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帰れるまではラーメンの屋台引こうとする元勇者  作者: 白湯のお湯割り
5.新たな旅立ち

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閑話3 新見とゴリオン

今回新見とゴリオンとの出会いを入れてみました。

なんだかんだ言って気の合う二人なのです

異世界に転生してからというもの、新見孝ことタカシの日常は理不尽の連続だった。


神様からスキルを貰った。

異世界に来た。

ここまではいい。むしろテンプレ通りと言わんばかりだ


問題はその後である。


「立てぇぇぇぇぇッ!!」


教官の怒号が飛ぶ。


「敵は待ってくれんぞォ!!」


「いや、俺も待ってほしいんですけど!?」


そんな願いが通じるはずもなく、新見は地獄のような基礎訓練へと放り込まれた。


走る。


剣を素振る。


走る。


素振る。


倒れる。


起こされる。


走る。


振る。


倒れる。


これの繰り返し。


そんな生活を数ヶ月続けた結果、どうにか実戦訓練に参加できる程度には成長した。

だが、

別の問題が発生した。

「おい。貴様ァ!またなのかぁ?」


教官が額を押さえる。


その視線の先にボロボロに崩れた剣。

「これで今月何本目だ?」

「え?たぶん七本目?」

「八本目だ馬鹿野郎」

愛の鉄拳制裁が入る。

すると

「貴様に支給する剣はもうない。今すぐ鍛冶屋行って自分のを作ってもらってこい」

「え?でも手持ちが…」


「そんなもの自分で何とかしろ。」

「そんなぁ…」


まさか経費で落としてもらえず…かくして新見は王都の街へ放り出された。


タカシは生前のブラック企業のお局経理を思い出した。

「なんだかんだ全部自腹切らせるBBAよりましか…」


仕方なく新見は訓練の合間に受けた冒険者依頼で貯めていたなけなしのへそくりの1万ゴルドをアイテムボックスから取り出す。


とはいえ伝手などないし、どこの鍛冶屋が良いのかも分からない。


とりあえず鍛冶屋街を探そう。


そう思って空を中心に周囲を見回す。


白い煙は炊事の煙だからそこを避け、すすけた薄灰の煙を探すとある一帯だけが薄灰の煙が集中して出ていたのでそこを目指す。


近づくにつれ、そこかしこから鉄を打つ音が響く。


そして辿り着いたのがドワーフ達の工房街だった。

その中でも一際大きな建物が目に入ったのでそこに入ると

店内には武器や防具が整然と並べられている。


剣。


槍。


盾。


鎧。


さらには包丁や工具まで。


鍛冶屋というより総合工房といった印象だった。

「おぉ……」


思わず見惚れる。


そしてふと思いついた。


(そういや、最近想像魔法で開発したばかりの”鑑定魔法”。これを試すには絶好の機会じゃないか。)

早速発動してみると視界の端に文字が浮かんだ。

~~~~

鉄剣


品質:良

~~~~

「おぉ!」


思わず声が漏れる。


そんなことに感動してほかの武具防具にも鑑定魔法をかけまくっていると、店の奥から声が聞こえた。


どうやら奥の扉が開いていて声はそこから来ていた。気になったので覗いてみると

そこでは数人のドワーフが一台の馬車を囲んで唸っていた。


その中心にいたのは大柄な老ドワーフ。


どうやら彼がここの長であるとその風貌でわかる。

「むぅ……」


「どうします親方」


「どうするもこうするもあるか」


ゴリオンは頭を抱えていた。

「座席部分を変えないでさらに負担を減らせなんて無茶なんで受けちゃったんですか」

「仕方ないじゃろ、向こうが権力で圧力をかけてきたのじゃから」

そう口論をしてるところ新見はふと横の机にある依頼書らしき羊皮紙が目に入ったので目を通してみる。


要すると

『お気に入りの革を傷付けず改造せよ』


『尻の痛くならない馬車にせよ』


『見た目は変えるな』


「無茶苦茶じゃねぇか…」素人目線でもわかるあまりにも無茶な注文に思わず口に出てしまった。


すると全員の視線が新見へ向き、


シン、と空気が止まった。


「あ?」

老ドワーフが睨む。


「あ、いや」


依頼書を指差す。


「仕事の邪魔しちゃって悪いんだけどこれ、要するにクッション追加したいけど革は変えるなってことでしょ?」


「そうじゃ」


「だったらさ座席じゃなくて車輪側で何とかすれば?」


「あぁ?」


まるで素人がでしゃばるなと言わんばかりにムッとした顔でドスドスと足音を立ててタカシに近づく老ドワーフ。

「そんなもの、とっくに思いついとるわい」


「え?」


新見は意外そうな顔をした。

老ドワーフは馬車の下へ指差した。

そこには車体と車軸の間に挟まれた金属の板が何枚も重なった部品があった。


(お、板バネじゃん。もうそこまで来てたのか…)

