5-7 いざ行かん!ドワーフ国へ
月初めからいきなり忙殺…帰ったら風呂入って寝るの繰り返し…去年はそんな感じじゃなかったのに…いきなりすぎるって…これはもっと書き溜めないと…
翌朝。
まだ夜明け直後の薄暗い空の下、王都には白い靄が立ち込めていた。
そんな静かな早朝の空気の中、新見たちは門前に集合していた。
ゼノンは、いつもの冒険者装備に背負い鞄という軽装。
長旅にも慣れているのか、必要最低限だけをまとめた実に無駄のない装備でまとめていた。
一方、薫は相変わらず初対面時と変わらないローブ姿にマジックバッグを肩から掛けている。
と言うのも必要な荷物は全てこのマジックバッグに入れれば事足りるので必要なものがあれば都度取り出せばいいのである。
便利すぎる。
そして、意外にも一番“旅慣れた格好”をしていたのはゴリオンだった。
頭には丸い鉄製の兜。
その上から下ろせるゴーグル。
分厚い生地の茶色いチェック柄の上着に丈夫なオーバーオール、裾は革のブーツへしっかりとしまい込まれ、背には大型の荷袋。
そして手には、長年使い込まれた巨大なウォーハンマー。
それを見たゼノンと薫は
(……あの人、本当に鍛冶師なんだよな(ね)?)とちょっとだけ疑問に思った。
そして新見は軽めの革鎧に動きやすい服装。
背には革製のリュック。
腰には二振りの剣。
ぱっと見だけならどこにでもいる普通の冒険者である。
……ただしその手にはなぜか、普段から営業に使っている屋台を引いていた。
ものすごい違和感である。
「……」
しばし沈黙したあと、ゼノンがとうとう耐えきれず口を開いた。
「なんで屋台引いてるのよ…」
呆れ果てた声だった。
「いや、だっておっさんの工房に置いてくわけにもいかないし。」
新見は悪びれもなく答える。
「それに意外かもしれないけど、これ全然負担を感じないんだよ!」
とすいすいと回りながら屋台を引く。
「…そこじゃないわ」
ゼノンは頭を抱えた。
旅に屋台を持っていこうとしている奴は聞いたことがない。
だが、そんなツッコミをよそに、それを見たゴリオンは妙に満足そうだった。
「ほっほっほ。どうやら以前試作した機構もうまく動いとるようじゃな」
ゴリオンは顎髭を撫でながら頷く。
「引く時だけ軽量化する機能も安全機能も問題なしじゃな。」
「おぉ、めっちゃ快適だぞ!」
新見も嬉しそうに答えた。
「王都のガタガタの石畳でも全然揺れなかったし! 流石だぜ、おっさん!」
「ふむ。どうやら以前お前さんに聞いた、“さすぺんしょん”とかいう機構も役に立ったようじゃな」
「だな!」
朝っぱらから盛り上がる技術者二人にゼノンはそんな様子を見ながら深々とため息をついた。
そんなやり取りをしているとなんだか遠くから人の声が聞こえてきた。
最初は霧の向こうにぼんやり見える影だけだったが徐々に近づいてくるにつれ、その正体が分かる。
「あれ……?」
薫が目を丸くする。
「これって見送り…ですかね?」
いつの間にか門前には大勢の人が集まり始めていた。
ラーメン屋台の常連の冒険者たち
工房のドワーフ達。
そして獣人達。
さらに見覚えのあるエルフの受付嬢までいる。
「ゼノンさーん!!」
開口一番。
やはりというべきか、あのエルフの受付嬢だった。
朝っぱらから元気である。
「聞きましたよ~出るって! それでですね! 実は私昨日もラーメンを…」
「長くなるから要点だけにして」
ゼノンが即座に指を彼女の口に当てて切り捨てる。
周囲の冒険者達から拍手が起こった。
どうやら彼女の長話に苦労しているのはゼノンだけではないらしい。
そんな中、人混みをかき分けて現れたのはミハイル達のとこの斥候のノルンだった。
ヤマネコ獣人の彼女はいつも通り軽い足取りで近づいてくるが斥候らしかぬたわわを揺らして近づいてくる。
「お見送りに来ましたよー」
ひらひらと手を振る。
「ミハイル達は?」
新見が尋ねると、ノルンは
「まだこの間の例の依頼の途中。王都の外の拠点にいるよ。」
そして少し表情を柔らかくする。
「その代わり伝言預かってるんだけど…」
ノルンは一度咳払いすると。
「大将。またどこかで会ったらよろしく。」
とミハイルの物まねをする。
周囲から笑いが漏れると続けてノルンは腕を組み、仏頂面を作る。
「……次の新作も期待している。」
今度はオッドだ。
こちらは先ほどのミハイルより妙に似ていた。
「ぷっ」
ゼノンが吹き出す。
「似てるわねwww」
とお腹を抱えだした。
「でしょ?」
ノルンは得意げだった。
その後ろでは犬獣人達が一斉に頭を下げる。
「お世話になりました!」
と一糸乱れぬお辞儀と掛け声とともにノルンも頭を下げた。
気が付けば門前は完全に賑やかな見送り会になっていた。
ほんの数ヶ月。
この世界に来て、魔王を倒すまでこういった知り合いはゴリオン達ドワーフを除いて誰一人いなかった。
それが今ではこれだけの人が見送りに来てくれているとなると胸が熱くなる新見。
「……なんか、すげぇな」
ぽつりと漏れた言葉。
すると隣のゴリオンが鼻を鳴らした。
「何を今さら」
そんなやり取りをしていると、
ゴゴゴゴゴ……
重々しい音を立てて王都の大門が動き始めた。
集まっていた人々が少し静かになる。
ついに開門の時間だ。
巨大な門がゆっくりと開かれていく。
その向こうには王都の外へ続く街道。
新見は屋台の取っ手を握り直した。
ゴリオンは荷物を背負い直し。
ゼノンは弓を確かめ。
薫はマジックバッグの口を締める。
「さて、」
新見が笑う。
「行くか」
四人は一歩を踏み出した。
見送りの声が背中に降り注ぐ。
目指すはドワーフ国。一体何が起きているのか確かめに新見たちはいざ行かん!ドワーフ国へ。
「ん?あ、すまん。ドワーフ国方面は逆の門だったわ」
ゴリオンがうっかりと言わんばかりに手を頭の後ろに置く。
「「えぇ~!?」」
思わず全員がずっこけた。
ついに王都からの出発!ここまで長かった気がします。
次回閑話です。




