を見せ、深々と頭を下げる。
それを見た瞬間。
「あ、いえいえ…」
「い、いえこちらこそ…」
日本人特有の条件反射というべきか、新見、ゼノン、薫の三人までつられて頭を下げてしまう。
その様子を見たゴリオンは、腕を組みながら苦笑した。
ドワーフは再び紙に向かう。
『さて、あのバジリスクについて、私が知る限りの情報を伝えよう。一気にまとめるから少し長くなる。ごらんの通り何もないがくつろぎながら待っていてくれ。』
そう書くと、震える手で鉛筆を握り直し、記憶をたどるように紙へ次々と書き込んでいく。
しばらくするとゴリオンがまとめた用紙を三人に手渡した。
衰弱した体には酷な作業なのだろう。
筆跡は所々乱れ、文字も震えていたが、その内容には命懸けで得た情報が詰まっていた。
内容をまとめると、次のようなものだった。
・夜は活動せず、日中のみ行動する。
・尻尾の蛇には知性はないが、振り回して叩きつける一撃は非常に強力。
・石化能力は通常のバジリスクと同じく目から放たれる。しかし射程・範囲ともに桁違いに広い。
・灰色の翼はしなやかで非常に頑丈。攻撃するなら羽の隙間を狙うか、羽そのものを毟るしかない。
・町中の人々を石化してからずっと王城を根城にしてるらしい
・知能はそれほど高くない。しかし空へ逃げられると非常に厄介。
・日中は休む様子もなく一日中飛び回っていたことがあったが、一度も捕食や食事をする姿を見なかった。
「……食事をしていない?」
新見は最後の一文で眉をひそめた。
「魔物とはいえ、あり得ないな…」
「ドレイクやワイバーンみたいに、空中で獲物を捕食している可能性はありませんか?」
薫が紙に目を落としたまま、一つの可能性を口にする。
だが、ゴリオンは首を横に振った。
「いや、多分それはないじゃろうな。
外の国ならまだしも、この国は上空を除いて"霧の洞窟"に囲まれておる。
空の生物がほとんど自由に出入りできる環境ではないし、空を飛ぶ獲物を餌にしようとしても出来んじゃろうて」
「確かに…」
ゼノンも納得したように頷く。
新見は腕を組み、顎に手を当てながら考え込んだ。
「じゃぁ、王城の中に残ってた食料を食ってる可能性は?」
「その線もあり得なくはないが、さすがに無理がある。
いくら王城内の食料庫が大きくても、数か月も持つまい。魔物一匹の食事量なら、長く見積もってもせいぜい二、三週間ってところじゃろ」
ゴリオンが何故王城の食料庫の事情を知っているのかはわからないが。
「そんなすぐに食料が尽きたなら、普通は次の餌を求めて移動するはずよね…」
割とすぐ食料が尽きたなら確かにゼノンの言う通り根城を移動するはずだが”ずっと王城を根城にしてるらしい”というところが謎をさらに深めた。
「つまり、あいつは食わなくても生きられるのか……それとも、他の方法で生き延びているのか…」
新見は低く呟く。
「とりあえず、集められる情報はここまで見たいだし、討伐に向けて準備しましょ!」
確かに机上論はここまでのようだ。
この常識はずれなゴルゴーンバジリスク討伐に向けて新見たちは準備を進めることにした。
王城の食料庫事情をなぜかゴリオンが知っているのか。
それはですね…討伐後にわかりますよ…(ΦωΦ)フフフ…