新見は目を見開くと思わず感心する。


老ドワーフは腕を組んだ。


「問題はここから先じゃ。確かにこれで多少は揺れを和らげるが貴族様が満足するレベルじゃないんじゃ。」


「なら、これ試したことあるか?」

即席で近くの木板に図を描く。

現代の自動車等に使われるのサスペンションの図だった。


老ドワーフは眉をひそめる。


「なんじゃこの竜巻みたいなものは」


注目したのは真っ先にそこだった。


新見は苦笑する。


「竜巻じゃない。スプリング」


「すぷりんぐ?」

聞き慣れない単語に周囲のドワーフ達も首を傾げる。


新見は木炭でさらに描き足した。


金属の棒。


それをぐるぐる巻きにした状態。


押し潰された状態。


元に戻る状態。


「金属って曲げると全部じゃないにしろ一部元に戻ろうとするだろ?」

「そうじゃな。」

「その性質を利用するんだよ」


そう言いながら指で図をなぞる。


「これを押し潰すと戻ろうとする」


矢印などを書き足していく


「その力で衝撃を吸収しつつ元の位置に戻るの繰り返せば…」

「座席部分に伝わる衝撃はほぼなくなる…!」

以心伝心な二人。


即座に製作に取り掛かる二人。タカシは剣を作ってもらうことを忘れ、三日三晩この老ドワーフと共にサスペンションのばね作りにつきっきりになる。

異世界の未知の金属を混ぜた合金は意図しない動きを見せる。


強い圧力をかけると強く発光したり、

「うお、まぶしっ」「目が目がぁああ。」


かと思いきや元に戻りすぎて直線の棒に勢いよく戻り隣の壁を貫通したり、

「あぶね!」「か、壁が…」


今度は

「増えたぞ」「増えたね…」


目の前で金属が二倍に増殖していた。

「あ、でも質量は半分になってる。」「どういうことだ?」


これらの試行錯誤の結果。

ようやく形になった“サスペンション”は納品した貴族から好評を受けた。


失敗作の金属の配合はのちに別の用途として発明家ノームの手によって開拓されるのだがそれはかなり先の話…


納品を終え、工房へ戻ると、老ドワーフは満足げに髭を撫でた。


「いやー、お主のおかげで峠を越えたわい」


「そりゃよかった」


新見が息を吐くと、ゴリオンはふと首を傾げる。


「……それで、お主は何しに来たんじゃったかの?」


「あ」


タカシはそこで、ようやく本来の目的を思い出した。


「忘れてた。」


タカシは支給された剣では魔力を通すと壊れるので剣を新調しに来たというと老ドワーフはどんな感じかと聞く。

聞き終わると老ドワーフは目を細めると、即座に原因を見抜いた。


「お主の魔力の通し方だと、その鉄では耐えきれんのじゃ」


「やっぱりそうなのか?」


「普通は“魔力を流す”程度なら持つ。じゃが、お主は一気にどんとぶち込むじゃろ」


ゴリオンは苦笑しながら、手で形を示す。


「例えるなら…コップに、樽一杯分の酒を、蓋を外して一気にぶち込むようなもんじゃ。そりゃ中から崩れるわい」


「うわ、最悪な例え方するなぁ……」

どこかの筋肉芸人を思い出した。

(ヤーッ!)


すると老ドワーフは、「ちょっと待っとれ」とだけ言い、先ほどまで三日三晩格闘していたサスペンション用の試作品の山へ向かう。

その中から、金属の比率を記した羊皮紙をいくつも引っ張り出し、しばらく黙って見比べた。


「…これじゃな」


やがて一枚を選び抜くと、その配合を元に即座に新しい金属の塊にすると鍛え上げ始めた。


そうして生まれたのは魔力伝導率に優れ、なおかつ魔力に耐えうる、一振りの剣だった。


「ほれ」


差し出されたそれを、タカシは受け取る。

一目でわかった。


これまでの支給品とは、格が違う。

「…すげぇ。」


「魔力を通してみな」


言われるまま魔力を流す。

今度は壊れない。軋まない。びくともしない。


「おぉ…」

新見の目が輝く。


老ドワーフは鼻を鳴らした。


「当然じゃ。お主向けに打った一振りじゃからな」


「ありがとう!それで代金は…」


新見が口を開きかけた、その瞬間。


「いらん手伝ってくれた礼じゃ」

即答だった。


「でも…」


「いらんと言っとる」


頑固そのものの声に、新見は思わず笑ってしまう。


そして、少し照れたように頭をかいた。


「…そういえば、ちゃんと名乗ってなかったな。おっさん。」


剣を鞘に収めながら、新見は言う。


「俺は新見孝……って言っても、分かりづらいか。タカシでいいぞ」


「タカシか」


ゴリオンは満足そうに頷いた。


「ワシはここの工房の長のゴリオンじゃ。」


「よろしくな。ゴリオンのおっさん。」


「…いまさらじゃがそう呼ばれるのはなんか違和感があるのぅ。」

「そう?じゃぁこれまで通りおっさんで。」

タカシがそういうとゴリオンの口元には笑みが浮かんでいた。


そして二人は、固く握手を交わした。


のちにドワーフの餓死寸前の事件が起きタカシが窮地を救うのだが、ゴリオンがそれをきっかけにタカシが異世界人であると見抜くお話はもう少しだけ先のお話。

申し訳ございません。

諸事情により2週間更新をお休みさせていただきます。

(失踪じゃないよ)

その分書き溜められるものは書き溜められるようガンガリます…

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