6-3 人だ!
ある日、とんでるGを咄嗟に手刀で仕留めました。
いろんな意味で後悔しました。(あたりまえ)
急いで醸造所へと辿り着いた新見とゴリオンは、すぐさま中へ足を踏み入れた。
人の気配は当然だがない。
建物の奥には、大きな熟成桶がずらりと並んでいた。
木造の巨大な桶からは、かつて醤油を仕込んでいたであろう独特の香りが、かすかに漂っている。
新見が辺りを見回した、その時だった。
「あれ?」
一つだけ、大桶が無残に横倒しになっていた。
床にはおそらく熟成途中の醤油が広く染みを作り、乾いた跡となって残っている。
「うわぁ、もったいない…」
その染みが元となっている大桶の中で、底になる部分に何かが微かに動いた。
「……うぅ……」
「っ!」
新見は目を見開いた。
「おい、おっさん! 人だ! まだ生きてる!」
「なんじゃと!?」
二人は慌てて駆け寄る。
そこには全身を醤油まみれにした一人のドワーフが倒れていた。
頬はこけ、唇はひび割れ、呼吸も弱々しい。
「しっかりしろ!」
新見はアイテムボックスから水筒を取り出し、ゆっくりと口元へ運ぶ。
「一気に飲むな。少しずつだ、少しずつ」
かすかに喉が動き、ドワーフは水を飲み込んだ。
「だいじょうぶか! 一体何があった!」
ゴリオンが肩を支えながら問いかける。
「あ……」
掠れた声が漏れたが、それ以上言葉にならない。
新見はゴリオンの肩に手を置き首を横に振った。
「おっさん、焦る気持ちは分かるけど、多分この人、ここ数日どころか相当まともに食べてない。」
新見はすでに鑑定魔法を展開していた。
――――――――
~“ドワーフ”~
状態:衰弱、栄養失調
食用不可
醸造所に勤めているドワーフ。
ここ数日はまともに飲食できておらず、さらに長時間醤油を浴びたことで喉と嗅覚に損傷をあり。
衰弱と栄養失調が進行しており、このままでは数日以内に生命の危険がある。
早急な治療と栄養補給が必要。
――――――――
「鑑定によると、衰弱と栄養失調。それに醤油を浴び続けたせいで喉と鼻までやられてる。このままだと、あと数日もたない。」
「なんじゃと……!」
ゴリオンの顔色が変わった。
「とにかくここでは駄目じゃ! 中へ運ぶぞ!」
「ああ!」
二人は力を合わせ、衰弱したドワーフを慎重に抱え上げる。
「あ……が……」
助け出されたドワーフは何かを伝えようと必死に口を動かす。
しかし、喉を痛めているせいで言葉にならず、掠れた息だけが漏れた。
「無理に喋るな。」
新見はすぐに察すると、アイテムボックスから紙と鉛筆を取り出して差し出す。
「書けるか?」
ドワーフは弱々しくコクンと頷いた。
ゴリオンに体を支えられながら、震える手で鉛筆を握る。
ぎこちない文字が、一文字ずつ紙に刻まれていく。
『にげろ まものだ みんな やられて いしになた』
その一文を見たゴリオンは、険しい表情で息を吐いた。
「……やはり、魔物か。」
ドワーフは小さく頷くと、再び鉛筆を走らせる。
『いままで みたことない まもの』
『きしだんも やられて おうきゅうも……』
「王宮まで……」
ゴリオンの表情がさらに曇る。
書かれた短い文章だけで、この国に何が起きたのか十分すぎるほど伝わってきた。
部屋の空気が重く沈む。
だが、ドワーフはまだ伝えたいことがあるようだった。
震える手で、再び紙に文字を書く。
『まものこっち きた けど とつぜん しょうゆおけ たおれて』
『しょうゆ まみれ なった』
新見とゴリオンは顔を見合わせる。
「…それで助かった?」
ドワーフは何度も首を縦に振った。
そして最後に、力を振り絞るように文字を書き記す。
『あいつは こかとりす みたい』
『でも はいいろ おおきい だった』
その文字を見た瞬間、新見は思わず息を呑んだ。
「灰色の…コカトリス?」
今まで聞いたことも見たこともない魔物の特徴に困惑するが
「それにしても……よく一人で生き延びたな。水は何とかなるとしても、食べ物はどうしたんだ?」
傍の井戸を見ながら新見は感心したように言う。
ドワーフは弱々しく紙に文字を書く。
『がんばって こわけした』
少し間を置き、続けて書き足す。
『かびても おかまいなし』
「……は?」
新見の表情が固まる。
次の瞬間。
「「それを早く言え(わんか)!!」」
新見は慌てて再度鑑定魔法を強めに発動し、今度は全身を細かく調べ上げる。
診断結果は最初の鑑定結果と変わらなかった。新見は大きく息を吐いた。
それ見たゴリオンも特に問題ないことを察したのか一安心する。
ドワーフは震える手で、最後にもう一行書き加えた。
『きをつけろ あいつは ひるまでも えささがして うごきまわる めがわるいのか あちこちかいでた』
新見はその文字を読み、小さく頷く。
「…昼行性で目が悪いのか。貴重な情報をありがとう。」
ドワーフは力なく頷き返す。
そして気力が切れたのか気を失うドワーフ。
「あ、おい。」
「心配するな気を失っただけじゃ。」とゴリオンが新見をなだめると
「とにかくおおよそじゃが何があったかわかったのぅ。」
「あぁ、とりあえずおっさんはこのままその人の看護を頼む。
後はゼノンたちが何か見つけてくれるといいのだが…」
そう思いながら新見は”灰色のコカトリス”を警戒しながら集合場所に向かうのであった。
この生き残りのドワーフは偶然にも醤油をかぶったおかげで醤油の匂いで魔物から生き延びてきたのですが新見達が来た時点で食べられないほど腐敗してたりなどで完全に食料が尽きていた状態なのでもしあと数日送れたら衰弱に加えて餓4もありえたぐらいギリギリだったりします。




